総選挙で大幅に議席を減らし、すっかり影が薄くなった「日本維新の会」。最近の話題といえば、慰安婦像の設置に腹を立てた同党所属の大阪市長が、サンフランシスコ市との姉妹都市を解消すると発表したことと、チンピラ議員が「朝日新聞、死ね」などという乱暴な言説で世間を騒がせたことくらい。国会での存在感は皆無に等しい。
「議員は身を切り、行政は無駄を省く」(日本維新のHPより)などと訴えている同党だが、一昨年の「維新の党」分裂に際し橋下徹元大阪市長が主張した政党交付金の国庫返納は実行されず、ペーパー政治団体「なんば維新」を作って“交付金ロンダリング”を行っていたことが分かっている。「なんば維新」のその後と、ロンダリングの実態を追った。
■反故にされた「交付金返納」
事の発端は、一昨年に起きた旧維新の党の内輪もめ。党の方針を巡って、旧結いの党を中心とする東京組と橋下系の大阪組がバトルを繰り広げ、合流からわずか1年で分裂した。
党政党交付金は4月、7月、10月、12月の4回に分けて政党の口座に振り込まれるが、内輪もめの影響で銀行が維新の党の口座を凍結。そのため政治資金の出し入れが不可能となり、同党所属議員の政党支部に交付金の振り込みができない事態となっていた。
12月8日、「維新の党の将来的な解党」「人件費など党運営に必要な経費を除いた政党交付金の国庫返納」を確約する形で東京組と大阪組が合意。大阪組は離党して原点回帰を図り、新たに「おおさか維新の会」(現・日本維新の会)を設立していた。
この分裂騒ぎの最中、橋下氏はツイッターで「解党して政党交付金を国に返す」と主張(下、参照)。分裂時の合意の通り、おおさか維新に参加した議員らの支部が受け取った交付金の残額は、“国に返納されるはず”だった。
ところが、旧維新の党を離党したことで交付金の基金口座に余剰金を移せなくなっていた大阪組は、新たに「なんば維新」という政治団体を設立。本来は国庫に返納すべき“年末までに使い切れない交付金の残り”を、「なんば維新」に寄附する形で一時避難させていた。
「なんば維新」の所在地は「おおさか維新の会」と同一。代表者は、松井一郎大阪府知事の元秘書で、おおさか維新の事務局長を務めている人物だった。ペーパー団体であることは確かで活動実態はなく、政治資金収支報告書にも“経常経費”は記載されていない。
「なんば維新」への寄附を装い、交付金の国庫返納を逃れたのは旧維新の25の支部。支部解散にあたっては、政党助成法の規定で1円の交付金も残せない決まりだったため、なんば維新への寄付額は1円単位となっていた。最も少ない額で「維新の党 宮崎県支部」が60,083円を、最高は同党参議院兵庫県選挙区第1支部が1,949万5円を「なんば維新」に寄附していた。国庫ではなくペーパー団体に移された交付金総額は9,906万6,983円に上る。
先月総務省が公表した平成28年分の政治資金収支報告書によれば、こうして「なんば維新」にプールされた交付金は、新たに設立された「おおさか維新の会」の各支部に寄附の形で返金されていた。25年12月に実行された「なんば維新」への寄附と、昨年3月までに実行されたなんば維新から新支部への返金状況をまとめた。
新支部の設立が出来なかった山口県を除き、「維新の党」が「おおさか維新の会」に変わっただけ。各支部がなんば維新に寄附した金額が、一例を除き、そっくり「おおさか維新」の各支部に返金されている。
■ロンダリング総額は約2億4,300万円に
ロンダリングの対象になったのは、支部の交付金だけではない。昨年1月に「維新の党」及び「維新の党 国会議員団本部」から「なんば維新」にそれぞれ1億2,005万5,977円、1億2,308万6,542円の計2億4,314万2,519円が寄附され、同日付でそっくりそのま「おおさか維新の会」に寄附されていた。交付金の国庫返納は橋下維新の大ぼら。国民に隠れて約3億4,300万円もの税金を懐に入れていた格好だ。
しかも、なんば維新からおおさか維新側に戻された資金は政党支部の一般口座に振り込まれており、交付金につく縛りがない「何にでも使える金」に化けた形。“交付金ロンダリング”で国民を欺いた維新に、天下国家を語る資格などない。
「なんば維新」は昨年3月10日に解散。大阪系各支部に対する最後の寄附を行った次の日だった。