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指宿市長に公選法違反の疑い 地元県議の落選狙い資金提供約束  
三反園鹿児島県知事と連携か?

2019年1月30日 07:35

【P03―①】市長.jpg 地熱発電事業に関する環境省への許可申請文書に、捏造した住民アンケートの結果や事業経過を記載していた鹿児島県指宿市の豊留悦男市長が、今年春の県議会議員選挙に出馬する自民党現職を落選させる目的で何人もの関係者に資金提供を確約して立候補するよう説得していたことが分かった。
 説得を受けた関係者は少なくとも6人。豊留市長はいずれに対しても、市内の建設業者が資金を提供することを約束して出馬を促していた。公職選挙法は、特定の人物を落選させる目的で有権者に金銭、物品を贈ることを禁じており、市長や建設業者の行為は、同法の規定に抵触する可能性がある。
(写真が豊留指宿市長。市HPより」

■「落とさないかん」で資金提供約束
 市長及び市長と関係の深い建設業者から県議選出馬を打診されたのは、議会や医療などの関係者。確認されているだけで6人に上る。市長と建設業者の口説き文句は「資金はF社(建設業者の会社。実際には実名)が出す」。説得を受けた関係者の大半が、「怪しい」と感じて自主的に断ったり、家族の反対で断念するなどしたため、擁立には至っていないという。

 擁立の目的は、指宿市選出の自民党現職を落選させること。市長やらは、現職県議の名前をあげた上で「落とさないかん」などと発言していた。現職落選を狙っての候補者擁立だったことは間違いない。

 公職選挙法は、《買収及び利害誘導》について「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき」は、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と定めており、市長らの行為はこの規定に抵触する可能性がある。

■背後に三反園知事の存在
 市長と建設業者が犯した愚行の背景にあるのは、三反園訓鹿児島県知事の存在である。

 2016年6月、指宿から鹿児島市内に戻る車の後部座席で、ある男が凄まじい形相でわめき散らしていた。「〇〇(実際には実名)だけは、絶体、叩き落してやる!」――。運転していた男性を震え上がらせたその人物とは、1か月後の選挙に向けて事前活動を続けていた三反園訓氏。現在の鹿児島県知事である。三反園氏は当日、高校の同級生だった県議に知事選の支援を断られ、帰りの車中で荒れ狂ったという。同級生とはいえ、指宿市選出の県議は当時自民党県連の幹事長。伊藤祐一郎前知事を“公認候補並み”の扱いで支援していた県連の幹部が、三反園氏を応援するはずがなかった。身勝手な態度と狂気に、三反園氏の運転手は「恐ろしかった」と振り返る。

 その三反園氏ともっとも近い存在であることを自慢して回っているのが豊留指宿市長。選挙資金を出すという建設会社の代表者F氏は、三反園氏と同じ高校に通った同級生だという。F氏の建設会社は毎年、県や指宿市から多くの公共事業を受注しており、利害関係で結ばれた3人が、目障りな現職県議の追い落としを画策する構図だ。前回知事選で三反園氏を支援した元後援会幹部は、次のように話している。
「知事の指示があってのことか忖度か分からないが、豊留市長とFさんが『〇〇県議を落選させなければいけない』と言って回っているのは事実だ。私も直接聞いているが、露骨すぎて不愉快になった。県議が三反園県政に批判的であることが気に入らないのだろうが、市長や業者がしゃしゃり出るのは間違い。カネをもらった方も罰せられる可能性がある話で、危なくて付き合いきれない」

 豊留市長を巡っては、昨年2月に行われた指宿市長選挙の際、市長陣営が地熱発電を計画中の業者から2回にわたって現金20万円を受け取っていたことが発覚。選挙運動費用収支報告書や関連政治団体の政治資金収支報告書に、該当する寄附が記載されていなかったことが分かっており、事情を知った市民が刑事告発の準備を進めている。市長には今月18日、問題の20万円の処理などについて確認するため質問書を届けたが回答はなく、事実上の取材拒否となっている。

 一方、ターゲットにされた現職県議はHUNTERの取材に対し「市長の動きについて、コメントすることはありません。私は県民のために働いているのであって、知事や市長のために県議をやっているのではない。選挙は政策論争の場であり、明日の郷土をどうするかを問うべき。堂々と保守政治家としての王道を歩いていきます」と話している。



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