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福岡・中央保育園移転 問題の核心

2013年8月 7日 11:00

 今月2日、風俗街への移転が決まった福岡市中央区にある中央保育園(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の在園児保護者らが、運営法人と市を相手取り、移転中止を求める仮処分を福岡地裁に申し立てた。問題ばかりの移転計画に、市民からも反対の声が上がる。
 それでも高島宗一郎市長が移転強行の姿勢を崩そうとしないのは、保育園用地としては不適切である土地を、9億円もかけて買ってしまった経緯や政治的な背景を知られたくないからだ。
 改めて、保育園移転の問題点を整理した。

後付けの「定員300人」
 中央保育園の単独移転を決めた平成23年7月の「市政運営会議」の方針決定文書や、会議の基礎資料となったこども未来局作成の「総括シート」では、定員増が謳われてはいるものの、「300人」という数字は出てこない。下がその総括シートだ。

総括シート

 総括シートには、移転予定地を問題の風俗街の土地である「候補地1」とすることが明記されているが、他の土地との比較を行った形跡はない。「候補地1」の近隣に、ラブホテルが林立していることにも触れていない。とにかく「候補地1」での方針決定が必要だったということだ。

 定員拡充を謳ってはいるが、どの程度の規模の保育園にするか、この段階で分かっていなかったことも確か。総括シートの最後にはこうある。
保育所定員拡充の方法(増員数・事業スキーム等)については、(社福)福岡市保育協会との協議が必要である」。
 つまり、この時点では、定員も決まっていなければ、事業スキームさえ話し合われていなかったということ。保育園の将来像などそっちのけで、土地だけが先行取得されたのである。「はじめに土地ありき」の計画であることは、疑う余地がない。

 中央保育園の移転問題が拡大する中、市は「300人の定員を確保するためには、ここ(問題の土地)しかなかった」と主張してきた。しかし、これは後付けの理由でしかない。天神・舞鶴地域の待機児童数が50人に満たないことは、市が作成した文書に明記されている。中央保育園の移転後の適正規模は、せいぜい定員200~230人だとの指摘もある。

1か月の空白
 疑問はまだある。市に移転予定地を売ったのは、福岡市内に本社を置く不動産会社『福住』である。同社が北九州の会社から移転予定地を買ったのは平成23年9月1日。移転計画の方針決定から1か月後のことだ。

 関係者の証言によれば、北九州の会社が福住に土地を売った時の価格は約7億7,000万円。福住はその後、8億9,900万円でこの土地を市に転売し、1億3,000万円に上る利益を上げていた。典型的な土地転がしだ。

 ここで問題になるのは、方針決定から1か月間。市がこの時点の土地所有者である北九州の会社とまったく接触していなかったことである。方針決定直後に動いていれば、移転予定地は7億円台で取得できた可能性が高い。しかし、市が土地売買の打診を行ったのは同年11月から、相手は福住だ。この間、福住に市の幹部OBが天下っていることを考えれば、「疑惑あり」と見る方が自然だろう。“市が税金を使って福住に儲けさせた”―そうした見立てが存在するのも事実だ。

「福住」の背景
 福岡市に移転用地を売った福岡市内の不動産業者「福住」は、公明党・創価学会との深いつながりを持つ。同社の創業者は熱心な創価学会信者。その子息は今年夏の参院選比例区で公明党から立候補し、初当選を果たしている。こうした関係から、市議会与党の自民党や公明党市議団の、この問題に対する反応は鈍い。

 ある市議会関係者は次のように語っている。
「中央保育園の問題は、疑惑どころの話じゃない。はじめに土地ありきだったことは明らかだ。タチが悪い。子どもや保護者のことなど、何も考慮することなく、土地の取引だけが先行した結果だ。
 福住の名前が出てきたとたん、公明をはじめ多くの市議の腰が引けてしまった。学会が怖いのだろう。しかし、移転問題の背景にある市と福住の関係を解明せねば、真相は藪の中となってしまう。市が福住の土地を買うに至った経過について、さらなる検証が必要だ」。



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