改造で閣僚の顔ぶれが変わり、急落していた安倍内閣の支持率が上向いた。いわゆるご祝儀相場である。批判の対象となっていた防衛相、文部科学相、特区担当相も交代。政府は、自衛隊の日報問題や加計学園の獣医学部新設疑を巡る疑惑に幕引きを図る構えである。
だが、日報の隠蔽に稲田朋美前防衛相が関わっていたかどうかの結論は出ておらず、首相と“腹心の友”が招いた加計疑惑は依然として闇の中。いずれの問題でも関係者の証人喚問が実現していないことに加え、真相解明に必要な「公文書」は、役所のパソコンに隠されたままだ。
国会の「国政調査権」は、機能しているのか?
■国政調査権
国政調査権は、国会が職責を果たすための重要な機能。日本国憲法は、「両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる」と定めている。自民党が頑なに拒否している“証人喚問”は、国政調査権に基づくもの。「議院証言法」が細則を規定しており、直近では森友学園の籠池泰典前理事長を喚問している。
記録の提出については、「国会法」に規定があり、同法104条には次のように定められている。
各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない。
戦後、国会法104条に基づいて行われた記録提出は22件。直近では平成22年に、海上保安庁が撮影した尖閣諸島中国漁船衝突事件におけるビデオ映像が提出されている。
■問われる安倍政権の覚悟
日報問題や加計、森友両学園の疑惑を解明するためには、関係者の証人喚問と関係官庁及び自治体の記録提出が絶対条件。偽証した場合は罪に問われるという状況の中で、森友の国有地払下げ問題では安倍昭恵首相夫人、加計学園の獣医学部新設問題では加計孝太郎同学園理事長を、厳しく追及すべきだろう。自衛隊の日報問題では、隠蔽の当事者である稲田前防衛相が国会で語るのが当然。政治家である以上、逃げまわることは許されまい。
記録について提出が求められるのは、関係する役所に残された文書やデータ。とりわけ獣医学部の新設を特区申請した愛媛県今治市が非開示扱いにしている出張関係文書や加計学園側との協議記録などは、真相解明に不可欠の文書なのである。下に、国政調査権に基づいて国民の前に明らかにすべき事項をまとめた。
国政調査権は、国会が国民の負託に応えるために与えられた重要な機能。証人喚問や記録の提出は、衆参の関係委員会が決定し、議長経由で事を進めれば可能だ。国の機関に対する記録提出の要求なら、理事会の決定だけで委員長が行うことができ、決してハードルが高いわけではない。要は、自民党の姿勢次第。疑惑を解明し、国民の不信を一掃しようという覚悟があれば、証人喚問でも記録の提出でも賛成すべきだろう。疑惑の解明が一向に進まないのは、政府・与党の責任。安倍政権の覚悟のほどが問われている。