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「日本維新の会」の憂鬱 止まらぬ足立康史議員の暴走

2018年6月18日 08:35

000000000-DSC_0009.jpg 厚生労働省の検討会で、「解雇の金銭解決」の議論が始まった。日本の労働法制は合理的理由や社会通念上の相当性を欠く解雇を禁じているが、実際には不当解雇が横行しているのが実情。「解雇の金銭解決制度があれば、労働市場の流動性を高める効果が期待できる」との考えから議論されているというが、制度改正を求めているのは、“首切り”を容易にしたい大企業だけだろう。カネさえ払えば解雇可能”となれば、労働者は守られない。
 いずれ労働法制の議論は国会に移るが、永田町には「雇用」についての議論はもちろん、立法という役割そのものを担う資格がない議員がいる。

■日本維新・足立康史の仰天発言
 国会議員秘書の世界でも「解雇」は少なくない。悲惨な話も多く聞く。「今日辞めろ」などと無理を言い出す議員もいるほどだ。永田町は労働基準法など全く関係のない世界のように思われがちだが、めずらしい訴えもある。

 頻繁に秘書が入れ替わることで有名な日本維新の会の足立康史衆院議員(比例近畿ブロック)は、平成27年3月25日の厚生労働委員会で「元私設秘書から残業代の支払いを求められている」「最高裁まで争う」などと話し、世間を騒がせた。この時の議事録に、足立発言の詳細が残されている。

 私の事務所は私設秘書を抱えています。残業代は払っていません。
 先日、かつての従業員、かつての秘書から、受任通知兼請求書が来ました。残業代を払えと。最高裁まで争うつもりでありますが……。
 何が言いたいかというと、私たちの事務所、政治家の事務所、多分皆さんわかるでしょう、残業代をきっちりと労働基準法に沿って払えるような体制かということを私はきょう問題提起したいと思っていて、この通知書にはこう書いてあります。メールやフェイスブックを用いた連絡文などの客観的資料に基づき当方で計算したところ、時間外勤務は4,500時間を優に超え、700万円を支払えと。ふざけるなと思うわけです。

 だから、ぜひ、委員長、これから労働基準法の改正案が出てきますね、政務三役が、それぞれ自分のところの事務所、労働時間管理をどのようにしていて、割り増し賃金を払っているのか払っていないのか、正確に労働基準法を守れているのか、きょう今、ご答弁できる方はしてください。できない方は、後刻、資料で出していただくようお願いしたいと思いますが、まず、政務三役の皆さん、どうでしょう。

 実態は、例えばメール、電話、フェイスブック、さまざまな方法で秘書たちとは連絡をとり合っています。正直、24時間365日仕事をしています。私はしています。夜中でも起きます。朝でも起きます。そういう中で、秘書だけ労働基準法に沿って残業代を支払うということは、私はできません。

 だからこそ、労働基準法を直していただくために国会議員になりました。いいですか、そのために国会議員になったんですよ。

 私が文句があるのは労働基準法だけじゃないんですよ。道路交通法。阪神高速を走ってごらんなさい。一車残らず違反していますよ。もしそこに掲げられているスピードを守ったら交通事故が起こります。みんなと一緒に走ったら違反しているんですよ。いいですか、これが道路交通法の一部です。

 公職選挙法。公職選挙法も、結局うちわがどうなったか知りませんが、法文上どういうふうに解釈していいかわからない問題がいっぱいあるわけです。そういう中で苦労しながらみんなやっているんだけれども、法治国家であれば、道路交通法、公職選挙法、そして何よりも労働基準法については、しっかり真面目にやっている人が守れるような制度、これをつくる必要があると思っていて、そういう意味では、きょうテーマになっている――何かシーンとしていますが大丈夫ですか?経済実態、社会の実態、働き方の実態に即して考えたときに、実現可能な立法をしていくのが国会の責務だと思っています。

 これは、正気を失った人間ではなく、国会議員が国会で行った発言だ。“何時間働こうと、秘書に残業代は払わない”、“制限速度を守ったら交通事故が起きる”――。労働基準法も道交法も公選法もおかしいと思うから、自分の都合に合うよう法律を変えるため、国会議員になったという話だ。税金でこんな男を食わせる必要があるとは思えない。

■炎上商法で孤立
 足立氏は昨年、「朝日新聞、死ね。」とツイートしたり、衆院文部科学委員会で、自民党の石破茂元幹事長、希望の党の玉木雄一郎代表と立憲民主党の福山哲郎幹事長を名指しして「犯罪者だと思っている」と発言するなど過激な発言で知られる人物。今月は「足立無双の逆襲~永田町アホばか列伝II」を出版し、与野党の議員だけでなく維新の議員も罵倒するなど、その発言はエスカレートするばかりとなっている。

 他者を誹謗中傷することで注目を集めるという“炎上商法”。さすがに日本維新の会も、片山虎之助共同代表が同氏に厳重注意したり、党役職の解任や委員会等での発言禁止を申し渡すなど厳しい処分を課したが、足立氏には馬耳東風。日本維新の会の中でも嫌われる存在となっている。実際に街頭演説でも幹事長から「絶対、足立にマイクを渡すな」と厳命が出るなど、党内でも居場所がなくなってきているのが現実だ。

■クビにできない党内事情
 そんな問題児を抱えながら、維新の会には足立氏を離党させられない事情がある。維新は昨年の総選挙で議席数を大幅に減らており、衆議院であと一人議員がいなくなると議院運営委員会の理事を出せなくなるからだ。つまり、日程、議題、発言者、時間、採決方法など本会議の運営に関する協議に関わることができない少数政党に没落してしまうため、離党勧告できないというわけだ。これは総選挙直後、橋下徹前代表を批判して離党届を出した丸山穂高議員に対して、辞職勧告できずに党内に留まるよう説得した事例を見ても明らかだ。維新は、政党としての管理能力を失っている。

 4月初旬、足立議員はあるジャーナリストに、「あー! もう離党しようかな!」と漏らしたという。離党は自由だが、こんな議員を受け入れてくれる政党があるとは思えない。



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