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「都構想」目指す大阪府の実力とは……

2018年7月12日 09:00

DSC04672.JPG 大阪市民を賛否で二分した「大阪都構想」の住民投票から3年が過ぎた。大阪市をなくし、特別区に再編する構想の議論は今も続くが、当時の熱気は感じられない。
 大阪府と大阪市は11日、「大阪都構想」を導入した場合の経済効果について、二重行政解消などで財政が効率化され移行後の10年間で最大1兆1,409億円強の歳出削減が見込めるとの試算を公表したが、同構想導入時のコストを計算に入れておらず、府議会関係者から「机上の空論」といった声が上がる状況だ。
 日本維新の会が政策課題の「一丁目一番地」として掲げる都構想――。大阪は本当に東京都に対抗できる都市なのか?(写真は大阪府庁)

■数字で見る大阪の都市力 
 大阪都構想の住民投票では、大阪市北部が賛成、大阪市南部が反対という構図ができた。比較的所得水準が高く、都市の再開発も進んでいる「キタ」を中心とした大阪市北部と、高度成長時代の産業構造を転換することができず、成長から置き去りにされた、低所得地域が多い大阪市南部の「南北格差」である。

 大阪市南部で市民から聞かれたのが、「今までもらってた補助金やサービスが少なくなる」または「もらえなくなる」ことへの強い反発の言葉であった。その反面、「大阪は日本第2の都市だ」という自負も見せていた。東京に対する反発も依然として強い。そこで大阪都構想の良し悪しは別として、大阪の真の力を検証してみた。

 居住人口を見ると、 横浜(360万)大阪(260万)名古屋(220万)となり、昼間人口では、 大阪(350万)横浜(300万)名古屋(250万)と順位が変わる。

 まず、県内総生産額ランキングでは
1 東京都 919,089億円
2 大阪府 368,430億円
3 愛知県 343,592億円
4 神奈川県 302,578億円
5 埼玉県 203,740億円
6 千葉県 191,323億円
7 兵庫県 182,732億円
8 北海道 181,241億円
9 福岡県 179,122億円
10 静岡県 154,853億円 (県内総生産額:2012年)
 大阪府は2位。さすがの実力だ。

 それでは、財政力として地方税ランキングを比較してみよう。
1 東京都 4,257,081,520千円
2 神奈川県 1,017,495,342千円
3 大阪府 993,622,536千円
4 愛知県 938,568,993千円
5 埼玉県 711,642,205千円
6 千葉県 638,178,913千円
7 兵庫県 574,191,822千円
8 北海道 540,195,804千円
9 福岡県 501,735,585千円
10 静岡県 437,027,012千円 (地方税:2012年度)
 横浜、川崎、相模原と3つの政令市を抱える神奈川県が2位、大阪市と堺市しかない大阪府は3位になる。

 もっと実態に合った比較をするために、地方交付税ランキングを見るとこうなる。
1 北海道 680,878百万円
2 兵庫県 305,459百万円
3 大阪府 284,449百万円
4 福岡県 280,274百万円
5 新潟県 279,259百万円
6 鹿児島県 270,892百万円
7 岩手県 270,006百万円
8 福島県 262,971百万円
9 宮城県 261,905百万円
10 青森県 226,423百万円
    ・・・略・・・
45 愛知県 66,483百万円 10%10% 37.2 -
46 神奈川県 62,867百万円 9%9% 36.8 -
47 東京都 0百万円 (県の地方交付税:2013年)
 なんと、大阪は全国で3番目という不名誉な順位。大阪府は地方交付税をもらわなければやっていけないのだ。一方、大阪がなにかと比較したがる東京都は0円。都市力には大きな差がある。

 地方交付税が機能するようになって、地方自治体の「国頼み」はどんどん強くなった。自治体の人たちが「自立は無理だ」と諦めた状態こそ、中央集権の完成状態となる。財政状態が良くなれば不交付団体となって国からのカネが来なくなる仕組みは、自助努力によって財政を改善しようというインセンティブが働かない。努力せず、国におぶさっている方が自治体経営としては楽なのだ。交付金をもらっていない、自立した自治体を「不交付団体」と呼ぶが、平成28年度では76自治体しかない。都道府県では東京都だけだ。

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 「自立」している市町村には表の通り、原子力発電所など原子力関連設備がある市町村が目に付く。原子力関連の助成金収入などが財政を潤しているからだ。その他では首都圏の市と愛知県の市が多い。住民が多く住民税の収入が多いことと、企業が多く法人地方税の収入が多いことが理由だ。東京都が都道府県唯一の不交付団体なのは、多くの企業が本社を東京都内に置いていることの証明でもある。

 大阪発祥の旧財閥系企業は、高度成長時代を通じて次々と本社を東京に移していった。神奈川県の人口に追い抜かれて全国人口順位3位に転落した大阪府の凋落は、誰の目にも明らかである。そのことを踏まえて、現地・大阪からは、相当な危機感が伝わってくる。都構想が本当に現状を変える計画なのかどうかが問われることになるが、危機感をバネに「交付団体から抜け出す」くらいの心意気がなければ大阪の未来はない。



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