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野党再結集阻む「連合」 参院選福岡で立憲・国民の分断主導

2019年1月21日 08:20

連合.png 今年夏の参議院議員選挙福岡選挙区に、国民民主党が公認候補を擁立することを決めた。福岡市に住む女性弁護士を軸に調整が進んでいるという。 
 同選挙区の改選議席は3。立憲民主党は現職の野田国義参院議員を公認しており、旧民主党から分かれた2つの野党が、自民、公明、共産と議席を争う形となる。
 自民党が大喜びしそうな野党分裂の状況だが、国民民主党関係者の間からも「今の政党支持率では絶対に勝てない選挙。なぜ無理してまで候補者を立てるのか」(同党県議会関係者)と、対決路線に疑念を抱く声も――。取材したところ、女性弁護士を選んだのが立憲・国民両野党の支持母体である労働団体「連合」の県組織であることが分かった。

■唐突に出てきた女性弁護士
 先週木曜日、国民民主党が参院福岡選挙区の公認候補として白羽の矢を立てたという女性弁護士の特定に、多くの報道関係者が走り回る事態となった。

 同党本部の決定事項として聞こえてきたのは、福岡選挙区で公認候補を擁立するということと、その候補者が女性弁護士であるということの2点。マスコミに登場する機会が多い弁護士だという触れ込みだったことから、複数の女性弁護士の名前が挙がっていた。

 同日夜になって漏れてきたのは、元裁判官で福岡県弁護士会に所属する春田久美子弁護士の名前。NHKの番組に、法律コーナーの解説者として出演している才媛だ。社会的には申し分のない経歴なのだが、なぜ政界進出なのか分からない。国民民主党や連合との接点も見えてこない。しかも、同党が候補者を公募したわけではなく、いわば密室選考で浮上した名前。県連の関係者も「知らない」「聞いていない」という具合で、裏取りに走る報道陣にも戸惑いの声が上がる状況となっていた。

 国民民主党に近い、ある県政界関係者の話。
「国民民主党の各級議員には、参院選をどう戦うのかというような重要な話については、何の知らせもない。吉村さん(敏男:県連代表)が一人で何でも決めるから……。自分(吉村氏)の(県議)再選が危ないという話なのに、ねぇ。
 春田さん?知らない。誰が決めたんですかね。党本部?連合?どっちにしろ、私たちは統一地方選を控え、それどころじゃない。立憲とケンカしたい人は、勝手にやればいい。
 だいたい、連合もよくない。こうなった背景には、原発と憲法の考え方を巡って立憲の方針が容認できない今の連合福岡幹部の思惑があるんだから。国民と立憲の再結集を促しながら、裏では両者がいがみ合うように仕向けている。組合の都合を政党に押し付けるような現状が続く限り、連合を支持母体にした政党は国民政党にはなり得ない。連合も、昔の総評や同盟のように、憲法や原発といった重要施策についての考え方で一致する勢力ごとに分裂した方が分かりやすい」

■春田氏指名は連合福岡
 たしかに、連合の動きは怪しい。別の政界関係者によれば、国民民主の参院選候補を推薦したのは連合福岡の幹部。女性弁護士は、事実上連合が選んだということだ。

 連合福岡の西村芳樹会長は自動車総連出身で、矢田信浩事務局長は電力総連。自動車総連も電力総連も右寄りの旧同盟系で、自民党の考え方に近い。原発推進、改憲賛成であり、原発も改憲もダメだという立憲民主党とは相容れない。西村会長は、なんとしても立憲の公認候補を落選させたいらしく、春田弁護士にたどり着く前、複数の労組関係者に立候補の打診をしていたという話さえある。なりふり構わぬ候補者選びは、有権者のためではなく“旧同盟系労組のため”。九電の本社がある福岡から、「原発反対」の野党議員を誕生させるわけにはいかないという裏事情も透けて見える。

 そもそも、国民民主党は沈没しかかった小池・希望の党を見限った議員らが組織した政党。主導したのは連合の中の旧同盟系労組だ。原発や改憲で自民党に近い野党を作るのが目的だったとみられているが、そうした性格の政党に支持が集まるはずがない。結党以来、支持率は0%~1%台を行ったり来たりの現状となっている。野党の再結集を阻んでいるのは、支持母体の連合なのである。

 ある立憲民主党関係者は、こう話している。
「国民側が福岡で候補を立てるのは自由。どうぞ、頑張って下さいというところですね。野党の大同団結を叫ぶ一方で、先に公認を決めたうち(立憲)に対立候補をぶつけるというのだから、有権者の理解は得られませんよ。これで、遠慮せずに全国の選挙区で候補を擁立できる。
 国民から出馬する人に聞きたい。原発はどうするのか、憲法改正についてどう考えているのか――。私たちは一貫してそのいずれにも反対だと申し上げている。重要政策で一致できない人たちと、選挙を戦うことなどあり得ない」

 

 



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