鹿児島県指宿市の土地開発公社が、保有する土地を取得した際の「土地売買契約書」を大量に紛失していたことが明らかとなった。
公社の土地保有状況を調べるため、指宿市に情報公開請求してわかったもの。土地の売買契約書は永久保存が普通で、同市の文書管理規定でも「永久保存」となっているが、保有地596筆の契約書のうち75筆分の所在が分からなくなっており、土地買収費の支出根拠が失われた状態だ。意図的な廃棄なら公文書毀棄の疑いもある。
公社側も契約書の不存在を認めており、文書管理の在り方が厳しく問われる状況となっている。
■なくなった75筆分の契約書
指宿市に情報公開を求めていたのは、市土地開発公社が保有する土地の売買契約書。取得から5年以上が経過した、いわゆる「塩漬け土地」の実態を調べる目的で、4月17日に開示請求していた。
市は、通常15日となる開示決定期限を延長したうえ、文書開示自体を2回に分けて5月24日に一部を開示、残りを7月31日付けで開示するなど、時間をかけて作業していた。
最後の開示にあたって送付されてきた「開示実施通知書」には、
・保有地の一覧表を添付すること
・一覧表の備考欄に「契約書無し」と記載されている土地は、契約書の所在が不明であること
などと異例の文言が記されていたため、開示文書を入手後、精査を進めていた。
開示された資料によれば、同公社の保有する土地は596筆約27ヘクタール。公社側提示資料や契約書などから、このうち75筆16,582.64㎡分の契約書が開示されていないことが分かった。公社側に確認を求めたところ、「探したが無かった」として、事実上の紛失を認めている。
大量の契約書が無くなっていることについて、市公社は「初めて分かった」と明言。これまで契約書の紛失に気付いた関係者はいなかったとしており、9月12日時点で市長にも報告を上げていないという。
■公文書毀棄の可能性も
市が定めた「指宿市文書取扱規程」によれば、『不動産その他の財産の取得、管理、処分等に関する文書で重要なもの』は永久保存するとしている。重要文書の紛失という非常識な現状が、同市の杜撰な文書管理の実態を露呈した形だ。何者かが意図的に契約書を廃棄したとすれば、刑法上の公文書毀棄罪に問われる可能性もある。
現状では、公社が保有する土地の総面積は算出できるものの、契約書の不存在によって“誰から、いくらで”購入したかという個別の契約の詳細な内容が分からない状況になっている。これまでの土地買収にかかる支出のうち、契約書がない土地買収についての“支出根拠”が失われたことになる。さらに、一部の契約金額が不明になっていることも判明しており、市の責任が厳しく問われる事態だ。