神戸市で2016年10月に起きた市立中学校3年女子生徒の自殺を巡り、同市教育委員会と学校が、仲の良かった生徒から聞き取ったいじめの内容などを記した調査メモを隠蔽していた。隠蔽を指示したのは市教委の幹部。教育行政に責任を負うべき役所が、子供ではなく自分たちの立場を守ろうとした悪質な行為である。
教育委員会や学校が、いじめや体罰といった重大な問題に向き合おうともせず、ひたすら自己保身に走るケースが絶えない。福岡県内の教育委員会も例外ではなく、北九州市教委が、訴訟に発展した体罰に関する報告書などを黒塗りにし、情報開示を拒否している。
◆裁判理由に黒塗り非開示
HUNTERは、県内の体罰事案について調べるため福岡県、福岡市、北九州市の各教育委員会に対し、過去3年間に提出された体罰事案の報告書およびその処分・措置に関する文書を情報公開請求。順次開示を受ける中、北九州市内の学校で起きた1件の体罰事案関連文書が、ほぼ黒塗りの状態であることに注目した。
この文書は、平成29年1月20日付で懲戒処分を下した体罰事案に関するもの。じつに、70ページ以上が黒塗り非開示となっている。非開示理由を確認すると、「当該事案について、本市が当事者となった争訟事件が継続中であり、訴訟手続き上、本市の地位を不当に害するおそれがあるため」――裁判になっているから隠したいという、身勝手な言い分だ。
問題は、体罰やいじめが発生した場合、文書上の第一報として学校側が教育委員会に提出する「事故報告書」まで全面黒塗りにしている点である。
通常、事故報告書の提出段階では訴訟になどなっておらず、提出と同じタイミングで情報公開請求すれば、当然開示される。訴訟提起後の請求だからこそ非開示にできたのだが、この対応は不適切というしかない。裁判が市にとって不利な状況になった場合、黒塗りで隠された部分の記述を改ざんすることが可能となるからだ。財務省のケースでも明らかなように、公文書の改ざんは容易。市教委内部で処理されてしまえば、真相を闇に葬ることなど簡単だろう。体罰やいじめに関する第一報ともいえる事故報告書は、だからこそ早い段階での情報公開が必要なのだ。それを非開示にするという北九州市教委には、何か都合の悪いことがあるとしか思えない。
事故報告書の非開示に関して北九州市教委に厳しく抗議したが、市教委側は拒否。出稿にあたって再確認してみたが、「裁判が決着したら公表することもあるかもしれないが、現時点では公表しないことを改める考えはない」との返答だった。市教委の対応に、さらに疑惑が深まったかたちだ。
子供が被害者である事案で、なぜ隠蔽が相次ぐのか――。原因が、“大人の保身”にあることは言うまでもない。