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混迷深まる福岡知事選 自民の武内氏推薦で保守分裂へ

2019年1月31日 08:45

7c8d4f3068bb3574a2cf28bb7978b2f6aebdfa5d-thumb-240xauto-24480.jpg 30日午前、福岡県政界に激震が走った。4月に行われる福岡県知事選の推薦候補として党本部が選んだのは、再選確実とみられている小川洋現知事ではなく麻生太郎財務相が推す元厚生官僚の武内和久氏。「小川57、武内11」という情勢調査の結果と県内の選挙情勢を無視した、驚きの決定だった。
 麻生氏の責任論さえ出ていた前日までの流れは、一夜にして覆った形。永田町で、何が起きたのか?

■知事候補推薦劇、一夜で逆転
 武田良太衆院議員や山崎拓元自民党副総裁など小川知事を推す勢力と、テレビコメンテーターで元官僚の武内和久氏を県連の候補として選んだ麻生陣営の争いは、推薦の決定権を持つ党本部の裁定で「武内推薦」となった。

 28日夜、国会内で甘利明選対委員長を交えて安倍首相と会談した麻生氏は、「小川57、武内11」という知事選の調査結果を示して武内氏推薦が困難な情勢にあることを説明した甘利氏に激高。強く武内氏の推薦を求め、15分余りの会談を打ち切っていた。「麻生さんは怒り狂ってるらしいぞ」――。麻生氏と距離を置く国会関係者は、この夜、笑いながらそう語っていた。

 小川知事を支援する自民党幹部も「小川推薦で決まり」と明言していたが、29日に二階俊博幹事長と甘利選対委員長が会談したあたりから状況が一変。30日朝までに、「武内推薦」への流れが出来上がる。
 
 同日11時、党本部に呼ばれた蔵内勇夫福岡県連会長と大家敏志県連選対委員長に対し、甘利選対委員長が伝えたのは「武内推薦」の結論。農業団体や医師会、町村会などの有力組織が「小川支持」を打ち出す中での異例の選択となった。甘利氏は「参院選で一糸乱れず戦うこと」を条件にしたとされ、同席した二階幹事長や萩生田光一幹事長代行などからも同様の発言があったとされる。

 しかし、小川知事を推す勢力と武内氏を推す勢力による分裂選挙は決定的。参院選まで対立の構図を引きずることは確実で、「参院選で一糸乱れず戦う」のはどう考えても無理だ。県連幹部は「すべてはこれから」と強気の構えだが、麻生氏の強引な手法に小川知事の支援者から激しい反発が出るのが必至の状況となっている。

■私怨で歪む福岡県政
 現実を無視した自民党の判断は、間違いだ。そもそも、麻生氏から小川県政を否定する明確な理由は示されておらず、表に出てきたのは、後ろ盾になっている高島宗一郎福岡市長との比較論だけ。県庁所在地でもある政令市と県とを比較すること自体ナンセンスなのだが、麻生氏はその程度のお粗末な主張しか提示できていない。

 福岡市で40人ほどの従業員を抱える男性経営者は、あきれ顔にこう語る。
「もともと小川さんは、麻生太郎と前知事の麻生(渡)が担いだ知事。なんで小川知事ではいけないのか、太郎はきちんと県民に説明すべきだろう。『福岡市長は凄いけど、小川はダメだ』なんて話は、誰も納得しない。衆議院6区の補選で、自分の応援依頼を断ったのが気に入らないということらしいが、それならただの私怨。まるで子供としか言いようがない。福岡県政は麻生のためにあるのではない。尊重されるべきは県民の意思だ。小川さんとは特別に縁があるわけではなかったが、一連の動きを見ていて、応援しようという気になった。ついでに、福岡から老害政治家を追い出すべきだ」

■追い詰められた麻生
 衝撃の推薦劇の裏側も見えてきた。自民党幹部によれば、28日夜に国会内で安倍首相と会談した麻生氏は、激高したのではなく、武内氏に推薦を出してくれるよう首相に「泣きついた」(同幹部)のだという。「推薦が出なければ副総理を辞める」と首相に迫ったという話もあるが、同幹部は「それは嘘。なんとかしてくれと泣きついた」と断言する。その結果が、「参院選で一糸乱れず戦うこと」を条件にした武内推薦。党幹部は、次のように解説している。
「森友学園問題などで政権を庇い続けた麻生氏の懇願を、首相は拒絶することができなかったということだ。ただ、小川さんを推していた二階幹事長は、『はい、そうですか』とはならない。麻生さんの顔を立てながら、責任を負わせたことになる。『負けた場合の責任は、麻生さんがとって下さいよ』ということなんだ。武内では勝てないことは承知の上。数字がすべてだ。知事選で推薦候補が敗れれば、麻生さんは議員辞職するしかない。そうでなければ「参院選で一糸乱れず戦うこと」などできない。麻生さんは、逆に追い詰められたと見るべきだ」



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