九州電力が計画する使用済み核燃料の乾式貯蔵施設が、玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の敷地外に「中間貯蔵施設」として建設される可能性があることを報じたところ、記事の内容に、同社広報からクレームがついた。
ただし、クレームは「中間貯蔵施設建設の可能性」に対するものではなく、九電側の取材対応を批判的に書いた部分への言い訳。同社の方から回答期限を切っておきながら、守らなかったことを棚に上げ、「回答しないとは言っていない」のだという。しかし、肝心の中間貯蔵施設についての質問に同社は……。(写真は玄海原発3、4号機)
■「中間貯蔵施設」建設の可能性
まず、九電が中間貯蔵施設を建設する可能性があることについて報じたHUNTERの記事(「九電が玄海原発敷地外に「中間貯蔵施設」建設の可能性 緊急時対策棟の場所巡り虚偽説明も」)について、おさらいしておきたい。
記事は、玄海原発の敷地の内と外4か所で進む土木工事の場所を図で示し、九電がうち3カ所(下の図、②③④)についての工事目的について明確な回答がなかったことを記した。その上で、もっとも大規模な土木工事が行われている原発敷地外(九電側が明言)の④に、使用済み核燃料の乾式貯蔵施設を建設する可能性があることを報じたものだった。
九電の池辺和弘社長は8月30日の会見で、使用済み核燃料を金属製の容器に入れて保管する「乾式貯蔵」の施設を、玄海原発の『敷地内』に設ける方針であることを表明しており、敷地外での施設整備が現実化すれば、発言との整合性が問われることになる。原発敷地内なら「乾式貯蔵施設」で済むが、敷地外となれば「中間貯蔵施設」だ。従って、九電への取材で最も聞きたい点として伝えたのは、“敷地外④に乾式貯蔵施設を建設するのではないか”ということだった。
■変わらぬ体質 ― 回答はぐらかしクレーム
九電側は「社長は会見で“敷地内”と言っております」と繰り返したが、限られた原発の敷地面積や土木工事の規模から乾式貯蔵施設を整備するとしたら④の場所しか考えられない。原発敷地内で行われている土木工事の目的と合わせ、社内で確認の上、回答をもらうということになっていた。しかし、何日経っても連絡はない。2週間待って行った催促に対して九電は、「来週までには回答する」と明言していた。
記事の配信に踏み切ったのは、回答がなかったからだ。九電側から出した「来週までには」も守られなかったし、そもそも九電本社への取材から回答に、3週間もかかる事案ではあるまい。しかし、九電の広報は、当該記事の配信後、不機嫌そうな様子でクレームをつけてきた。九電の主張はこうだ。
・(HUNTERの記事では)4カ所について回答がないとしているが、②と③については面談時に答えており、①については後日、回答できるものかどうかも含めて『回答する』としていた。『回答しない』とは言っていない。記事中では、「4カ所の工事が何を目的とするものか確認を求めていたが、1カ所を除き、それぞれの工事目的について回答できないとの姿勢」としているが、文章的に違うのではないか。面談時には『確認して(電話で)連絡する』としていたのに、連絡を待たないままに記事化してしまった。確認してからでないと、こういうことになってしまう。・(回答に時間がかかったことについては)原子力発電所関連のことについては非常にセンシティブ(微妙で慎重を要する)で、社内の調整などで時間がかかるため。
言い訳としては、あまりにお粗末だ。4つの工事箇所の内、ハッキリしていたのは①のコンクリート製造施設についてだけ。②と③については説明に曖昧な点があったため、④についての質問と合わせ、回答するという話だった。九電広報が強調したかったのは「回答しないとは言っていない」の部分だったのだろうが、約束を守らなかったのは九電側。回答が延びるのなら、連絡するのが当然だろうに、九電側からはその電話さえなかった。「回答がない」と書かれて、文句を言える立場ではないだろう。
さらに九電広報は、④の場所について、“佐賀県に示した場所”とは違うところだと言う。“佐賀県に示した場所”とは、佐賀県が公表した下の資料にある緊急時対策棟の建設予定地のこと。どう見ても、同一地域だ。それを九電は、違う場所だと強弁する。なぜか――?
九電は本社での取材時に「緊急時対策棟の場所については明かせない」と断言した。しかし、佐賀県原子力安全専門部会向けの資料には緊急時対策棟予定地の記載がある。不誠実、虚偽説明、隠蔽……。なんと言われても仕方のない話であり、記事にもそう書いた。一番の問題が、不都合な真実を隠し、市民軽視で原発を動かす同社の姿勢そのものだからだ。実際、記事へのクレームについて自分から電話してきた九電広報は、肝心の「原発敷地外(上掲図④の場所)に中間貯蔵施設を建設するのではないか?」という質問には、一切答えていない。④の場所と“佐賀県に示した場所”が違うなどという主張は、議論をはぐらかすための逃げでしかない。
玄海原発の敷地外に乾式貯蔵施設を整備することになれば、九州初となる「中間貯蔵施設」の誕生である。六ケ所村の核燃料再処理がストップし、核ゴミの最終処分地が決まらない現状では、増え続ける使用済み核燃料の永久保管につながる可能性が否定できない。周辺住民の不安は確実に増す。九電は正確な情報を発信すべきだが、今回のケースでも分かるように、市民軽視としか言いようのない不誠実な対応で、自ら信頼関係を崩す。問われているのは、隠蔽を繰り返してきた同社の体質なのだが……。