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保守分裂の福岡で有権者無視の麻生シナリオ
知事選踏み台 参院選で事実上の2人擁立

2019年1月15日 08:55

ba5ffcc55c90ef8caa15a0e641083beda34eeecc-thumb-200xauto-24279.png 今年4月に予定される福岡県知事選挙の推薦候補者選定を巡って、小川洋現知事を推す勢力と、テレビコメンテーターの元官僚・武内和久氏を選んだ反小川陣営の駆け引きが激化。情勢調査の結果を重視するという自民党本部の裁定を前に、それぞれの関係者が「武内で決まり」(自民党参院議員)、「小川以外の選択肢はない」(同党衆院議員)などと、自陣営の優位さをアピールする状況になっている。
 保守分裂の知事選が確実となりつつある中、麻生太郎財務相を中心とするグループが支える武内氏に関し、夏の参院選にも影響を及ぼす驚きのシナリオが囁かれ始めた。

■麻生派の強硬姿勢
 昨年12月に武内氏を知事候補に選んだ自民党福岡県連選対委員長の大家敏志参院議員や麻生財務相は強気の姿勢で、今月中には武内氏が党の推薦候補に決まると公言している。麻生氏と安倍晋三首相が会談し、武内氏を党の推薦候補とすることを首相が認めたというのだ。裏付けのない話だとして一笑に付す関係者の方が多いが、なぜか麻生陣営は自信満々だ。

 一方、3選を目指す小川知事を推す国会議員らは党本部が実施する情勢調査の結果に自信を示す。「誰が考えたって、(調査すれば)現職の勝ちだよ。そもそも、小川さんに失政はない。『小川じゃダメだ』と言ってるのは、麻生太郎と麻生渡(前知事)だけ。武内を強引に候補者に決めた選対委員長の大家にしたって、麻生派だから親分へのご機嫌取りで大騒ぎしているだけなんだ。県民の多くは、麻生一派が小川さんをいじめているとしか見ていない。県議たちが、これ以上太郎のわがままに付き合っていると、春の党一地方選を控えて自分たちの票が減りかねない。武内を本気で推す国会議員や県議がいるとは思えない」(県連関係者)。

 たしかに、党本部周辺の情勢を取材してみると、圧倒的に小川支持ばかり。麻生派以外の派閥の議員たちは、「武内って誰だ?」(九州地方選出の参院議員)というのが実情だ。武内氏を推薦候補に選んだ自民党県連にしても、決して一枚岩ではない。

 小川氏支持の姿勢を鮮明にしているのは、二階俊博幹事長の側近である武田良太衆院議員(福岡11区)と三原朝彦衆院議員(福岡9区)、これに古賀誠元幹事長、山崎拓元副総裁、太田誠一元農相といった重鎮が加わっている。古賀氏は福岡7区、山崎氏は福岡2区、大田氏は福岡3区に後継議員を抱えており、小川陣営は全11選挙区の内、5つの選挙区を押えている形だ。二階派に籍を置く福岡6区の鳩山二郎氏も小川支持で動くとみられており、そうなると過半数の選挙区を小川支持派が固めることになる。

 県内の情勢調査を実施すれば、結果は大差で「小川」ということになるだろう。どう考えても現職有利の状況なのだが、麻生氏は楽観視しているという。何故か?

■有権者を愚弄する麻生シナリオ
 ここにきて囁かれているのが、武内氏を巡ってのあるシナリオ。敗戦を承知で武内氏を知事選に出馬させ、知名度を上げたうえで、そのまま参院選になだれ込むというのだ。その場合は「無所属」で、首尾よく当選したら追加公認をもらう筋書きなのだという。実際、武内氏は自民党の推薦を得られない場合でも「知事選に出馬する」と明言しており、“知事選を踏み台に参院選”という有権者を愚弄するような話が現実味を帯び始めている。

 自民党は、公明党側との話し合いで、福岡選挙区の自民公認を一人に絞ることを約束している。しかし、麻生財務相は依然として「2人公認」という主張を引っ込めていない。北九州市長選で候補擁立に失敗し、知事選と参院選でも自前候補の擁立ができないとなれば、麻生氏の求心力低下は免れない。メンツを保つために知事選を混乱させ、県連組織を分裂させかねない状況に追い込む麻生氏の所業が、有権者を軽んじる安倍政治に重なって見える。



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