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国際捕鯨委脱退に重なる昭和の時代 ― 松岡洋右と安倍晋三 ―

2019年1月 8日 09:00

img_primeminister.jpg 先月26日、政府が商業捕鯨の再開を目指すとして、国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を表明した。日本が国際機関から脱退するのは極めて異例。「気に入らないから一抜けた」は、安倍首相が臣従する米国のトランプ大統領と同じだ。国際協調主義に基づく「積極的平和主義」を標榜してきた政権がやることではあるまい。
 国際社会に背を向ける姿勢に重なるのは、日本が国際連盟を脱退した当時の動きだ。昭和の時代、外務省の役人から政界入りした松岡洋右(まつおか ようすけ)という政治家が、国際連盟脱退と日独伊三国同盟を主導した。日本はその後、多くの国民に塗炭の苦しみを与えることになる戦争へと突き進む――。

■沖縄より「鯨食」が大事?
  異例の外交姿勢には、うさん臭さがつきまとう。脱退に関する報道でテレビ画面に登場したのは、自民党の二階俊博幹事長と捕鯨議連の幹事長代理を務める鶴保参院議員。二人とも、古くから捕鯨の拠点として知られる太地町のある和歌山県選出の国会議員である。

 「捕鯨は日本の伝統文化」――二階、鶴保両氏をはじめ商業捕鯨賛成派が使う常套句だ。国内各地で捕鯨が行われていたのは確かで、昔は鯨が貴重なタンパク源となっていたのも事実。しかし、時代とともに変わる価値観があるように、鯨から油をとったり、食用にしたりする国は激減している。日本が、国際機関を脱退してまで鯨食にこだわる必要があったとは思えない。

 そもそも、安倍自民党の政治家たちに、日本固有の伝統文化を守り抜く覚悟があるとは思えない。アイヌや琉球の文化を、この国がどれだけ真剣に守ってきたのか――。ジュゴンの藻場である辺野古の海を、アメリカのために埋め立てようという連中に、日本の伝統文化を語る資格などあるまい。

■安倍と松岡洋右
 第二次安倍政権が発足して7年、この国を取り巻く状況は厳しくなるばかりだ。一衣帯水の国・韓国との関係は、慰安婦問題などを巡って悪化するばかり。自衛隊機がレーダー照射を受けたとたん、戦争でも始まりそうな騒ぎようだ。中国との溝も深まる一方。安倍が北方4島の一括返還を断念してまですり寄ったロシアのプーチンには軽くいなされ、格の違いを見せつけられている。

 トランプに追随するしか能がない安倍政権は、世界中を敵に回しつつあることに気付いていない。「外交の安倍」を売りにしてきた政権だが、誇れるのは外遊の回数だけ。就任から昨年12月までの外遊の回数は71回に上っており、対外支援の額は軽く40兆円を超える。つまり、単なるばら撒き外交であって、一時的に感謝されることはあっても「尊敬」や「信頼」にはつながっていない。そうした中での国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退――。問答無用で国際社会に背を向ける手法は、戦前の日本に重なる。冒頭で述べた国際連盟からの脱退である。

 日本は1933年(昭和8年)、満州事変に関するリットン調査団の報告書を採択した国際連盟に反発。松岡洋右を全権とする代表団は連盟の総会会場を退席し、直後に脱退の声明を発表する。国際社会で孤立した日本は、1940年(昭和15年)に全体主義国家ドイツ、イタリアと三国同盟を締結し、戦争への道を突き進むことになる。

 一連の外交方針を主導した松岡だったが、実はこの人物、安倍晋三首相の親戚。時を超えて、戦争好きの血が交差する。国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退は、安倍の国際協調や積極的平和主義が、ただの謳い文句だったことの証明だ。国際的な孤立が何をもたらすか――?この国は答えを知っているはずだ。



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