フランスに出張した三反園訓鹿児島県知事の「指示」で一方的に公務日程が変更され、日程調整に協力した県内企業との関係が悪化する事態となっていたことが、県への情報公開請求で入手した職員の復命書から明らかとなった。
日程変更にともない、視察の大きな目的が果たされなかったのはもちろん、スケジュール調整をふいにしたことで『関係が拗れ』(復命書の記述より)た漁業関係法人が、知事主催のレセプションに不参加となるなど深刻な状況になっていた。
行政側の自画自賛が書き綴られるのが普通の復命書にしては、異例の記述ばかり。知事の身勝手に対する職員の抗議ともとれる内容だが、事実確認を求めたHUNTERの取材に対し県側は文書による回答を頑なに拒否。整合性のない言い訳で、知事をかばう姿勢を見せている。
■復命書の記述 ― 事実上の知事批判
HUNTERが鹿児島県に情報公開請求したのは、三反園氏が知事に就任して以来の海外出張に関する文書。今夏のブラジル出張で、知事が旅行代理店の女性社員を怒鳴りつけるという出来事があったため、知事本人と随行職員の出張命令書や復命書(職員のみが作成)を確認し、知事の海外での動きを調べるのが目的だった。
計6件の海外出張のなかで注目したのは、今年1月14日から20日にかけて行われたベトナムとフランスへの『県産品セールス及び視察・表敬訪問』。この出張のうち、フランス・コンカルノーを訪問した1月17日の出来事について記した県職員の復命書は、異例と言うしかない内容だった。
下が、県PR・観光戦略部かごしまPR課の職員が作成した出張復命書である。問題の記述は表と裏にそれぞれ記されており、その該当部分を赤い囲みで示した上で、拡大してアンダーラインを引いた。
復命書の表には、こう記されている。
コンカルノーでのスケジュールについて、前日に知事から、パリ市内へ早い時間に戻れるよう変更の指示があり、現地担当者(枕崎フランス鰹節)と調整をしたが、調整はうまくいかず、ゴタゴタした中での、コンカルノー入りとなった。結果的には、昼食懇談会、鰹節工場視察は無事に実施。予定していた漁業博物館視察、鰹節取扱スーパーの視察は中止となった。
つまり、三反園知事からフランス入り直前(この時点で知事はベトナム滞在中)にコンカルノーの日程を短縮するよう指示があったが、調整がうまくつかず、漁業博物館と鰹節取扱スーパーの視察が中止になったということだ。ここで確認しておきたいのは、日程の変更が『知事の指示』によるものであるということ。首長の海外への公務出張は関係者の数も多く、日程変更は極めて稀であり、知事の指示が絶対条件となる。
『知事の指示』については、復命書の裏面「CHECK(分析)」の記述でも明らかだ(下の文書参照)。
・コンカルノーでの行程については、(株)枕崎フランス鰹節の担当者に段取りをお願いし進めていたが、訪問直前の知事からのスケジュール変更指示により、調整に苦慮した。
・その結果、(株)枕崎フランス鰹節との関係が拗れて、鰹節流通に関わるFOODEXも含め、翌日のパリでの鰹節トップセールスの中止、知事主催レセプションの不参加となった。
「枕崎フランス鰹節」は、鰹節生産で日本一といわれる枕崎の水産加工会社などが、鰹節の世界展開を目的に2014年に設立した法人。輸出ではなく、フランスで鰹節を製造するというプロジェクトなのだという。県は、この枕崎フランス鰹節にコンカルノーにおける日程の調整を依頼し、本番前日になって一部の予定をキャンセルしていた。
同社は、準備に相当な時間と労力を使ったはずで、身勝手な知事の態度によって「関係が拗れ」るのは当然だろう。
突然の日程変更に苦慮したのは担当職員も同じだったようだ。出張先での出来事を、事務的な記述で埋めるのが普通の復命書に、『ゴタゴタ』の詳細まで入れたというのは極めて異例。怒りさえ感じさせる一連の記述は、知事批判ともとれる。
背景にあるのが、県庁職員に対する知事のパワハラであることは言うまでもない。ブラジル出張では、理不尽の矛先が、職員ではなく旅行代理店の女性添乗員に向けられていた。
■消えた「トップセールス」
最大の問題は、税金を使った海外出張でありながら、知事の気まぐれで、その主目的を放棄した形になったことだ。前述した通り、出張の目的は『県産品セールス及び視察・表敬訪問』。事前に決定した日程(下、参照)には、17日に「漁業博物館」と「鰹節取扱スーパー」の視察が入っており、翌18日には「鰹節のトップセールス」という最大の目的があった。
しかし、前掲の復命書に記されている通り、1月17日に実際に消化されたのは下の日程。「漁業博物館」及び「鰹節取扱スーパー」の視察はもちろん、肝心の「鰹節のトップセールス」まで無くなっている。(*下、参照)
公費支出の目的が失われたのは確かで、これでは何のためにフランスに出かけたのか分からない。その上、鰹節という郷土の特産品を世界に広げようと努力している県内の漁業関係者との関係を「拗らせた」というのだから、話になるまい。税金を使って「トップセールス」に出向いた意義を、三反園氏はまったく理解していなかったというわけだ。
■復命書否定も文書回答を頑なに拒否
県政トップに君臨する元テレビコメンテーターは、紛れもなく暴君。しかも、選挙公約である“反原発”を、知事就任後に平気で引っ込めたことでも分かるような希代のペテン師だ。県庁内部からも、「部下へのパワハラは日常茶反」「平気で嘘をつく」「責任は職員に押し付けて自分は逃げる」といった声が聞こえてくる状況で、意味もなく怒鳴り散らされ精神的におかしくなった職員もいるという。異例の復命書は、ささやかな“知事への抵抗”とみることもできる。
復命書は公文書であり、前掲の復命書で分かるように部内の確認決裁も済んでいる。しかし県の担当課は、事実確認を求めたHUNTERに対し、「復命書の記述は間違いだった」と回答。その理由を文書で説明するよう求めたところ、頑なに拒否するという事態となっている。
県側が“口頭”にこだわって捻り出した理由とは…‥‥。
(以下、次稿)