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福岡・高島いかさま市政 予算偽装の実態(上)

2018年5月 7日 08:15

会見2.png 嘘とごまかしは安倍晋三政権の専売特許と思っていたが、首相と最も親密な首長と言われる高島宗一郎福岡市長も、政治手法はまるで同じだ。
 福岡市が、今年度予算について紹介した広報紙「市政だより」で、市民税の過大な増収を印象付けた上で、項目ごとに算出した市民一人当たりの歳出の多くが前年度より減っているにもかかわらず、「成長の果実をあらゆる人に」と銘打ち、まんべんなく恩恵が行き渡るように見せかけていたことが分かった。
 事実上の虚構に頼ったアッピールは、明らかに今年11月の市長選挙を睨んだもの。詐欺的手法に、批判の声が上がりそうだ。
(右の画像は福岡市HPより)

◆市税増収357億円、本当の内容は…… 
 今年11月に予定される福岡市長選挙の構図が定まらない。3選を目指すと見られている現職の高島宗一郎市長は出馬表明しておらず、他に立候補を明言する人物も現れていない。市政の方向性を選択する4年に一度の機会だが、仮に高島氏が立候補するとして、アッピールできる実績にとぼしいのが現状だ。安倍政権のお先棒を担ぎ、国家戦力特区や起業家育成にばかり力を入れてきたため、暮らし向きの施策に見るべきものがないからだ。

 前回の市長選が行われた平成26年の4月には「待機児童ゼロ宣言」を行い、子育て世代に媚びを売った。今回も“子育て支援”が人気取りの道具であることに変わりはないが、待機児童ゼロが一過性の宣伝文句にしかならなかったことを受け、「成長の果実をあらゆる人に」として、あたかもすべての市民が高島市政の恩恵を受けるかのような印象操作を行っていた。

 下は、問題の『市政だより』4月号の表紙にあたるページの一部(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。目立つところに「成長の果実をあらゆる人に」というキャッチコピーが踊り、そのあとに市長の挨拶文が掲載されている。

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 市は、都市を成長させ、そこで生まれた「果実」で市民の生活の質を高めるための取り組みを進めています。今年度の予算は、市税収入が357億円増加し、初めて3,000億円を超えました。市債残高も全会計で475億円減らし、歳入と歳出のバランスを保ちながら予算を編成しています。歳出面では子ども関係の予算を充実させ、高齢者や障がいのある人、性的マイノリティ、不妊の悩みに関する施策などを新たに始めます。
 これからも、都市基盤の充実や新しい産業の振興を図り、次世代に誇れるまちの実現に向けてチャレンジを続けます。

福岡市長 高島宗一郎

 高島市政の目玉である「FUKUOKA NEXT」(注1)によって、多くの市民に恩恵を与えることができるようになった、という筋立てだ。だが、バラマキを可能とする税収の伸び=「市税収入が357億円増加」=は、嘘ではないが“まやかし”に近い。市が増えたとする357億の7割以上が、いわゆる自然増ではないからだ。
(注1:「FUKUOKA NEXT」:国家戦略特区を利用した天神ビックバンなど、福岡市が実施してきた事業の総称)

 福岡市がホームページで公表している『平成30年度当初予算案の概要』によれば、市税収入の増加分357億円のうち260億円はこれまで福岡県に入っていたカネ。教育分野の権限移譲に伴って生じる教員給与の支払い分が、制度改正によって市に入ってきただけなのだ。357億のうち、260億は使い道が“教員の給与”に限られたもので、多くの市民に恩恵があるわけではない。

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 もう少し詳しく述べてみよう。市町村立の小・中・特別支援学校等の教職員の給与は都道府県が負担し、その人事権も都道府県教育委員会が有している。しかし、福岡市や北九州市など指定都市にある学校の教職員の人事権だけは、特例によって指定都市の教育委員会に委ねられてきた。指定都市に関してのみ、人事権者と給与負担者が異なるという歪んだ状態だ。これを是正するため制度改正が行われ、給与負担も指定都市が受け持つことになったため、必要な財源も移譲されたというわけだ。新制度に移行したのが29年4月。これによって福岡市への税収が大幅に増えた。

 教員の給与負担に充てるため移譲された260億円を増収全体の357億円から引くと、福岡市における税収の実質増は97億円。福岡市は市民向けの広報紙である『市政だより』で、こうした増収の実態を隠して、あたかも357億円が高島市長が進める施策によって増えたかのように“見せかけた”ということだ。姑息と言うしかない。

◆ばらまきの数字にもインチキが……
 福岡市が収入実態をごまかしたのは、支出の伸びを裏打ちする数字が必要だったからだ。「成長の果実をあらゆる人に」というキャッチコピーは、市長の施策によって大幅な増収が実現したおかげで、多くの市民の暮らしが良くなるという意味。増収の7割以上が教員の人件費で、実質が少ないと分かれば、ばらまきのありがたみが薄れる。分母を大きく膨らませなければ、キャッチコピーが生きないのである。

 しかし、表面上をごまかしても、実際の暮らし向きに使える税金には限りがある。97億円程度の増収では、市民全体へのばらまきは無理だ。そこで市が考えたのは、市政だよりに掲載する支出内訳のすべてを、あたかも増えたかのように表記することだった。

(以下、次稿)



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