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安倍政権「国土強靭化」の実態

2018年9月12日 08:25

e0374d10d7decdd98da30a68cd4e663fb7b2910e-thumb-160 xauto-20605.jpg 6月には大阪北部地震、7月には西日本豪雨、そして今月は台風21号と北海道胆振東部地震が日本を襲った。自民党内では、この時とばかり「国土強靭化」を求める声が高まっている。
 先頭に立つのは国土強靱化が持論の二階俊博幹事長。記者会見で「財政的な問題も無視できないが、今は万全の対策を取っていくことが優先されるべきだ」と強調し、さらなる予算措置の必要性をにじませた。
 二階氏ら自民党幹部の念頭にあるのは来年の統一地方選と参院選なのだが、肝心の国土強靱化にかける予算は、安倍政権の6年間でほとんど増えていない。

■進まぬ災害対策
 アベノミクスで回復基調だった経済に陰りが見え、都市部と地方の格差を指摘する声は根強い。モリ・カケ問題など一連の不祥事で急落した内閣支持率も以前の水準まで戻っておらず、党幹部は「被災地に十分な予算を回さないと選挙は負ける。国土強靭化が目玉」と考えているようだ。しかし、これまでを振り返ってみると、安倍政権が真剣に国土強靭化に取り組んだ形跡はない。たとえば、オリンピックまであと2年となった首都東京で豪雨による大きな災害が起きたらどうなるか――。

 国土交通省は大都市東京で大雨が降ったときの最悪の事態を想定している。想定されているのは、3日間で降水量550ミリを超える雨が荒川上流域で降り、都内の堤防が決壊するケースだ。

 埼玉県戸田市か東京都北区の堤防が決壊すると、わずか1時間足らずで町の様相は一変する。東京駅前もひざ上くらいまで浸水してしまうのだという。

 さらに東京メトロ南北線のトンネルは水路となり、水は駅から駅へと流れ出て、交差する市ヶ谷駅などで他の路線も水路となる。都心の地下鉄は連鎖して水没。地下鉄駅や地下街は一切立ち入り禁止の状態に陥る。地下鉄は2週間ストップ、100万軒以上が停電し、最大3,800人の死者が出る恐れがあるという、とてつもない災害だ。

■「国土強靭化」の嘘
 「東京壊滅」の悪夢はいつ起きてもおかしくない。被害を最小限のものとするためにも、国をあげての対応が急務であるのだが、対策はとられていないのが実態だ。地方も同じ。地震や豪雨によって次々に甚大な被害が出ていることは、国土強靭化が実現していないことを示している。

 政府は「公共事業関係費は2018年度予算まで6年連続で増加している」と宣伝しているが、実際にはどうだったのか。下の表は国土交通省が公共事業関係予算について説明した公表資料だが、「安倍政権は公共事業をきちんと増やしている」という虚偽情報をプロパガンダするために、社会資本整備事業特別会計分を加えるなどの加工をしているのが分かる。

国交省.png

 公共事業関係費は民主党政権期を底に、安倍政権下ではは6年連続で増えているというが、じつは微々たる増加でしかないのだ。社会資本整備事業特別会計分を除くと、安倍政権の公共事業費は民主党政権期とほとんど変わっていない。
【*:社会資本整備事業特別会計は「特別会計に関する法律の一部を改正する等の法律」(平成25年法律第76号)により、平成25年度をもって廃止(空港整備勘定は経過勘定として自動車安全特別会計に統合)され一般会計に計上】

 過去五年間、安倍政権が国土強靭化関連で何をしていたのかといえば、ほとんど何もしておらず、予算はほとんど変わっていない。橋本(龍太郎)政権までは、当初予算で10兆円前後だった公共事業関係費が、今や6兆円弱で推移。しかも、大きな補正予算もつけていない。これが安倍政権による「国土強靭化」の実態なのだ。

 国政選挙の度、「この国を、守り抜く」と訴えてきた自民党だが、数値データをコントロールすることで、あたかも危機管理を行っているように見せかけているだけだ。嘘とごまかしは安倍政権の常套手段。「国土強靭化」などという勇ましい言葉に、騙されてはいけない。



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