政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
社会

松井知事が天の声 
万博会場「夢洲」 決定過程への疑義(下)

2017年4月14日 08:45

DSC04736―夢洲.jpg 2025年の万博会場予定地とされる大阪市此花区の「夢洲」。大阪府の用地選定過程は不透明で、平成26年に実施された調査では「×」。27年の調査においては、対象地にも入っていなかった。
 「夢洲」が浮上するのは28年5月。検討対象から外れていた同地が、松井一郎大阪府知事の独断で万博予定地に決定する。
(写真は、大阪府咲州庁舎から見た「夢洲」の全景)

■唐突に「夢洲」
 検討段階で、いったん「×」となった夢洲。28年度に大阪府が民間コンサルに委託した「国際博覧会大作誘致に係る基本コンセプト(案)策定業務」の発注段階では検討対象にもなっていなかった。ところが、コンサル業者が8月末に府に納めた「国際博覧会大作誘致に係る基本コンセプト(案)」では、万博会場予定地は「夢洲」。用地検討の対象地に、いつの間にか同地が入っていた(下の文書参照)。

1-28年度.jpg

■コンサル無視して「松井試案」
 一体いつ、夢洲が検討対象地になったのか?調べてみると、民間コンサルが基本コンセプト案の作成に着手した約1か月後の6月30日、大阪市内で開かれた有識者組織「2025年万博基本構想検討会議(第1回)」の中で、府の事務局が次の様に発言していたことが分かった。(*以下、文書中の赤いアンダーラインや矢印などは、HUNTER編集部)

1-議事録.jpg

 『会場としましては、本試案では夢洲地区を想定して作成しております』――。下が会議で配布された“「2025 日本万国博覧会」基本構想 試案”の概要版だが、確かに会場予定地は「夢洲」。基本構想の本文も同様だった。

1-試案概要.png

 大阪府が民間コンサルに「国際博覧会大作誘致に係る基本コンセプト(案)策定業務」を発注したのは、5月26日。それからわずか1か月の間に、大阪府は独自の試案を作成し、会場予定地を「夢洲」に決め込んだということだ。契約金額約860万円をかけた民間コンサルによる予定地調査を含む基本コンセプト作成は、まったくの無駄ということになってしまう。もちろん、26年と27年の業務委託で行った用地調査も、意味を持たない。

 夢洲の登場が唐突だったことは、万博基本構想検討会議での議論からも明らかだ。同年7月22日に開かれた検討会議 第1回整備等部会の議事録では、この段階で出てきた会場候補地の比較議論に、戸惑いの声が上がっている。

【委員】この間の経過もわからず、発言して申し訳ないですけれど。前回の全体会議で、夢洲が候補地と出ていたと思うんですけれども。それ以外も含めて検討するという段階にまだあるんですか。状況が理解できないんですけど。話が戻っているように思うんですが。

 これに対する事務局側の説明で、会議のたたき台となった「試案」と会場を「夢洲」とした張本人が分かる。

【事務局】説明が不十分で申し訳ございません。  夢洲は、要は知事の試案ということで、知事の思いということで、この場所で出来ないかということでお示しをした場所でございます。それ以外の6か所につきましては、昨年、可能性検討の中で一応100ヘクタール以上の用地が確保できる見込みがあるところというところで、ご提示をさせていただいた場所です。そこも含めて現在どういうところが可能なのか、6か所プラス試案で示している夢洲、7か所について現況をご説明をし、次回また現場を見ていただいて、大きな視点からいろいろご議論いただいた上で、我々としての適地での最終的に進めたいというふうに考えています。

1-議事録2.jpg

 第1回の全体会合で、会場を「夢洲」とすると宣言しておいて、じつはこれから選ぶという矛盾。委員が「おかしい」と感じるのは当然だろう。事務局側が思わず漏らした「夢洲は、要は知事の試案ということで、知事の思いということで、この場所で出来ないかということでお示しをした場所」は、知事の指示で会場予定地が夢洲と決まったことを示唆している。鶴の一声ならぬ、松井の一声。上意下達の「維新」らしい経過だった。松井知事が示した「夢洲私案」は、「2025日本万博博覧会基本構想(府案)」として昨年11月7日に正式決定している。

■松井-菅会談がターニングポイント
 昨年5月23日の朝日新聞の紙面に、次のような記事がある。
 ≪2025年の国際博覧会(万博)開催を目指す大阪府の松井一郎知事は会場候補地として、大阪湾の人工島「夢洲(ゆめしま)」(大阪市此花区)を軸に検討する方針を固めた。菅義偉官房長官と21日に東京都内で会談し、方針を伝えた。府は6月にも経済界を交えた準備組織を立ち上げ、候補地の絞り込みを始める≫
 記事の内容が事実なら、民間コンサルに「国際博覧会大作誘致に係る基本コンセプト(案)策定業務」を発注する前に、万博会場を「夢洲」に決めていたということ。この松井-菅会談から、夢洲は一気に注目を集める場所になっていく。大阪府・市は、万博会場の隣にカジノを併設した「IR(統合型リゾート)」を誘致する計画。一方、政府は昨年12月、国民の反対を押し切ってカジノ法を強行採決している。



【関連記事】
ワンショット
 永田町にある議員会館の地下売店には、歴代首相の似顔絵が入...
過去のワンショットはこちら▼
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲