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指宿市土地公社 東京ドーム5個分の“塩漬け土地”を放置

2018年10月 4日 08:35

DSC05922.JPG 鹿児島県指宿市の土地開発公社が、これまでに取得した土地約24へクラールを、利用することなく「塩漬け」の状態にしていることが明らかとなった。指宿市への情報公開請求で入手した「土地売買契約書」を精査して分かったもの。古いもので昭和54年に取得した土地もあり、東京ドーム約5個分の公有地が長期にわたって眠っていたことになる。
 塩漬け土地は、自治体の誤った判断で不必要な土地を買った結果であり、市民のお荷物。最終的に血税で始末せざるを得ない事態も想定されることから、同市の土地政策に疑問符が付く状況となっている。(写真は塩漬け土地の契約書)

■眠っていた広大な市民の土地
 「塩漬け土地」とは、自治体の土地開発公社などが5年以上の長期にわたって所有している土地。自治体が何らかの公共事業のために取得したものの、自治体の財政悪化や計画変更などが原因で事業が進まなかったり、中止されたりして、放置されている状態をいう。公社が土地を取得する場合は、金融機関から融資を受けるのが普通で、計画通りに土地売却が進まなければ公社の支払金利が増加するほか、最悪の場合は税金で赤字を補填する必要に迫られることになる。

 指宿市への情報公開請求で入手した土地開発公社が保有する土地の契約書によれば、同公社が保有する土地は2,430,009,270㎡。このうち塩漬けになっている土地は242,998.34㎡(約24ヘクタール)で、契約時の買収価格は総額14億9,837円だった。東京ドーム約5個分の土地を眠らせている状態だ。

 売買契約を結ぶ際には、契約書の中に事業目的が明記されているが、塩漬け土地の大量保有は必要のない土地を税金で買い取ったことの証明。市の土地行政に間違いがあったということだ。

 現在、公社の債務は11億9,600万円。利息については土地の売却益や貸した土地の賃料などで賄っているというが、塩漬け土地は残されたままで、どう処分するかの検討さえなされていない状況だという。「されていない」どころか、“検討するつもりもない”と言った方が正確かもしれない。

■杜撰な行政 ― 契約金額誤記載を見逃し
 これまで報じてきた通り、土地売買契約書に関する指宿市への情報公開請求の過程で、土地開発公社の保有地596筆約27ヘクタールのうち75筆16,582.64㎡分の契約書が不存在であることが判明。HUNTERの追及を受けて、5か月捜して「ない」と断言した契約書が突然見つかるという不可解な状況となっている。

 指宿市が行ってきた土地買収が、いかにデタラメなものだったかを証明する証拠も見つかった。下は平成9年11月に土地開発公社が市内の土地6筆・約1,276㎡を買収した際に地主と交わした契約書だが、筆ごとの金額の合計と契約書上の合計額が合わない。正確な合計金額は「3,165,000円」なのに、契約金額は25,000円多い「3,190,000円」になっている。他の自治体では考えられないミスが指宿市では認められ、訂正もされずに決裁されていた。(*契約書への赤い書き込みはHUNTER編集部)

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 永久保存が義務付けられた土地売買の契約書さえ満足に管理できない指宿市が、塩漬け土地の処分についてのまともな議論ができる訳がない。ただし、「できない」「やらない」は、市民軽視であると同時に国の指導に逆らうということになる。

 利用の予定がない塩漬け土地は、土地開発公社が保有する期間分だけ金利が増える。その分、売却価格が上昇するため、ますます売れなくなるという悪循環に陥る。国は、前出の総務省通知などを通じて塩漬け土地についての取得目的や塩漬けになった理由、さらには処分計画などを情報公開し、広範な議論を進めるよう促してきた。

 総務省は平成21年6月、地方自治体の土地開発公社を含む第3セクターの経営健全化などを図る目的で、都道府県及び指定都市に対し「第三セクター等の抜本的改革の推進等について」と題する文書を発出。平成26年にはこれを改訂し、都道府県、都道府県議会議長、指定都市、指定都市議会議長に対し「第三セクター等の経営健全化の推進等について」と具体的な経営健全化策の策定を促すための「な第三セクター等の経営健全化等に関する指針の策定について」を再発出している。この間、平成25年には、「土地開発公社経営健全化対策について」を各自治体あてに発出し、5年以上の債務保証土地(いわゆる「塩漬け土地」)の縮減を進めるよう計画策定等を対象団体に求めていた。指宿市は、国が出した一連の通知を無視してきたということになる。

 広大な塩漬け土地は、失政の証だ。放置することは市民への背信行為だが、指宿市は動こうとしていない。“契約書の保管場所が分からなかった”という事態は、同市の病状が重いことを示している。



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