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共産党が普天間「意見書」の賛成撤回
傷つく沖縄の民意

2018年10月18日 08:29

普天間飛行場-thumb-600x399-14124.jpg 9月30日投開票の沖縄県知事選における、「オール沖縄」が推した玉城デニー氏の勝利。この盛り上がりに水を差すような「裏切り」行為が10月6日、沖縄の地元紙『琉球新報』で大きく取り上げられた。
 小金井市議会(東京都)が10月5日の本会議で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の代替施設について国民的な議論を求める意見書の提案を見送ったことを伝えたもの。オール沖縄の一角でもある日本共産党の会派が、いったん賛意を表しながら、なぜか反対する意向を示していた。
(写真は、米軍普天間飛行場)

■小金井市議会における共産党の「裏切り」
小金井市議会の混乱を伝える、『琉球新報』.jpg 陳情は、米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設することを中止することと、沖縄だけに基地をおしつけるのではなく基地負担について国内全体で議論することを訴えるもので、地方議会で同様の陳情が議題にのぼることは初めてだった。小金井市議会は9月議会で、この陳情を採択。10月の本会議で陳情内容に基づく意見書を議決する予定だった。

 80%近い国民が日米安保の有用性を認めているなか、沖縄だけに基地が集中している「構造的差別」の解消をはかるのは当然。9月25日の小金井市議会で陳情が採択されたことは画期的な前進だった。それにもかかわらず小金井市の共産党はなぜ、破廉恥な「ドタキャン」行為におよんだのか。

 12日、日本共産党の小池晃書記局長は、同党HPで小金井市議会における突然の「翻意」について説明している。小池書記局長によると、意見書の内容は「(辺野古新基地の)代替施設について全国の自治体を等しく候補地にすること」としたうえで、「小金井の党市議団が途中で態度を変えた経過については、率直におわびをしなければいけない」とする。

 翻意の理由としてあげているのは、①沖縄の人々から勝手に土地を取り上げて基地にしたのに、なぜ代わりの基地を提供しなければならないのか、②日本共産党は普天間基地の無条件撤去を主張してきた、③基地の閉鎖撤去がオール沖縄の合意になっている、などの3点。意見書にある「代替施設について、沖縄以外の全国すべての自治体を候補地とすること」という部分については、「政党として賛成することはできません」と断言している。(右が「琉球新報」10月6日朝刊の紙面)

■「どこにも基地はいらない」論の欺瞞
 作家の目取真俊さんは長年、名護市辺野古で反基地運動に取り組んできた。目取真さんは基本的には単独行動を好む「孤高」の作家で、全国各地からバスを連ねて辺野古にはせ参じる党派色の濃い運動からは距離を置いている。しかし、そういった集団戦を全否定しているわけではなく、今年2月の名護市長選のさ中に取材した際には、「反基地運動の現場で、共産党が一定の存在感を保ってきたのは事実。ウチナンチュー(沖縄人)であっても基地問題に無関心な層は多いし、あるいは内地(本土)の人間でもすぐに熱が冷めることがほとんど。党の方針があるにせよ、彼らが手弁当でも運動の現場に足を運ぶ継続する力は認めざるをえない」と、共産党に一定の評価を与えるような発言をしていた。

 しかし、今回の小金井市議会での裏切り行為は、党の存在と党方針や運動理論の徹底を最優先課題とする共産党の限界を露呈した形だ。「日本国内のどこにも基地はいらない」と胸を張ってみたところで、沖縄に基地が存在し続ける現実が1ミリたりと動くわけではない。頭でっかちな理屈を言い募ることで利益を得るのは誰なのか、超高学歴の多い共産党首脳陣にまさかわからないはずがあるまい。野党共闘を進めるためにソフト路線に転換したとされる共産党だが、「官僚以上に官僚的」と揶揄される同党の体質がまったく変わっていないことの証でもあろう。たとえ共闘を願ったところで、「党中央に言われたから」とコロコロ言動を変えていては、背中を預けるに足る存在に昇格することはない。

 共産党の背信行為を、党勢の拡大のために基地問題を利用していると一刀両断することは可能だがしかし、抵抗運動の現場で主戦力となっている事実、さらに「ウチナンチューには生活がある。誰もが毎日座り込みなんてできるはずがない」(目取真さん)という現実の前で、板挟みになるのはいつも最前線に立つ者たちだ。統一地方選、参院選など注目選挙が目白押しの来年に向けて、共産党はどう落とし前をつけるつもりなのか。

■矛盾を解決する「磁場」としての沖縄
 沖縄県知事選も終盤にさしかかったある日、普天間飛行場を一望できる嘉数高台公園(宜野湾市)に、フリースクールに通う子どもたちを連れた2組の団体がいた。

 引率していたまじめそうな大学生は、遠くにオスプレイが2列に並んで駐機しているのを見やりながら、「自分の目で、沖縄の置かれた現実を確かめてください」と子どもたちに向けて話していた。着実に根付いている、草の根の反基地運動を頼もしく感じつつ、いったいあと何十年こういった活動を続け、何万人を基地の現場に連れてくれば沖縄人が「見学される側」から解放されるのかと気が重くもなった。

 沖縄人が見学されている間、基地(暴力)が生活のすぐ横にある現実は何ひとつ変わらなかった。沖縄の若い世代が「生まれるずっと前から、日常の一部として基地があった」ことを語り、だから基地とは共生できると主張することがあるが、こうした無自覚さを責めることなど誰にもできはしまい。若者の多くは沖縄を出ることがないがゆえに現実を受け入れ、日本で暮らす同世代の若者たちと同じように、可能な限り自分にとって有利な道を選択しながら「沖縄的したたかさ」を身に着けていく。植民地において現地住民を最も弾圧したのが、現地民から選ばれた官吏だったのは良く知られるところだ。

 植民地主義的視点から沖縄の置かれた状況を分析する、沖縄大学非常勤講師の親川志奈子さん(37)は、「共産党は比較的沖縄のことを良く考えていると評価していたので、非常に残念です。少なくとも本土の基地負担については議論すべきだったのに、その機会すら放棄してしまった」と、共産党のかたくなさを批判する。
 「自民党も共産党も『沖縄に寄り添う』と味方のような顔をして近づいてきますが、結局、沖縄を利用しようとしているという点では同じだと感じました」(親川さん)

 親川さんは「(知事選で敗れた)佐喜真さん自身も、佐喜真さんに投票した人も同じウチナンチュー。好きでウチナンチュー同士が対立しているのでない。断絶を生ませているのは日本人ではないのか」と、新知事誕生を無邪気に喜ぶ革新勢力や、「基地推進vs反基地」というわかりやすい構図を垂れ流すだけで沖縄人の内面を知ろうともしない本土メディアにも冷ややかな視線を向ける。

 今回の小金井市議会におけるドタバタ劇は、「日本に基地は必要」「でも、自分たちの町には必要ない」というどこまでも交わることのない平行線を、無理やり結ばせる強力な磁場(歪み)として、沖縄が存在していることを浮き彫りにしてみせた。いつまで沖縄は矛盾を埋めるための都合の良い、政治的で曖昧な存在であり続けなければならないのか。親川さんが時に刺すような物言いをするのは、そうした歪みの犠牲になるのがいつも女性や子どもなどの弱い者たちだからだ。

■選択の日は来るのか
 沖縄の基地問題を知る、とは基地や激戦の跡をたどるだけではなくむしろ「日本人自身を知る」という努めて内省的な行為の積み重ねではないか。基地の負担を自分たちも引き受けるのか、あるいはアメリカの意向に逆らってでも基地撤廃を選択できる政権を誕生させるのか。いずれにせよ「知って、行動する」――唯一その方法でしか、沖縄を基地から解放することはできない。

 親川さんが考える行動の選択肢の1つには、「沖縄独立」も含まれている。



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