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消滅必至?「国民民主党」のお寒い実態

2018年4月26日 07:35

gennpatu 1864410756--2.jpg 民進党と希望の党の執行部による新党構想がまとまり、新たに「国民民主党」が誕生する見通しとなった。新党とはいうものの、参加するのは昨年まで民進党に所属していた議員ばかり。パッとしない顔ぶれであることに加え、通称の「国民党」にも批判的な見方が広がっており、結党前から暗雲が漂う状況だ。
 改めて新党への参加者について取材したところ、両党合わせて衆議院議員が40~45名前後、参議院議員が20名程度で、70人を割り込む可能性が高くなっていることが分かった。永田町関係者の間からは「いずれ消滅するのではないか」と先行きを不安視する声も上がっている。

◆新党の実態
 新党への参加者が増えないのは、頼みの綱である「連合」が、支持政党を巡って旧総評系と旧同盟系に分かれた状態となっているからだ。
 自治労や日教組などの旧総評系が立憲民主党の支持を決める一方、電力や鉄鋼、電機などの旧同盟系は民進と希望の合流を強く求めてきたという経緯がある。両党の執行部が新党の立ち上げを急いだのは、旧同盟系が主要なポストを握っている連合が「メーデー前の結党」を望んだからだとされている。

 立党の経緯を見れば明らかなように、「国民党」は旧同盟系労組の考え方に近い議員の集まり。つまり、昔の「民社党」の再来というわけだ。電力労組の発言力は強く、原発再稼働には事実上の賛成、憲法改正にも前向きという方向性を持たざるを得ない。共産党とは相容れない政党であり、「野党共闘」の強みを生かすことは難しくなる。

◆民進の参院議員、多くは「無所属」に緊急避難
 「新党はいずれ消滅する。残っても少数政党だ。旧同盟系の労組を支持母体にしていた民社党の党勢が伸びなかったのと同じ。時代は“中道”などという、あやふやな政治理念を受け入れなくなっているから、なおさらだ。求心力がない政党に、政治生命をかける議員は少ないだろう。それにしても“国民党”とは……。中国じゃないんだから」――。ベテランの野党議員がこう指摘するように、新党への参加者は増えるどころか減る一方となっている。

 民進、希望両党の所属議員数は次の通り。合わせて107名もいるのだが、新党参加者は70名程度にとどまる可能性が高い。 000.png まず、民進の衆議院組12人(会派は「無所属の会」)のうち、新党に行くと見られているのは多くても3人。立憲民主との連携を重視する岡田克也元民主党代表や野田佳彦元首相ら9人は、不参加の見通しだ。

 41名もいる参議院から新党に参加するのは、旧同盟系労組の組織内候補ばかり。選挙区で勝ち上がってきている参院議員は様子見をしており、半数以上が不参加となりそうだ。ある民進党関係者は、次のように内幕を語る。
「立憲の協力がなければ参院選は勝てない。旧同盟系労組だけでは、全県選挙はできないからだ。立憲は、定数2や3の選挙区での候補者擁立に積極的で、そうなると共倒れになる可能性が高くなる。選挙区の議員たちは、いったん無所属になって、野党共闘を模索する道を選ぶしかない。緊急避難ということだ」

◆希望は3分裂
 51名の衆議院議員を抱える希望の党も、内情は複雑だ。昨年、真っ先に民進を離党し希望の結党メンバーとなった細野豪志氏や長島昭久氏は新党不参加。民進党を崩壊させた前原誠司氏も、新党には受け入れてもらえない。極右的な言動で知られる中山成彬氏と防衛省出身の井上一徳氏は、松沢成文氏ら参院組の3人と一緒になって分党することが決まっている。立憲に近い考え方を持つ大串博志衆院議員ら数名も新党には不参加と見られており、「新党に行くのは40人いるかどうか」(希望の党関係者)といった状況だ。3分裂で、希望は事実上消滅する形となる。

◆「いずれ消滅」と厳しい見方も
 乱暴な計算になるが、新党に参加する衆議院議員は民進・希望を合わせても40~45人。参議院議員は、希望からの移籍がゼロになることが確実で、民進からの20人程度に終わりそうだ。少なければ60人程度、多くても65人というのが新党の実情となっている。民進のベテラン議員は、新党の先行きについてこう見ているという。
「国民党なんて名前の政党に有権者が期待するとは思えない。高揚感ゼロ。元の(総選挙前の民進党の)メンバーが集まるだけなんだから、期待しろっちゅうのが無理よね。生き残るのは、参議院は旧同盟系労組の組織内候補だけ。衆議院は、よほど選挙に強い奴だけになるよ。つまりね、新党は失敗するってこと。いずれは消滅する。来年は春に統一地方選があり、夏には参議院の選挙だよ。見ててご覧なさい、これから、政策がはっきりしている立憲に入党する人が増えるから」

 立憲民主党は、衆議員議員55名に参議院議員が7名の計62名。新党が全体の数を上回りそうだが、衆議院で野党第一党になることはできない。民進や希望から立憲に移る議員はこれからも増えそうで、「国民党」が勢いづくのは困難な状況となりつつある。

 迷走する安倍政権の支持率が3割前後あるのは、野党のだらしなさの裏返しだ。民進、希望の国会議員は、いつまで組合の意向で動くつもりなのだろう。



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