現職県知事が開く政治資金パーティーの発起人について聞かれ、主催する政治団体や実行委員会が「分からない」「答えられない」として、事実上取材を拒否するという異常な事態となった。
三反園訓鹿児島県知事が7月に開催予定の政治資金パーティーは、発起人に県と利害関係を有する業界団体や、県議会、市長会など政治的にまとめることができない組織を並べて参加を募るという不適切なカネ集め。関係者から疑問の声が上がる中、知事と対峙すべき県議会の前議長が、信じられない取材対応でレベルの低さを露呈させた。
(写真奥は鹿児島県庁。手前が県議会棟)
◆取材対応で実行委、後援会がたらい回し
知事の政治資金パーティー「三反園訓知事を励ます会」の実行委員長は、鹿児島商工会議所会頭の岩崎芳太郎氏(いわさきグループ代表)である。岩崎氏は、商工会議所の政治団体である「鹿児島県商連政治連盟」の代表として実行委に参加した形になっていることから、“発起人はどうやって決めたのか”“実行委の構成は不適切ではないのか”について確認するため、商連政治連盟に取材を申し入れた。
同連盟の連絡先は鹿児島商工会議所。取材の趣旨を聞いた職員は、「詳しいことは分からない(政治資金パーティーを主催する)みたぞのさとし後援会三訓会に聞いて下さい」と言う。やむなく三訓会に電話してみると、担当者は「私は実行委員会の者で三訓会の者ではない。答える立場にないので幹事の池畑センセイに聞いて下さい」として説明を拒んだ。4,000万円もの政治資金を集めようという知事の支援組織が、都合の悪い話をたらい回しにするという無責任な対応だ。ここは、池畑センセイに聞くしかない。11日、同氏に話を聞いた。
◆前県議会議長―発起人は団体が「あたりまえ」
池畑センセイとは前県議会議長の池畑憲一氏のこと。現職県議でもある池畑氏は、県観光連盟の会長という立場で発起人組織(実行委員会)の幹事に就いていた。以下、HUNTERの記者と池畑氏のやり取りの概要である。
――三反園知事の政治資金パーティーの件で、三訓会の担当者から、池畑センセイに聞いてくれということなので、連絡した。
池畑:何を聞きたいのか?――商連政治連盟が作成した資料によれば、県内23団体が発起人になると記されている。間違いないか?
池畑:発起人の名簿の通り。各団体の資料に書いてある通り。――そうすると、県議会も発起人に名前を連ねることになるが?
池畑:私は県議会ではなくて、鹿児島県観光連盟会長という立場でOKした。鹿児島県観光連盟という団体があり、私はその会長。その立場で県内観光関係業界が、発起人になりましょうと・・・・・・――そういうことを聞いているのではない。各団体が発起人になるということなのか、代表者個人が発起人ということなのか――。
池畑:団体に決まってるじゃないか。――団体が発起人なのか?
池畑:あたりまえだ。――あたりまえ?しかし、観光連盟は公益社団法人。なんで政治活動ができるのか?
池畑:そういう議論ではない。関係者から、知事も一生懸命観光やってるから応援しましょうよと、発起人になりましょうよと声が上がったため、なっただけの話。――団体で発起人になったということでいいか?
池畑:決まってる。――もう一点、実行委員会の構成がどのように決まったのということ。三訓会側が池畑先生に聞いてくれというから、お尋ねしている。
池畑:私はそんな細かいことまで分からない。だいたい、いろんな団体の人から声が出てそういうふうになっている。私がやってわけじゃない。――それでは、誰に聞けばいいのか?
池畑:それは、分からない。――現職知事のカネ集めについて、誰も答えられないというバカなことがあるのか。実行委の事務局は、あなたに聞いてくれと言っている。
池畑:そんなことを言われても、わたしも分からない。だいたい実行委員会は、発起人が集まって決めた。――おかしい。県議会議長の柴立さんは、発起人会には出ていないと話している。なんで県議会が実行委に入れるのか?
池畑:柴立議長は、公務があって行っていない。議会事務局に聞けば分かる。――答えになっていない。県議会が知事のカネ集めに協力できるはずがない。そこを聞いている。県会議長までやったセンセイが、なぜこうもバカな話をするのか?
池畑:何が分からないというのか?――県議会や観光連盟が発起人になれると思っているのか?
池畑:各団体が、賛同されている。脅迫するのか?――あなた、本当に県会議員か?大事なことを確認しているだけだ。たらい回しにして、きちんと答えないから聞くしかない。もう一度聞く。県議会として発起人になっているということでいいか。
池畑:私は、だから県議会という立場ではなくて、観光連盟という立場で・・・・・・。23団体が、それぞれの立場で賛同している。――しかし、県議会は賛同できない。本当に県議会として賛同したのか?
池畑:それは議長に聞いてもらいたい。ただ、2年前、私が議長の時に当時の伊藤知事も(政治資金パーティーを)やった。――話をはぐらかすのはよくない。いまの県議会として賛同したのかどうかだ。伊藤さんの時のことは聞いていない。
池畑:それは議長に聞いてもらいたい。
“話にならない”とはこういうことだろう。池畑氏は、発起人が「団体」としての参加だと断言しており、「あたりまえだ」とまで言っている。しかし、県議会のことになると、「議長に聞け」と逃げを打つ。自身は現職県議であり、議会が特定政治家のカネ集めに協力できないことなど百も承知のはずだが、発起人は団体だと言い張る。同氏の主張どおり、県議会が一団体として知事のカネ集めに賛同したとするなら、2元代表制を否定する暴挙。県議会は解散するしかあるまい。そんなことも分からない人が、県議会議長を務めていたというのだから呆れるしかない。
◆観光連盟や女性団体に問われる違法性
問題は、県議会のことだけではない。池畑氏がどう強弁しても、公益社団法人である観光連盟は、組織として知事のカネ集めに動くことはできない。「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(公益認定法)は、公益認定を受けることのできる社団や財団が行う事業を《公益目的》であるものに限定しており、《特定の個人若しくは団体の利益を図る活動を行うもの》に《寄附その他の特別の利益を与える行為を行わない》と定めているからだ。知事のカネ集めは公益目的ではない。従って、公益社団法人である観光連盟が、政治団体が主催する政治資金パーティーの実行委員会に参加することには違法性が伴うのである。
実行委には、NPO法人である県地域女性団体連絡協議会も参加しているが、「特定非営利活動促進法」(NPO法)は《政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを主たる目的とするもの》でないことをNPO法人の認定条件にしており、政治活動を行うことを明確に否定している。女性団体連絡協議会が、知事の政治活動としてのカネ集めに組織として参加することなどできるはずがない。
これでも池畑氏は、実行委を「団体の集まり」と言い張るのだろうか?とくに、2元代表制の一方として知事と向き合う県議会が、与野党を超えて知事のカネ集めに協力できるとは思えない。事実、実行委に名を連ねた柴立鉄彦県議会議長は、池畑前議長に話を聞く前日に、先輩議員とは全く違う説明を行っていた。柴立氏の言い分とは……。
(つづく)