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「災」の安倍政権と正念場の民主主義

2019年1月 4日 09:10

 自然災害が続いたということで、昨年の漢字は「災」。だが、この国にとっての本当の災は、安倍晋三という希代の戦争好きが総理の座に居続けていることだろう。国会では、主権者たる国民の声を無視して強行採決を連発し、戦後70年以上かけて先人たちが築き上げてきた「平和国家」の姿を歪めた。
 踏みにじられる民意――。2018年は、安倍によって歪められる日本の声なき声が、悲鳴となって聞こえてくる年だった。
 そして2019年。今上陛下のご退位に伴い新しい元号が制定されるが、統一地方選や参院選を控え、主権者である国民が考えなければならないのは安倍政権の是非である。私たちは、「軍国主義国家か平和国家か」という選択が迫られる、重要な岐路に立たされている。

■自然災害への悲鳴
 世界的な気象変動が顕著となるなか、昨年も大きな自然災害が次々と列島を襲った。

・6月18日 大阪府北部地震
・6月28日~7月8日 西日本豪雨
・9月6日 北海道胆振東部地震

 いずれも多くの人命を奪い、復旧・復興までに長期間を要する災害だった。加えて、夏の記録的な猛暑に連続で襲来した台風――。新年を迎えたばかりの3日には、熊本地方で震度6弱を観測する地震が発生した。自然が警鐘を鳴らしているのだとすれば、あまりに過酷な試練と言えるだろう。

 問題は、東日本大震災(2011年)から続く大災害の被災地における復興が長期化する一方で、2020年のオリンピックが開かれる東京だけが開発ラッシュに沸いていることだ。五輪関係の施設や交通網が次々と整備され、生まれ変わる東京。しかし、多くの被災地では、いまだに住む家さえ決まらぬ人々が多数存在している。被災地復興にかける何倍もの公費が首都にだけ集中する現状は、「復興五輪」が掛け声だけだったことの証明だろう。弱者を切り捨て、人気取りに専念してきた安倍政権の姿勢には、正直うんざりだ。 

■崩壊する民主主義
 おかしくなったのは気象だけではない。安倍一強という政治状況が続いてきたことで、この国の民主主義が、音を立てて崩れ始めている。原因は、安倍政権による「民意無視」である。

 2013年には特定秘密保護法、15年に安全保障法制、17年に共謀罪法を強行採決で成立させ、今年に入ってからは働き方改革法、カジノ法、改正公選法(参院6増法)、改正水道法を強行採決で押し切った。野党や国民の反対意見には耳を貸さず、スケジュールありきで重要法案を成立させる政治手法は、民主主義の根幹を揺るがす暴挙である。

 この国の主権者は「国民」のはずだが、安倍には民意を尊重する意思がない。森友学園や加計学園の問題は未解明のままであり、こうした疑惑の発覚や強行採決のたびに繰り返されてきた安倍の「真摯に向き合う」「丁寧な説明」が真っ赤なウソだったことは、この一年の動きで明白となっている。

 沖縄では、2度の県知事選挙で示された米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する民意を無視し、年末になって土砂の投入を強行した。つまり、安倍の頭にあるのは“アメリカをどう喜ばせるか”という1点だけ。「沖縄に寄り添う」という言葉もまた、真っ赤なウソだった。

 安倍が寄り添っているのはトランプだったが、最近ではロシアのプーチンにすり寄り、歴代政権が堅持してきた北方領土の4島一括返還という方針をかなぐり捨て、2島返還へと舵を切った。愛国者・安倍の化けの皮が剥がれたということだ。

■政権を追い詰める辺野古新基地
 安倍にとっては憲法改正が悲願だとされるが、「憲法を変えた総理」として歴史に名を残したいだけで、国家、国民のためにというわけではない。目指すところは「戦争のできる国」。だから、沖縄の民意も「平和国家」も、どうでもいいという訳だ。しかし、来年は沖縄の問題が安倍政権を窮地に落とす。

 昨年2月の名護市長選挙で、政権が推した渡具知武豊氏が当選。米軍普天間飛行場の辺野古移設にとって、1つの壁となっていた地元自治体の首長の座を奪い返したことで、いったんは新基地建設に弾みがつく状況となった。

 だが、その後に事態は急変する。「オール沖縄」を率いて政府に対峙してきた翁長雄志前知事が8月に急逝。9月末に行われた沖縄県知事選挙では、翁長氏の後継指名を受けた玉城デニー氏が知事選史上最多の得票で政権丸抱えの候補に圧勝し、安倍政権への批判が高まった。

 12月14日に辺野古への土砂投入を開始した安倍政権だが、沖縄との溝は深まるばかり。今年2月には沖縄県が辺野古移設の是非を問う県民投票を実施する予定で、展開次第で政権は再び窮地に立つことになる。沖縄が再び「辺野古移設反対」の民意を明確に示した場合、国民は、これを無視する安倍政権の異常性を見逃さないだろう。春の党一地方選、夏の参院選では、民意を無視する自民、公明の政治姿勢が問われ、思わぬ惨敗に終わることも想定されている。

■届かぬ天皇陛下の思い
 年の瀬迫る23日、天皇陛下が、平成最後となる誕生日の会見に臨まれた。ご退位を前に語られたのは、災害に苦しめられた国民への愛情あふれるお言葉と「平和」への感謝。「戦争がなかった平成」という表現の裏で、戦前回帰に固執する安倍政権への懸念を示されたと感じたのは筆者だけではあるまい。陛下は2013年の天皇誕生日、記者会見において、次のように述べられている。

 『80年の道のりを振り返って、特に印象に残っている出来事という質問ですが、やはり最も印象に残っているのは先の戦争のことです。私が学齢に達した時には中国との戦争が始まっており、その翌年の12月8日から、中国のほかに新たに米国、英国、オランダとの戦争が始まりました。終戦を迎えたのは小学校 の最後の年でした。この戦争による日本人の犠牲者は約310万人と言われています。前途にさまざまな夢をもって生きていた多くの人々が、若くして命を失ったことを思うと、本当に痛ましい限りです。

  戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し、かつ、改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いています。また、当時の知日派の米国人の協力も忘れてはならないことと思います。戦後60年を超す歳月を経、今日、日本には東日本大震災のような大きな災害に対しても、人と人との絆を大切にし、冷静に事に対処し、復興に向かって尽力する人々が育っていることを、本当に心強く思っています』

 陛下のこうした思いは、結局安倍には届いていない。安倍政権下における戦争への道普請と、軍事費だけが膨らむ現状はその証明だ。新たな時代を迎えるにあたり、私たち国民は今一度「平和」の尊さについて議論する必要があるのではないか。真剣に子どもたちや孫たちの時代を考えるなら、今年を安倍政権の終わりの年にしなければならない。日本の民主主義にとっての、まさに正念場である。

ニュースサイトHUNTER 中願寺純隆



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