不適切な契約実態を指摘され「公募」による業者選定に変更しながら、応募者がいなかったことを理由にこれまで通りの随意契約を続けていた福岡市が、業者を擁護しているとしか思えない不可解な動きで疑念を増幅させる状況となっている。
(写真は福岡市役所)
■信用できない市側の説明
問題の契約は、福岡市発注の道路維持に関する業務委託。市内一円の道路や下水管の破損、河川の詰まりなどに対して、24時間体制で緊急処理を行うもので、年間5億円超の契約額となっている。同業務は、長年にわたって「環境開発」(福岡市博多区)が受注してきた。
7月中旬、HUNTERは市に「市発注の単価契約で、下請業者に緊急対応をまかせるのは可能か」と問い合わせた。この時、委託業務の名称や業者名は出していない。後日、契約を所管した区役所を訪問したところ、担当者は「環境開発に連絡を取り、確認した。下請けには出していないと聞いている」と明言。「下請業者が緊急の初動対応するのは制度上、かなり問題がある」とまで言い切っていた。市はHUNTERが問い合わせた直後、わざわざ環境開発を呼び出していたのだ。
重ねて述べるが、記者の問い合わせでは「環境開発」という社名すら発していない。慌てた市側の対応に、記者が疑念を抱いたのは言うまでもない。
このあと、福岡県への情報公開で入手した市内に本社を置く建設会社A社の工事経歴書から、毎年同社が2億円台の道路維持業務を環境開発から下請受注していることが判明。疑念はさらに膨らむ。「下請には出していない」という環境開発の主張と食い違っていたからだ。周辺取材を進めるなか、市の担当者より一通のメールが届く。
「単価契約 東区管内道路維持委託(暗渠清掃・緊急処理・安全対策)」外22件につきまして、7月18日に当課に来られた際、ご説明した内容について一部、正確でないご説明をしておりました。補足を含め、あらためて以下のとおりご説明いたします。◆「公募」について
○「単価契約 東区管内道路維持委託(暗渠清掃・緊急処理・安全対策)」外22件については、特命随意契約をしてきていましたが、平成25年度に行われた随意契約総点検の際に、競争性や透明性を確保するために平成26年度から公募を実施することとしたものです。
○実施の結果、㈱環境開発以外の事業所からの応募はありませんでした。理由としましては、当該業務を履行できる能力を有していないから、だけではなく、能力は有しているが、受託する意思がない事業所もいるためであると考えます。◆下請けについて
○下請け業者に業務を行わせることについては、問題はありません。
○したがって、下請け業者が初動対応を行うことも可能です。
以上、どうぞよろしくお願いします。
当初、同業務における下請発注を「問題視」しておきながら、それを完全にひっくり返す驚きの内容。これでは環境開発を役所に呼んで、業務実態について聞き取りをした意味がない。下請けを使うことに問題がないのなら、業者に説明を求める必要などあるまい。問題があるから聞き取りを行ったのであって、前出の言い訳メールには整合性がない。
市側の動きの裏に見え隠れするのは、行政と特定業者の癒着構造だ。実際には、「下請業者が緊急の初動対応するのは制度上、かなり問題がある」(当初の市側回答)というのが本当のところ。しかし、実態が暴かれれば市と環境開発の長い付き合いに不都合が生じる。そこで、「下請け利用は問題ない」と強弁するしかなくなった――これが実態だろう。環境開発としては迷惑な話なのかもしれないが、市側の不可解な動きが、事業に疑念を抱かせたのは確かだ。