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菅義偉と安倍晋三 “言葉の軽さ”にうんざりだ

2018年8月16日 08:25

20141117_h01-01t.jpg 今月8日、沖縄県の翁長雄志県知事が亡くなった。普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対し、病を得ながら最後まで安倍政権と厳しく対峙した姿が痛ましかった。保守政界で「言行一致」が死語になるなか、公約を守り抜いた稀有な存在の政治家だったと言えるだろう。
 一方、翁長氏の葬儀に参列した菅義偉官房長官の態度は対照的で、「2人になると沖縄の発展について話し合った」などと、上っ面だけ格好をつけた発言。沖縄と政府のこれまでを見てきた多くの国民が、違和感を覚えたはずだ。
 民主主義を破壊する安倍政権にあって、菅氏や首相の“言葉の軽さ”が際立つ。

■菅氏のコメントに違和感
 9日午前の記者会見で菅氏は、「突然の訃報(ふほう)に大変驚いており、謹んでお悔やみを申し上げたい。知事になられてからは政府と立場が異なる場面もあったが、2人になると沖縄の発展について話し合いをよくした」と発言。10日に沖縄で行われた翁長知事の通夜では、「知事と私は米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設については意見が分かれたが、沖縄の振興発展については色んな意味で話し合いをしてきた。大変思い出深く、そういう思いで焼香した」と語っている。

 「2人になると沖縄の発展について話し合った」――。立場を異にする翁長知事と菅氏が、沖縄振興を巡ってあたかも心を通わせていたかのような発言だ。しかし、菅氏のコメントは沖縄ではなく“本土”の国民を狙った「印象操作」。沖縄と政府の対立を、きれいごとでごまかそうとする姑息な政治手法だ。そもそも菅氏と翁長氏は相容れない関係で、2人きりになったとしても、辺野古移設のことを脇に置いて沖縄の振興策だけを協議することなどあり得ない。

 2015年4月、翁長知事と会談した菅氏は、上から目線でこう言い放った。
粛々と工事を進めていきたい
 翁長知事はこの一言に猛反発。沖縄を見下す政府の姿勢に、県民からも厳しい批判が相次いだ。それ以来、“粛々”を封印していた菅氏だったが、2017年12月に辺野古訴訟の最高裁判決が言い渡されると、昨年3月には「粛々」を解禁していた。

 「粛々」とは、「おごそか」や「ひっそり」であるさまを表す言葉だが、「威厳をもって物事を行うさま」という意味もある。沖縄県民の意思を一顧だにせず、力ずくで辺野古の埋め立てを強行する政府の行為の、一体どこが「粛々」なのか?数十億円ともいわれる漁業補償金や地元へのばら撒きを行ってきた政府に、本当の「威厳」があるのか?答えが「NO」であるからこそ、沖縄は「粛々」に猛反発したのであり、主要な選挙でオール沖縄が勝利したのだろう。

 翁長氏が指摘したように、菅の「粛々」は明らかな上から目線。“沖縄県民の声など耳に入らない”という姿勢の裏返しだ。加計学園の獣医学部新設を巡って明らかとなった文部科学省内部のメールを「怪文書」と切って捨てたのと同じで、権力者の傲慢に過ぎない。菅や安倍首相にかかると、本来なら重く受け止められるはずの「言葉」が、とたんに軽くなる。

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■「真摯」「丁寧」は嘘つきの逃げ口上
 国民から批判の声が強まるたび、殊勝な態度を示してその場をごまかすのが安倍首相の政治手法だ。特定秘密保護法、集団的自衛権の行使容認、安保法、森友・加計問題……。支持率が下がるたび、「真摯」「丁寧」を繰り返してきた。だが、安倍や自民党が一連の課題について、「真摯な態度」で「丁寧な説明」を行ったことなど、ただの一度もない。「真摯」「丁寧」は、嘘つき政治家の逃げ口上となっている。

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 言葉の軽さが鼻につくのが安倍政治の特徴であり、菅の「(翁長氏と)2人になると沖縄の発展について話し合った」も、その類の発言だ。腹の内は「粛々と移設工事を進める」が本音。政権に逆らって移設反対を訴えてきた翁長氏を、悼む気持ちなどさらさらあるまい。

 沖縄県出身のある男性会社員は、こう話している。
「『2人で沖縄振興策について話し合った』などと、もっともらしく語ってみせたが、翁長さんと菅は犬猿の仲。“粛々”発言から今日まで、翁長さんが菅に心を許したことなど、ただの一度もなかったはずだ。そもそも、沖縄に寄り添うそぶりさえ見せない本土の政治家に、振興策が分かるとは思えない。本当に必要な振興策とは、基地をなくすこと。米軍基地をなくせば、沖縄は発展する。県民の声を聞き捨てにする安倍政権の大番頭と翁長さんが、沖縄の振興策を語り合えるはずがない」



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