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【防衛省の陰謀】「馬毛島」所有企業の破産を煽る産経新聞

2018年7月17日 09:00

DSC05854--1.jpg 国が、軍事基地建設用の土地を取り上げるために民間企業をつぶしにかけ、政権の犬となった報道機関を使って既成事実化する――。まるで戦前の軍部か、沖縄における米軍のようなマネを、防衛省の役人が実行した可能性が出てきた。
 安倍政権が卑劣な手段で手に入れようとしているのは、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP:タッチアンドゴー)の候補地として注目される鹿児島県西之表市の「馬毛島」。金貸しと組んだとみられる防衛省は、同島の9割以上を所有する民間企業を破産させ、管財人から格安で馬毛島を手に入れようという魂胆だ。
 15日、産経新聞が自衛隊の馬毛島利用に関するリーク情報を“スクープ”に仕立て1面トップに掲載したが、関係者に取材もせず、防衛省側の書いた筋書きを垂れ流しただけの広報記事だった。こうした無法がまかり通るものなのか――。

■スクープではないスクープ記事
 「馬毛島を海・空自拠点に」と大見出しを打った産経新聞の記事。脇に「中国脅威 防衛強化」「F15戦闘機 展開」と、まるで戦中の新聞だ。馬毛島を海上・航空両自衛隊の拠点として活用する方針を固めた防衛省が、「中国の脅威を踏まえた南西防衛強化の一環で、訓練に加え、有事での空自戦闘機の分散配置の拠点にする。馬毛島の土地買収に向けた調整と並行し、活用方法の検討を加速させる」のだという。

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 大スクープのような扱いの紙面構成だが、馬毛島を自衛隊が活用するという方針自体は、いまさら驚くような話ではない。産経の記事も触れているが、滑走路が米軍機の離着陸訓練に使われるのは年間数週間程度。その他の期間は滑走路が空く。しかし、施設の維持管理は通年となり、同島を国有化してまで軍事基地を造れば、米軍が訓練で使用する時以外は自衛隊が利活用するしかなくなるのだ。報道関係者の間から、産経の記事について「なんで今ごろ、こんな記事を出すのか」(全国紙記者)、「不可解な記事。馬毛島の買収交渉もまとまっていないのに……」(フリーのジャーナリスト)という疑問の声が上がったのは言うまでもない。

■嵌められた開発会社
 記事の前提となっているのは、馬毛島の国有化だ。この点について産経は、「防衛省は馬毛島を買収する方針だが、土地を所有する開発会社との交渉は難航。開発会社は債権者から破産を東京地裁に申し立てられ、地裁は先月15日付で保全管理命令を出した。今月中にも破産手続きを始めるか判断する。防衛省は破産手続きに入れば買収の実現可能性が高まるとみている」と書いている。問題は、この中の『防衛省は破産手続きに入れば買収の実現可能性が高まるとみている』の一節である。“開発会社が破産すれば買収の実現可能性が高まる”というのは、どういうことか?

 馬毛島は周囲16.5キロ、面積約8平方キロメートルという小さな島だ。平坦な地形であるため、様々な施設としての利用が検討されてきた歴史がある。石油の備蓄基地、使用済み核燃料の中間貯蔵施設、米軍普天間基地(宜野湾市)の移転先等々、利用法が浮かんでは消えた。

 そんな同島が再び注目を集めるようになったのは2016年11月。防衛省が、米空母艦載機の離発着訓練場の移転先候補地として、馬毛島の大半を所有するタストン・エアポート社(旧:馬毛島開発)と、島を買い取る交渉に入ることで合意してからだ。産経の記事にある「開発会社」とはタストン・エアポートのことを指している。タストン・エアポート社は鹿児島県出身の立石勲氏が創業した立石建設株式会社(東京都)の子会社。馬毛島の事実上の所有者は、立石建設である。その立石建設側の評価額と防衛省側の評価額が大きく離れていたため、買収交渉が難航していた。

 今回、破産申し立てを受けたのは「タストン・エアポート」。申し立てを行ったのは、防衛政策とは何の関係もないはずの埼玉県に本社を置く住宅建設会社「益田建設」である。不可解なのは、破産申し立ての原因が、馬毛島の土地を巡る貸し借りのトラブルではないということだ。

 益田建設が主張する債権の額は約3億7,000万円。詳しい話は次の配信記事で詳述するとして、馬毛島ではなく埼玉と都内の土地に関して起きたトラブルが原因だ。タストン・エアポートの負債総額は240億円とも280億円とも言われているが、わずか3億7,000万円のカネを返す、返さないで、破産の申し立てにまで発展するのは異例だ。

 取材してみると、タストン社側が返済を申し出たものの、益田建設側は債権額すべての回収が困難となるのを承知で、事実上拒否したという事実が浮かび上がってきた。「返せ」と迫ったカネを「返す」と言われて断ること自体、極めて不自然。別の思惑があったと考えるのが普通だろう。

 さらに調べていくと、益田建設の代表者と馬上島の買収を担当する防衛省地方協力局の上楽重治調達官が、複数回接触していたことが分かった。上楽氏=防衛省側の意をくんだ益田建設が、タストン社を破産に追い込もうとしているのではないか――。一連の動きから導き出されるのは、そうした見立てだ。この仮説が事実なら、タストン社=立石建設は、国と金貸しに嵌められたことになる。

 東京地裁が破産手続きの開始決定を行えば、タストン社の保有する馬毛島の土地は、「管財人」の管理下に置かれる。その場合の管財人は、保全管理命令が出た時点で選任された「保全管理人」の弁護士が就くと見られており、管財人は、競売より有利な取引を望むはずだ。防衛省は管財人と交渉して、格安で馬毛島を買収することが可能となる。『防衛省は破産手続きに入れば買収の実現可能性が高まるとみている』という産経の記事の一節が、防衛省の陰謀を証明した形になっている。
 
 そうした視点で産経の記事を再読してみる。騒ぐ必要のない話を、1面トップの扱いにしてスクープに仕立て、中国の脅威だの防衛力の強化だのと煽り立てて軍事基地の必要性を印象付けた。その上で、馬毛島の持ち主であるタストン社が倒産することが、あたかも「国家」のためだと思い込ませるような構成だ。報道内容がすべて防衛省側の言い分であることは、馬毛島についての説明文でも明らかだろう。

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 馬毛島 種子島の西約12キロにあり、面積約8平方キロ、周囲約16キロの無人島。土地が平らで大規模な造成が不要な上、開発会社がX字形に滑走路2本を造成している。政府は平成23年から土地買収について開発会社と交渉してきたが、会社側が賃貸契約を求めたり、政府の想定を相当上回る売却額を提示したりしたため合意に至っていない

 『会社側が賃貸契約を求めたり、政府の想定を相当上回る売却額を提示したりしたため合意に至っていない』という記述は、防衛省側の言い分。まるでタストン社が金目当てでごね、国を振り回してきたような書きぶりだ。しかし、タストン社は民間企業であり、損をしてまで土地を売ることはできない。投資した資金を回収し、少しでも利益を上げなければ倒産だ。交渉するのは当然なのに、産経はその点については一行も書いていない。確認したところ、産経がこの記事を書くにあたり、タストン社なり立石建設に取材した事実はなかった。産経の記者は、防衛省側にとって都合のよいリーク情報を、言われるまま紙面にしたというわけだ。政権の犬の仕事は、いつもこうである。

 産経の記事の冒頭部分はこうだ。『防衛省が、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転候補地となっている鹿児島県西之表(にしのおもて)市の馬毛(まげ)島を海上・航空両自衛隊の拠点として活用する方針を固めたことが14日、分かった』。しかし、馬毛島の軍事的利用が決まった場合、管理を自衛隊がやるということは既定方針。いまさら1面トップにもってくる話ではない。役所のリークとは、即ち「情報漏えい」があったことの裏返しだが、秘匿が当然の防衛に関する情報が、かくも簡単に漏れたことの方が問題だろう。最大の問題は、産経の記事が、民間企業の破産を煽った格好になっていること。相手に取材もせず、でっち上げの話を書くのは産経の得意とするところだが、今回の記事は悪質に過ぎる。

 暴走する防衛省とタストン社を巡る交渉過程については、次の配信記事でさらに詳しく報じる予定だ。



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