霞が関に倣ったのか、指宿市で“ない”はずの文書が唐突に出てきた。
保有する土地を取得した際の「土地売買契約書」を大量に紛失していた鹿児島県指宿市の土地開発公社が、紛失の事実を報道したとたん態度を一変。HUNTERの記者に対し、「捜索中だった契約書が見つかった」と開示決定を覆す連絡をしてきた。
HUNTERの情報公開請求から5か月。さんざん時間をかけて文書の不存在を確定しておきながら、厳しい指摘を受け、わずか1日で主張を撤回した形だ。同市の土地行政に、大きな疑念を生じさせる事態となった。
■5か月かかって「不存在」明言も……
指宿市に情報公開を求めていたのは、市土地開発公社が保有する土地の売買契約書。取得から5年以上が経過した、いわゆる「塩漬け土地」の実態を調べる目的で、4月17日に開示請求していた。
市は、通常15日となる開示決定期限を大幅に延長。文書開示自体を2回に分け5月24日に一部を開示し、残りを7月31日付けで開示するなど、時間をかけた異例の作業だった。
最後の開示にあたって送付されてきた「開示実施通知書」や公社保有地の一覧表に、「契約書無し」と記載されている土地があったため精査したところ、同公社の保有する土地は596筆約27ヘクタールのうち75筆16,582.64㎡分の契約書が不存在であることが判明。今月12日午後まで複数回にわたって公社側に確認を求めたところ、「捜索したが無かった」「初めて不存在が分かった」と明言し、事実上の紛失を認めていた。
■報道受け方針転換
こうした一連の動きと契約書紛失の事実を報じたのが先週13日。ところが指宿市は14日午後になって連絡を寄こし「捜索中だった契約書75筆分が見つかりました。求めがあれば、開示したいと考えています」と、主張を一変させる。
HUNTERの開示請求から5か月間捜しても「ない」としていた契約書が、公文書毀棄の疑いをかけられたとたん、都合よく出てきた格好。出来過ぎた話に、偶然と割り切るのが難しい状況だ。
どうみても、厳しく追及され隠していたものを出さざるを得なくなったか、後付けで作成したかのどちらか。こうなると開示された文書自体への信頼性もなくなる。
指宿市には、これまでの経緯を文書にして送付するよう求めているが、入手した契約書などから同市の土地開発公社が広大な“塩漬け土地”を保有していることが分かっており、さらに問題が広がりそうな状況だ。