10日までに報道各社が行った衆議院議員総選挙の情勢調査で、自民党が単独過半数の233議席を大きく上回る状況にあることが明らかとなった。現時点で予想される自民党の議席数は270~280台。各社の調査結果は同じような傾向を示しており、野党関係者の間からため息が漏れる事態となっている。
原因は小池百合子東京都知事が設立した「希望の党」の失速。結党宣言で盛り上がったまでは良かったが、小池氏による「リベラル排除」と高飛車な態度に無党派層を中心とした有権者が反発したものと見られている。作った“受け皿”を、小池氏自らの手でたたき壊した形。22日の投票日に向け、野党の奮起に期待がかかる。
■堅調自民
10日までに報道各社が行った選挙情勢調査では、全国の小選挙区で自民党の公認候補が優勢に戦いを進める展開。希望の党の結党前の調査で、自民党候補の数字を上回っていた民進党離党組の候補まで、追い上げられて並ばれる状況となっている。福岡県内の11選挙区のうち、競り合っているのは2つの選挙区のみ。その2つの選挙区でも、自民党の候補が抜け出す勢いを示している。
■失速した小池新党 立憲民主は大躍進
希望の党の失速は明らかだ。小選挙区ごとの調査では、自民党の公認候補に大きく離されるケースばかり。善戦が予想された小池氏のお膝元、東京でも苦戦しており、小池側近の若狭勝氏も自民党の候補と競り合っている。投票日までこのままの状況が続けば、民進-希望の合流がマイナスに終わる可能性が高い。予想される同党の獲得議席は50前後とされる。
一方、小池氏側に排除されたリベラル派が結党した「立憲民主党」は大善戦。枝野幸男氏や長妻昭氏ら6人でスタートした同党は、前職の議席15を大幅に伸ばし、40に手が届く勢いとなっている。その他、公明は現状維持か微減、共産党は議席を減らす可能性がある。
■小池批判が情勢に影響
突然の衆議院解散で「大義がない」「森友・加計逃れ」と批判を浴びた安倍首相だったが、小池氏の独り舞台に救われた格好。小池氏に対しては反発が強く、有権者からは厳しい声が上がっている。
小池批判が希望の党の低迷につながっているのは確か。事前の情勢調査で比較的強いと言われていた同党の公認候補陣営(福岡)では、旧来の支援者から「なんで希望の党なんだ。小池は改憲派じゃないか。安保法制はどうなった。政策だってメチャクチャじゃないか」と激しく詰め寄られたという話も――。こうしたケースが後を絶たず、陣営では「伸び悩みの原因は小池さんの不人気」と分析している。
■安倍政治に「NO」を突きつけるためには……
そもそも、国民の半数以上が安倍政権の強引な政治手法に反対。そのうち、民進党のコアな支持者は憲法改正に慎重で、安保法にも反対だった。野党再編に期待が寄せられていたのも事実だろう。しかし、反安倍政治の受け皿となるべき小池新党は、排除の論理でリベラルを排除。自ら中核的な支持者を遠ざけた。政策抜きの「安倍VS小池」となった今回の総選挙で改憲に異を唱えるには、立憲民主党か共産党の候補に一票を投じるしかない状況だ。
政治家はブレたら終わりである。民進を離党して踏み絵を踏んだ議員たちは、憲法や安保法という肝心要の部分で180度ブレた。これほど大規模に無節操な政治判断が行われた例は、憲政史上あるまい。情勢調査で自民党を選んだ有権者の半数以上が挙げているのが「他の政党よりまし」という理由。安倍は確かにブレてはいない。だが、その目指すところは改憲、そして「戦争のできる国」である。安倍政権に「NO」を突きつけるには、やはり野党を勝たせるしかない。選挙戦は始まったばかり。今度は有権者が、希望の党の候補者たちに「憲法を守る」「安保法を撤廃する」「小池と決別する」という踏み絵を提示すればいい。どうせ節操などない方々。もう一度ブレてもらうしかない。