数多くの政治家を取材してきたが、情報公開の重要性を否定する県知事がいるとは思ってもみなかった。しかも、その知事は「元記者」。嘘とごまかしで世渡りしてきた鹿児島県の三反園訓知事が、記者会見でその正体を現した。
新聞記者とのやり取りのなかで、厳しい追及には逃げの一手で「担当課に聞け」。納得しない記者に苛立ちが募ったのか、情報公開に対する姿勢を問われた知事は「担当課に聞け」と説明を避け、「情報公開なんて興味がない」と言わんばかりの態度で応酬していた。(写真は、会見で新聞記者の質問をさえぎる三反園知事)
■問われる「知事」としての資質
8日に開かれた三反園鹿児島県知事の記者会見。新聞記者が海外出張の際に“知事の指示”で起きたトラブルの原因や、災害時の知事の対応について質問。三反氏は、都合の悪い話になると「担当課に聞け」として、答弁をはぐらかし続けた。(*録画された記録「平成30年11月8日定例知事記者会見」、1時間3分過ぎから)
知事が記者としての程度の低さをさらけ出したのは、情報公開に対する姿勢を問われた時のこと。録画された記録では、1時間24分を過ぎたところで始まる。そのやりとりを下に再現した。
三反園氏はテレビ朝日の元記者。政治畑の経験しかないらしいが、情報公開請求を一度も行ったことがないというのだから呆れるしかない。国や地方自治体の施策決定過程について、自ら検証したことがない証拠だ。
知事の自慢といえば、記者時代に歴代首相を取材してきたこと。様々な場面で誇らしげに話して回るだけあって、一見すると華麗な記者歴だ。下は県のホームページ上で公開されている三反園氏のプロフィールだが、総理官邸や自民党などでキャップを務めていたことや、サミットで歴代首相に同行取材していたことが記載されている。
記者の勲章といえば「スクープ」のはずだ。しかし、駆け出し記者の時代から「ニュースステーション」のコメンテーターに至る過程で、三反園氏がラテ欄(新聞のラジオ・テレビ欄)に載るような政治ネタを拾ってきたという形跡はない。大物政治家に取り入って、“記者ごっご”をやっていただけ。情報公開をかけたとことがないというのは、その証左だろう。
権力の監視こそが報道の使命である。記者は、権力に対する番犬であらねばならない。その立ち位置で国や自治体のやることを本気で検証しようとした時、武器になるのは取材力と情報公開だ。だが三反園氏は、誇らしげに情報公開請求を「やったことがない」と明言し、全国の都道府県で2例しかない「30日間」という開示決定期限については「担当課に聞け」とうそぶく。これは、情報公開の否定であり、県民の知る権利をないがしろにする行為だろう。三反園訓は、ジャーナリストとしてはもちろん、為政者としても最低ということになる。
知事の記者会見は、県政トップが県の施策について説明する場であると同時に、県民を代表して質問する記者たちの質問に、知事自身が答えるための場でもある。そこで「担当課に聞け」というのは責任放棄であり、無能の証明だ。情報公開を否定し、説明責任も果たさない三反園氏には、知事としての資質も資格もない。