福岡市が市内東区の人工島(アイランドシティ)内に計画している小学校整備計画の関連事業で、市教育委員会が業者と出来レースを行っていた疑いが浮上した。
出来レースの疑いが持たれているのは、小中連携校「照葉小中学校」の教室不足を解消するため、リース契約することが決まっている「仮設校舎」の業者選定。市教委への情報公開請求で入手した資料によれば、市教委は、契約の基礎資料となる「積算書」作成の段階で建築リース業界大手のリース会社に参考見積り(下見積り)を依頼。その後行われた「見積り合わせ」の結果、積算に協力した大手リース会社が受注していた。
計画段階から落札業者が決まっていたも同然で、市教委側と業者の癒着が疑われる事態だ。(写真は福岡市役所)
児童増 仮設校舎で対応
問題の事業の正式名称は「照葉小学校仮設校舎賃貸借」。市教委側の説明によれば、仮設校舎での授業は、アイランドシティの人口増加に伴い新設される小学校(普通教室24室、特別支援教室2室)が開校する平成31年度までの期間、増え続ける小学生に対応するための一時的措置だという。照葉の小学校は平成19年、中学校は20年に開校したが、アイランドシティの住宅販売が進むにつれ島内人口が増加。新たな小学校の整備が必要となる状況となっていた。
HUNTERが市教委への情報公開請求で入手した資料によれば、照葉小中学校の東側部分(下、市教委開示の図面参照。赤い囲みはHUNTER編集部)に13教室が入る2階建ての仮設プレハブ校舎を造り、平成28年3月末から平成31年3月末までの期間、日割りのリース契約で使用する計画だ。
積算協力業者がリース契約受注
契約は単年度ごと。市教委は今年10月に専門業者9社を選んで見積り要請。11月に6社(3社は辞退)による「見積り合わせ」が行われ、下見積りを提供する形で積算書の作成に協力した大手リース会社が最低価格を提示して契約を得ていた。
大手リース会社が市教委に提供した下見積り書は数字の大半が黒塗り非開示となっているが、一部開示の数字だけでも積算書と一致するものが多数。例えば、大手リース会社が提供した下見積書にある「調査費」「設計業務費」「工事管理費」のそれぞれの数字が、市教委の積算明細にそっくりそのまま記入されている。
出来レースの証明
仮設校舎の建設費総額も然り。大手リース会社のはじいた金額と、それに市教委の査定率をかけたものがほぼ同程度の額。事業費そのものが、大手リース会社の見積り金額によって組み立てられたのは確かで、開示された別の文書にもこの推測が当たっていることをうかがわせる記述が存在する。それが下(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。
仮設校舎賃貸借契約の「予算執行伺い」が起案・決済されたのが10月22日。4日後の26日には見積り合わせ参加業者を選定し、11月13日には契約先業者を選定するというスピード処理。これを可能にしたのが、予算執行伺いが起算される前日=10月21日に提出されたリース業者の下見積りだった(下がその下見積書。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。
下見積り提出の翌日に市教委内部で予算額が決定した格好だが、たった1日で詳細設計が可能になるのは極めて不自然。積算の大半を業者に頼った結果であり、早い時期から当該業者と計画を練っていた可能性が高い。形だけの見積り合わせだったとすれば、完全な「出来レース」。契約の正当性に疑問符が付く状況で、業界関係者からも癒着を疑う声が上がっている。