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新聞が書かない「天神ビッグバン」の危険性

2018年7月 2日 09:20

91b05f379e30189855b71448b89462db0ff1adea-thumb-245xauto-21547 (1).jpg 先月26日、政府の地震調査研究推進本部地震調査委員会が、今後30年以内に大規模地震に見舞われる確率の分布を示した「全国地震動予測地図 地図編 2018年版」を公表した。注目されたのは、震度6弱以上の揺れ。南海トラフとの関係から、太平洋側の危険性に警鐘を鳴らす報道一色となった。
 だが、震度別の地震動予測地図を見ると、身近な危機に直面しているのが太平洋側だけではないことが分かる。例えば、震度5強以上の揺れが予想される地域のレッドゾーンには福岡市の一部が入っており、そこでは、市が進める「天神ビッグバン」が計画されている。(写真は福岡市役所)

■「警固断層」の危険性
 全国地震動予測地図では、30年以内に大きな揺れに見舞われる確率が3%以上の高い地域を赤やオレンジで示しており、南海トラフに関係する太平洋側は全国的にレッドゾーンばかりだ。予測地図は震度5弱以上、5強以上、6弱以上、6強以上の4段階に分かれており、それぞれの地図で色の分布が変わる。同地図2018年版の公表にあたって主に報道されたのは、6弱以上の地震についての分布を示した地図だが、5強以上のものを確認すると、福岡市民の身近にある断層帯の危険性が浮き彫りとなる。

 30年以内に震度5強以上の地震が襲う確率を地域別に示した地図から九州地方をクローズアップし、さらに福岡県周辺を拡大してみると、県都である福岡市の中心部だけが、濃い赤色になっているのが分かる(下参照)。

確率論的博多湾

 福岡市周辺に大きな揺れをもたらすと見られているのは、2005年(平成17年)3月に福岡西方沖地震を引き起こした「警固断層帯」だ。この断層帯と、市の中心部である天神地区との位置関係を地震調査研究推進本部が公表した資料で確認すると、次のようになる。 

警固断層 天神2-thumb-500x321-17101.jpg

 地震調査研究推進本部の説明資料によれば、警固断層帯は《福岡市東区志賀島北西沖の玄界灘から博多湾、同市中央区、同市南区、春日市、大野城市、太宰府市を経て、筑紫野市に至る断層帯。断層帯の長さは55km程度で、概ね北西−南東方向に延びている。過去の活動時期の違いから、玄界灘から志賀島付近にかけての2005年の福岡県西方沖地震の震源域にあたる北西部と、志賀島南方沖の博多湾から筑紫野市の警固断層にあたる南東部に区分される。断層帯北西部、断層帯南東部ともに左横ずれを主体とし、断層帯南東部では南西側隆起成分の縦ずれを伴う》活断層帯で、今後30年以内にマグニチュード7~7.7の地震が発生する確率は、0.3%~6%と推測されている。50年以内なら、0.4~9%へとハネ上がる。

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 「0.3%~6%」や「0.4~9%」という数字は、かなりの高確率で地震が発生することを意味している。熊本地震の発生前、日奈久断層帯で、50年間に地震が発生する確率とされていたのがO~10%。布田川断層帯の発生確率は0~1%だった。別府-万年山断層帯の確率が0~7%――。地震発生確率「0.3%~6%」「0.4~9%」の警固断層帯は、やはり危険な地震の巣と言えよう。その警固断層帯が揺れをもたらす一番の危険地帯こそ、福岡市の中心街「天神」なのである。

■警固断層と「天神」の位置関係
 下は、福岡市が監修した「防災タウンページ」(発行:NTTタウンページ)に掲載されている“福岡市揺れやすさマップ”の中央区版だ。「揺れやすさマップ」とは、地域の揺れやすさを地盤の状況とそこで起こりうる地震の両面から評価し、色分けした地震動の強さ(震度)で表したもの。警固断層帯を震源とする地震が発生した場合、もっとも強く揺れるのが、天神を含む濃いオレンジ色で示した断層帯の東側であることが分かる。

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 福岡市が進める再開発プロジェクト「天神ビッグバン」の対象地は、「西鉄天神駅」のすぐ先にある天神交差点から半径500メートルの範囲となる約80ヘクタール。市を縦に走る警固断層の真横かもしくは直上にある格好だ。市はそこで、2024年までの10年間でビル30棟の建替えを誘導し、新たな空間と雇用を創出するのだという。地震の揺れが最も激しくなることが予想されている地区で、新たな街づくりをやるということだ。

■天神の危険性を指摘する報道は皆無
 東日本大震災や熊本地震のあと、危険性が高いと分かっている地区で再度まちづくりを目指すという事例はほとんどないはずだ。甚大な津波被害を受けた東北各県でまず求められたのは、高台への移転だった。危険性の排除は、行政の責務だろう。県内で一番強い揺れが予想される天神に、高層ビルを何棟も建てようというのが福岡市の方向性――。都市政策上は、間違いだと言うしかない。

 前掲の「防災タウンページ」を監修した福岡市は、天神ビッグバン実現後の同地区の地震被害について予測を行っておらず、昼と夜における滞在人口数も算出していない。市が公表しているのは、≪現在の39,900人から97,100人へと約2.4倍になる≫という雇用者数の予測だけ。つまり、地震発生時の被害状況などお構いしに、派手な計画の内容だけを宣伝しているということだ。

 市役所の記者クラブに加盟している新聞やテレビは、天神ビッグバンを賛美する報道ばかり。いずれも、高島市政への忖度なのか、ビッグバン計画を歓迎する財界への遠慮なのか、警固断層と天神地区との関係については触れようとしない。天神ビッグバンとは、もっとも危険な地区に人を集めるという計画だ。警鐘を鳴らすのが、報道の使命ではないのか?



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