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なくならぬ「体罰」 問われる教育委員会と報道の責任

2018年2月27日 10:00

school.jpg 今年に入って福岡、北九州の小・中学校で起きた体罰事案についての報道が相次いだ。福岡市で3件、北九州市で1件。このうち福岡市の1件と北九州市の体罰事案は、教育委員会の発表ではなく、報道が先行したものだった。
 何度事件化しても一向に無くならない教育現場の暴力――。教育委員会や報道機関は、どこまで真剣に「体罰」と向き合っているのだろうか?

■福岡、北九州で相次ぐ「体罰」
 福岡市は今月6日、市内の小学校で起きた体罰1件と、中学校で起きた体罰2件について概要を発表した。3件とも骨折などの重いケガを招いた体罰だったとはいえ、教員の処分決定前に事案を公表するのは異例。早い段階での対応になった理由は、昨年12月に市内西区の中学校で起きた体罰事案を、1月末に西日本新聞が報道したためと見られる。北九州市の小学校で1月に起きた体罰も、新聞報道が先行している。市教委の発表などに基づき、体罰4件の概要をまとめた。

00―体罰.png 福岡市中央区の中学講師による体罰では男子生徒が「右肩打撲傷、頸椎捻挫、腰部打撲傷」、同市西区の小学校教師による体罰では男子児童が「右鎖骨骨折」、同市早良区の中学では教師の体罰で男子生徒が「左手中指骨折」。北九州市若松区の小学校では6年生の男子児童が教師に顔を蹴られ、「一時意識を失い、救急車で病院に運ばれ、鼻のあたりの骨が折れる重傷」という命にかかわる事態になっていた。

■繰り返される子供への「暴行」
 いずれも、「体罰」というより「暴行」。大人の社会なら、刑事事件になるのが普通だ。残念なことに、こうした児童・生徒の身体を傷つける教員の暴走は、いまに始まったことではない。HUNTERは、2011年から度々福岡市の小・中学校で起きた体罰事案について報じてきたが、教育現場では教員が子供の胸ぐらを掴むなど日常茶飯事。子供を骨折させたり、心に深い傷を負わせるような事例が後を絶たない。

 下の表は、市内の小・中学校における平成25年度から28年度までの体罰事案。昨年、学校が福岡市教育委員会に提出した「事故報告書」などを情報公開請求してまとめたもので、4年間で計31件の体罰が報告されていた。このうち10件に、教員の暴力によって子供がケガを負ったという記述が確認されている。事故報告を読めば、教育上の指導をはるかに超えた暴力の現状が浮き彫りになる。

0003cefe0dc1181b185c320e8a4a915b53b75bbd1fb.png これ以前に報じた体罰も、酷いものばかり。改めて、事故報告書の記述を抜き出してみた。

《体育館の入り口付近にAを連れ出し、指導の際Aに頭突きを1回、ほほを4~5回たたくなどの体罰を行い、Aの鼻骨を骨折させた》(平成21年・中学校)

《児童Aの左頬を右手の平で1回、右頬を左手の平で1回、計2回叩いた。児童Aは、左耳の鼓膜に3mm程度の穴、右耳の鼓膜に1mm程度の小さな穴が空くという怪我を負った》(平成21年・小学校)→

《右の平手で頬を3発叩き、髪を掴んで壁際に押し付けた後、投げ倒して馬乗りになった。その後、再度、右の平手で頬を3発叩き、首を右腕で押さえながら投げ倒して馬乗りになった》(平成21年・中学校)

《憤慨して両肩を掴み教室に引き入れ、教室の入り口付近で両肩をひねるように倒し、床に右側に横倒しになった当該生徒の頭、顔、肩、背中を、中腰の体勢で右平手で10数回叩いた。また、右足で左足のふとももあたりを2~3回足蹴りした》(平成22年・中学校)

 鼻骨骨折、鼓膜に穴、首を押えて馬乗り、足蹴り……。暴力団同士の抗争のような行為は、いずれも教師が「子供」に行ったものだ。

■甘い処分 甘い検証
 なぜ体罰はなくならないのか――。教師のレベル低下にその一因があるのは確かだが、教育委員会による対応の甘さも、体罰を助長する原因の一つだ。次稿で詳しく報じる予定だが、軽いケガ程度の体罰なら地方公務員法の規定にある「懲戒」にならず、内規で定められた「服務上の措置」という軽い処分で終わる。このため、懲戒処分となるような教員は、“2度目の体罰”というケースが少なくない。「この程度ならいいだろう」――教員の側に、そうした甘い考えを持つ者がいるということだ。

 メディアの責任も否定できない。市役所や県庁には「記者クラブ」があるが、クラブに所属する記者たちが、体罰やいじめについて検証したという話は聞いたことがない。報じるのは目の前の事件・事故だけ。体罰について、事故報告書や教員処分までの経緯を記した文書を精査しているとは思えない。HUNTERは、前述した4件の体罰発生を受け福岡、北九州、福岡県に体罰関連文書の情報公開請求を行ったが、県と北九州は文書が大量になるという理由で開示決定期限を延長している。HUNTERの開示請求は新聞報道や市教委発表のかなり後。開示決定期限の延長は、それまでに同様の請求がなかったことを意味している。

 余談だが、情報公開請求に対する北九州市教育委員会の杜撰な対応については、警鐘を鳴らしておきたい。HUNTERが開示請求したのは、体罰事案の事故報告書と教員処分までの過程が分かる文書。これに対し、北九州市教委は、請求文書の内容を聞いておきながら、事案の内容をまとめた不必要な文書を作成し、これを開示対象にしようとしていた。抗議したとたん、開示決定期限を「45日」も延長するというデタラメな対応となっている。真面目に体罰と向き合っているとは思えない。

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