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「馬毛島」買収交渉の裏

2019年1月11日 08:35

20180516_h01-01-thumb-autox447-24420--2.jpg 安倍政権が米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP:タッチアンド ゴー)用地にする方針で買収交渉を進めてきた、鹿児島県西之表市の馬毛島を所有する「タストン・エアポート」(旧社名:馬毛島開発)が、防衛省に煽られた同社の債権者に追い詰められる形で、土地を叩き売ることになった。
 謀略話につきものとはいえ、大手メディアの報道に出てくる買収価格は次々と変動。当初の40億円から110~140億円となり、直近では4倍となる160億円にまでハネ上がった。不可解な価格交渉の裏で何が起きているのか……。

■馬毛島所有企業の破産を企てた防衛省
 馬毛島は、種子島の西方約12㎞に浮かぶ周囲16.5km(南北4.50km、東西:3.03km)、東京ドーム175個分にあたる面積820ヘクタールの島。鹿児島出身の立石勲氏が創業した「立石建設」が、同島の開発を手がけていた馬毛島開発を買収して「タストン・エアポート」に社名変更し、今日に至っている。タストン社と防衛省は2016年11月、米空母艦載機の離発着訓練場の移転先候補地として島を買い取る交渉に入ることで合意していたが、価格交渉は暗礁に乗り上げていた。現在滑走路となっている部分の造成費やこれまでの維持管理にかかった経費を上乗せして400億程度の契約金額を提示したタストン社と、40億円を主張する防衛省側との溝が埋まらなかったからだ。(下の写真、左がタストン社によって造成された滑走路、右は旧海軍監視塔から見た滑走路)

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 事態が動き出したのは昨年夏、金融が本業としか思えない怪しげな住宅建設会社など複数社が、数億円単位の債権を巡って東京地裁にタストン社の破産申し立てを申請。HUNTERの取材で、破産申し立ての裏に、馬毛島取得を担当していた防衛省の調達官が暗躍していたことが分かっている。安倍政権は、タストン社を破産させ、馬毛島を安く買い上げようとしたのだ。卑劣というしかないが、どの報道機関もこの事実を記事にしていない。

■債権者主導の価格交渉
 追い詰められたタストン社に、「200億円で(防衛省と)手を打て」と迫ったのは、同社の大口債権者。これを承諾したタストン社の前社長は、自らの退任を受け入れ、債権者でもある企業の会長に防衛省との交渉に関する委任状を交付していた。政府側との折衝で主導権を握っていたのは、タストン社ではなく債権者の一部だったとされ、「孫の手倶楽部」「ノモスコーポレーション」「リッチハーベスト」という社名が出ている。昨年秋以降の新聞報道で出てきた土地価格は、すべて債権者側から漏らされたものである。

 じつは、防衛省が提示したとされる「40億円」も、毎日新聞がスクープ(?)した「110億円~140億円」も、政府が公表した金額ではない。防衛省が土地価格について明らかにしたことは一度もなく、従って報道されてきた土地代の根拠は存在していない。

 「40億円」は、防衛省が交渉を有利に進めようとして流したデタラメな額であり、「110億円~140億円」「160億円」は、高額な契約金額を既成事実化しようとした債権者側が、報道関係者にリークしただけの話だった。債権者側から「160億円と書いてくれ」と頼まれ、断ったというジャーナリストもいる。馬毛島の買収交渉を巡って大手メディアは、国や債権者の思惑に乗って数字を垂れ流しただけだ。

 40億から始まった馬毛島の価格が、交渉相手がタストン社から債権者に変わったとたんに4倍の160億。民間の土地取引ではあり得ない話だ。この数字が事実だとするなら、森友学園問題を追及してきたマスコミは、価格の「根拠」を調べて記事にすることだろう。土地代の原資は税金。馬毛島を巡る国の謀略についても、当然詳しく報じるべきだ。

 最終段階にきている価格交渉で、政府側としての意思決定をしているのは防衛省ではなく官邸。今週報じられた「160億円」という数字を、官邸サイドから聞き出した報道機関もある。すでに防衛省とタストン社の間で仮契約を交わしたとも言われているが、タストンの親会社・立石建設はこの金額に不承知。「まだこれから一山もふた山もある」と予言する関係者もおり、先を見越した官邸側からは「上限200億円」という話も出ている。



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