鹿児島県南大隅町の森田俊彦町長が、鹿児島市内のマンションに自分名義の部屋を所有しながら、資産報告書に記載していなかったことが分かった。
同町役場で確認したところ、保存されている過去5年間分の資産報告書にはマンションに関する記載がなく、森田氏が初当選した2009年(平成21年)以来、一度もマンション所有を報告していなかったものとみられる。
すべての保有不動産を報告書に記載するよう定めている「政治倫理の確立のための南大隅町長の資産等の公開に関する条例」に違反する状態であることは明らか。意図的に資産報告書への記載を避けて部屋の存在を隠した可能性が高く、電力関係者からの接待問題を抱えたままの森田氏に、新たな疑惑が浮上した形だ。
(写真、円内が森田町長。このマンションの3階に町長名義の部屋がある)
■鹿児島中央駅近くにマンション
問題の物件は、鹿児島中央駅から歩いて5分ほどの同市武2丁目にあるマンションの一室。登記を確認したところ、昭和61年(1986年)に森田氏本人が売買によって取得していた。(*下が登記簿。赤い囲みはHUNTER編集部)
■意図的な条例違反か
南大隅町の「政治倫理の確立のための南大隅町長の資産等の公開に関する条例」は、町長が毎年12月31日の時点で保有する土地、建物、預・貯金(普通貯金を除く)、有価証券、自動車、船舶、美術工芸品などの他、貸付金、借入金、収入などについても翌年の4月30日までに作成する報告書に記載するよう定めている。
条例の規定で、町役場に保存されているのは平成26年から30年までの5年分の資産報告書。14日に役場で閲覧したところ、記載されている不動産は、同氏の自宅など南大隅町内の土地と建物だけだった。課税台帳で確認したらしく地番ごとの詳細が記されているが、鹿児島市内に保有するマンションの部屋と区分所有する土地については記載がない。同町総務課に条例違反の確認を求めたところ「自分たちには判断できない」としている。
問題は、森田氏が意図的に鹿児島市内のマンションを報告しなかった疑いが濃いことだ。森田氏は、鹿児島市内での公務を済ますと、マンションの自室に直行。それから着替えて天文館などの歓楽街に出かけることが多い。複数の目撃証言が寄せられたことから、HUNTERと福岡市のニュースサイトNET-IBの合同取材班が、今年になってその様子を現認していた。
資産報告を作成する際、年中使っている自分のマンションの存在を忘れるとは考えにくい。未記載が5年以上続いていることから、意図的に隠したと見る方が自然で、「忘れていた」「報告書の作成を人に任せていた」などといった言い訳は、通用しない。なぜ隠したかについて、町長自身の説明が必要だ。
■宿泊費丸儲け?
当然、報告書の修正が行われるはずだが、それだけで済む話ではない。南大隅町への情報公開請求で入手した森田氏の出張命令書によれば、2016年4月から今年8月までの間に鹿児島市内に出張したのは計96回。このうち、日帰りを除く出張で町または県内の公的団体から宿泊費が支給されたのが73回となっている。同町の旅費規定によれば、町長が鹿児島市内に宿泊した場合に支給されるのは10,000円。領収書の提出義務はない。森田氏は、自己所有のマンションに泊まりながら、支出の証明が求められないのをいいことに、宿泊費を懐に入れていた可能性がある。財政難の南大隅町にあって、町政トップがやることではあるまい。
森田町長を巡っては、放射性廃棄物(核ゴミ)の処分場誘致に絡んで電力業界の関係者から数十回に及ぶ接待を受けていたことや、東京出張の際の宿泊先ホテルの自室に、業界関係者提供のデリヘル嬢を招き入れていたことが分かっている。カネとオンナに隠し財産――。 森田氏に、税金を原資とする給与をもらう資格はない。