政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
僭越ながら:論

「国民の敵」は誰か メディア批判で共通するトランプと安倍の幼稚さ

2018年8月20日 09:00

安倍トランプ.jpg 気に入らない報道機関を「国民の敵」と非難したトランプ大統領に、全米の350を超える新聞社などが、報道の自由を訴える社説で一斉に反撃した。
 自身に批判的な報道を「フェイク(偽)ニュース」と罵り、メディア批判を繰り返してきた狂気の大統領に、メディアが危機感を募らせた結果だ。
 一方、トランプの最も忠実なしもべである安倍晋三が首相を務める日本の状況は、米国以上に深刻。大手メディアが委縮して政権批判のトーンが下がり、テレビからは権力の歪みや戦争の悲惨さを訴える番組が次々と姿を消している。

■米国メディアは健全
 トランプが主張してきた「フェイクニュース」は、単なる“言いがかり”に過ぎない。報道で問題にされた言動を、フェイクとする証拠がないからだ。
 メディアが報道に至るには、それなりに取材を積み重ね、慎重に裏取りするもの。取材対象が一国の大統領ともなれば、なおさらのことだろう。大半の米国メディアは、立ち位置を鮮明にすることはあっても、産経新聞のように権力の犬と化して嘘八百を垂れ流すことはない。

 問題になっている「国民の敵」にしても、トランプは何を根拠にしているのかさえ、明らかにしていない。自分にとって都合の悪い報道を続けるメディアに対し、論理的な反論ができずに感情を爆発させただけの話だ。一部の狂信的なトランプ支持者を除いて、“マスコミ=国民の敵”論に共鳴する米国民はいないだろう。

 狂気を内包する男を大統領に選んだ米国は不幸だが、「権力の監視」という責務をしっかりと認識し、連帯感をもってトランプに立ち向かう健全なメディアの存在は、米国民が誇るべきものだ。
 深刻なのはむしろ日本のほうで、大半の大手メディアが死にかける状況となっている。特にテレビは酷い。

■「死に体」となりつつある日本の大手メディア
 安倍政権になって、政府や自民党の暴走が止まらない。2014年の衆院解散後、TBSの報道番組 『NEWS23』に出演した安倍首相は、街頭インタビューでの有権者のコメントに逆切れし、「これおかしいじゃないですか」と色をなした。
 有権者のコメント自体は、景気の悪さやアベノミクスの効果を実感していないという、ごく当たり前のものばかりだったが、安倍は自説に迎合した意見が無かったことに腹を立て、直後に自民党が選挙報道に干渉して物議を醸す事態となる。

 その後も政権によるメディアへの圧力は苛烈を極めており、NEWS23のキャスターを務めていた毎日新聞社特別編集委員の故・岸井成格氏が降板した背景には、政権の力が働いたとされている。2016年には、高市早苗総務相が国会で、放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返したと判断された場合、放送法4条違反を理由に、電波法76条に基づいて「電波停止」を命じる可能性があると発言して問題となった。

 “圧力”の効果はてきめん。権力批判がウリだったテレビ朝日の「報道ステーション」からは、権力批判どころか政治に関するニュースそのものが消えた。
 影響は、報道番組だけに止まらない。第2次安倍政権の発足以来、8月15日の終戦記念日に合わせて放送されていた戦争の悲惨さを訴えるドラマや特集が激減。「戦争ができる国」を目指す安倍政権に忖度したのか、直接的な圧力があったのか、テレビ局が「報道機関」としての矜持を失っているのは確かだ。

 こうした状況に明確な懸念を示したのは、国内ではなく海外。2016年には、日本国内における「表現の自由」の状況を調査した国連のデービッド・ケイ特別報告者が、権力側の圧力で委縮する報道機関の現状に警鐘を鳴らした。
 昨年11月には、国連の人権理事会が日本の人権状況を審査する作業部会を約5年ぶりに開催。対日人権審査では、特定秘密保護法による「報道の自由」の侵害に懸念が示されたほか、アメリカ代表からは日本政府による電波停止の根拠となっている放送法4条の改正と、独立した第三者監督機関の設立を求める意見が出されている。

■新聞が「国民の敵」になった歴史
 日本には、報道が「国民の敵」になった歴史がある。戦中における日本の新聞は、負けていることを知りながら「勝った、勝った」と大本営発表――つまりはフェイクニュース――を流し続け、国民を戦争に駆り立てた。国民に塗炭の苦しみを与えたのは軍部が牛耳る「国家」だったが、新聞やラジオも同罪だったことは明らかだ。しかし、日本の一部メディアはその時の反省を忘れかけている。

 安倍政権が強行してきた特定秘密保護法、集団的自衛権の行使、安全保障法制は戦争への道普請だが、敗戦を知っているはずの日本で、何故かそれらの政治課題に対する議論が割れてきた。原因の一つは、新聞の論調が真っ二つに分かれることだ。
 政権の犬と化した読売・産経に対し、権力批判に徹する朝日・毎日・地方紙連合軍――。読売・産経は、大本営に従った戦前の新聞と同じことをやっているのだが、勇ましい記事には一定の支持がある。
 戦争が風化するなか、産経などという右翼の御用新聞の鼻息は荒くなるばかり。日本は再び滅びへの道を辿りつつある。

■幼稚な日米トップ
 トランプと安倍は似た者同士。ともに、自身に批判的なメディアを目の敵にして攻撃してきた。トランプの「フェイクニュース」と「国民の敵」はその一例と言えるが、安倍の場合は“朝日批判”だ。
 国会で森友学園疑惑を追及された安倍は、森友側が「安倍晋三記念小学校」と記した設立趣意書を提出したと報道した朝日新聞を、再三にわたって攻撃。「(報道内容は)全く違ったが、訂正していない。(趣意書の)原本にあたり、裏付けを取るという最低限のことをしなかった」などとした上で、過去の誤報まで持ち出して朝日批判を展開した。
 同紙の検証記事に触れた自民党参院議員のフェイスブックに「哀れですね。朝日らしい惨めな言い訳。予想通りでした」とネット右翼を連想させるようなコメントを書き込んでいたことも分かっている。一国の宰相ともあろう者が、報道機関を口汚くののしるというレベルの低さ。米国のトランプと同じ幼稚さだ。「国民の敵」は、誰か?



【関連記事】
ワンショット
 永田町にある議員会館の地下売店には、歴代首相の似顔絵が入...
過去のワンショットはこちら▼
記事へのご意見はこちら
記事へのご意見はこちら
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲