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細野豪志 裏金5,000万円の真相

2018年7月 4日 08:45

0d18edd3aacec61c5f7cd656d8ac8f46_50a58bceebba19b346b9484778d2a9fa.jpg 旧民進党を崩壊させたA級戦犯といえば、小池百合子東京都知事と前原誠司氏、そして細野豪志氏である。早々と民進党を飛び出して小池氏に取り入った細野氏だったが、「三権の長経験者は遠慮しろ」と排除の論理を振り回し、野党惨敗の原因を作ったことは記憶に新しい。
 その細野氏に、5,000万円を不正に受け取っていた疑いが浮上。死んだはずの政治家が、一躍時の人になっている。裏金疑惑の真相を追った。
(写真は細野氏の公式サイトより)

◆「JC証券」役員に財務省出身政治家3人
 先月、NHKがソーシャルレンディング国内最大手の仲介業者「maneoマーケット」(東京都 千代田区)が募集した200億円余りの投資資金が、不適切な形で運用された疑いがあるとして、証券取引等監視委員会が融資先の審査や投資家の勧誘方法などに金融商品取引法に違反する行為がなかったかどうか調査を進めていることを報じた。

 maneoマーケットは融資先企業の一つである「株式会社グリーンインフラレンディング」(東京 港区:以下、グリーン社)が運営するファンドの募集を停止。この間、200億円余りの投資資金の一部が、グリーン社から関連会社の証券会社に渡ったり、同証券の前会長の口座に入金されたりしていた疑いがあることが分かっている。問題になっていた証券会社が、細野氏に5,000万円を提供した「JC証券」である。

 JC証券とグリーン社の親会社は、再生可能エネルギー事業などを行う「株式会社JCサービス」(大阪府)。沖縄に本社を構えていた同証券は、昨年5月にJCサービスの傘下入りし、東京に移転していた。JC証券の会社登記簿で確認された取締役の構成が興味深い。

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 田村謙治、和田隆志、松田学――。3人とも東大卒。田村、和田両氏は元民主党衆院議員、松田氏は維新で当選し、日本の心に移った元衆院議員だ。国政に挑戦する前は、そろって財務官僚。JC証券は昨年5月、金融財政に明るい霞が関出身の元議員を、一気に3人も役員に据えていた(松田氏は今年6月26日に退任)。異例の人事というしかない。

◆JCグループと細野のつながり
 民主党所属の国会議員だった細野氏と田村、和田両氏に関係があるのは当然だが、JC証券及びグリーン社の親会社であるJCサービスも細野氏と深いつながりがある。JCサービスグループの総帥は、役人出身の中久保正己氏。細野氏と中久保氏は、細野氏が環境大臣を務めていた頃からの付き合いで、JCサービスは昨年12月、ホームページ上で同社の中久保社長が細野氏が団長を務める超党派の議員団とともにタイを訪れていたことを公表している。

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 JCサービス、JC証券、グリーンインフラレンディングの3社で代表を務めてきた中久保氏と、田村謙治、和田隆志の2人のJC証券役員が細野氏とつながりを持っていたことは明らかだ。だが、それだけの関係でJC証券が細野氏に5,000万円もの政治資金を提供するとは思えない。じつは、JCサービスグループと細野氏を結ぶライン上に、ある民間シンクタンクの会長の存在があることが分かっている。

◆永田町のタニマチ「大樹総研会長」の存在
 細野氏を支援し、JCサービスの中久保氏を操ってきたのは、民間シンクタンク「大樹総研」(たいじゅそうけん)の矢島義成(通称:義也)会長である。前出の田村氏と松田氏は、いずれも元大樹総研執行役員・特別研究員。関係者によれば、和田氏を加えた3人の元国会議員をJC証券の役員に送り込んだのは、矢島氏だったという。ちなみに田村氏は、昨年の総選挙に小池都知事の「希望の党」から立候補したが(東京16区で落選)、これも矢島氏の指示だったとされる。

 大樹総研の矢島会長は、「永田町のタニマチ」と呼ばれる人物。政財界に幅広い人脈を持ち、国政にも一定の影響力を持つともいわれる。風向きを読む能力は高く、民主党政権時代には同党の政治家たちに肩入れ。安倍政権下では、菅義偉官房長官と二階俊博自民党幹事長という二人の大物を取り込んだ。一昨年5月に矢島氏が2度目の結婚をした際には、帝国ホテルで開かれた披露宴に菅氏と二階氏がそろって出席していたほどだ。細野氏は以前から大樹総研に出入りしており、矢島氏から目をかけられていたという。(下は、大樹総研発行の冊子)

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◆斡旋したのは……
 細野氏への5,000万円に大樹総研はどう関わったのか――。ある大樹総研関係者は、こう話す。
「細野さんへの5,000万円は、矢島会長から中久保氏への指示によるものだと思う。斡旋ということだ。もちろん、貸し借りではない。矢島会長は、息のかかった3人の財務省OBをJC証券に入社させるほどJC側に影響力を持っている。JC証券は、もとはキャタリスト証券という沖縄の小さな会社。従業員は数名しかいなかったはずだ。財務省OBが入るような会社じゃない。そのことだけでも、矢島会長の力が分かるだろう。
 矢島会長は、小池新党にずいぶん肩入れしていた。細野さんから資金提供の依頼があったため、中久保氏を使ったということだ。中久保氏は断れない。本当なら、表に出ない話。それが出ちゃった。JC証券内部でも問題になった。中久保氏は慌てて証券の社長を辞めたが、あとの祭り。この問題は、細野さんが議員辞職するまで収まらない」

 JC証券の閉鎖された登記簿を確認したところ、たしかに同社の元の社名は「キャタリスト証券」。2016年に「NVF証券」に変更されたあと、昨年5月に現在のJC証券になっている(下、参照)

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◆背景にグリーンインフラレンディングの不正問題
 では、裏の話が漏れたのはなぜか?別の関係者は、こう解説する。
「細野さんがJC証券から5,000万の資金提供を受けたのは昨年10月。今年の2月頃までは、話題にもならなかった。この間に、中久保さんはグリーンインフラレンディングの不正問題について、矢島さんに相談していた。政権中枢に近い矢島さんに、『何とかしてくれ』と泣きついたわけだ。軍資金も渡してると思う。しかし、事態は悪化する一方。怒った一部の人間が、5,000万の件をリークした」

 大樹総研やらJCサービスやら、これまであまり表に出なかった企業の関係者をあぶりだす格好になった細野氏の5,000万円事件――。同じ5,000万円の裏金疑惑で、辞めた都知事がいたはずだが……。



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