今年秋から来年春にかけて、福岡市長選(11月)、北九州市長選(1月)、福岡県知事選(4月)が相次いで行われる。立候補予定者を巡って早くも様々な噂が飛び交う状況だが、いずれの選挙でも現職の出馬が見込まれており、県内の主要な首長が4年間の行政運営について審判を受ける機会となる。
大型選挙の1番目は福岡市長選。ここに来て、3選を目指すと見られる高島宗一郎市長の推薦母体である自民党の地元組織が、大きく揺れている。
(写真は福岡市役所)
◆突然の市議団会長交代劇
今月6日、自民党福岡市議団の会長を務めていた森英鷹氏が辞任した。阿部真之助幹事長など他の執行部役員4人もそろって辞任。異例の事態に他会派の議員からも驚きの声が上がった。
原因は、会派運営の失敗。自民党市議団と高島宗一郎市長の関係は、徹底した議会軽視を続けてきた市長の初当選以来ギクシャクしたまま。これまで、何度も衝突を繰り返してきた。
市長と自民党市議団との確執が表面化したのは平成26年。議会を無視して事を進める市長の態度に業を煮やした市議団の一部が、市長選での党推薦に難色を示したことに始まる。対立候補の応援に回る市議もいたほどで、この時から両者の間にすきま風が吹く状況となっていた。
市長選直後に行われた同年の総選挙では、市長が市議団の制止を無視して、分裂選挙となった福岡1区の井上貴博氏(自民)を支援。顔をつぶされた形の市議団は怒り心頭で抗議文を突き付けたが、市長はこれも無視し、両者の関係は「修復不能」(市議会関係者)と言われるまでになっていく。
両者が戦闘状態に入ったのは昨年。前哨戦となった2月初めの請願審査では、市長派市議3人が紹介議員となって提出された公園の再整備に関する請願を反市長派が中心となって不採択にし、与党会派が市の方針に公然と異を唱える事態に。一連の騒ぎを受けて、市長派と見られていた3人の市議が自民党会派を離脱するなど、混乱の度を増していた。
直接対決となったのが、空港民営化を巡る問題。福岡空港ターミナルビルを運営する第3セクター「空港ビルディング」の株式売却益を、空港の民間委託に伴って発足する新事業者に“出資しない”とする高島市長に対し、“出資すべき”と主張する自民党市議団が、出資しないことを前提とした市の条例案を野党会派と組み否決。その後、自民などの賛成で可決された出資を促す条例案を、市長が「再議」で否決し、両者の対立は決定的なものとなる。
こうした中、市長に近い森氏の一方的な融和路線に、当選回数の少ない市議たちが中心となって反乱を起こしたのだという。3月に反高島の急先鋒と見られていた幹事長ら3人の役員が、森氏に辞任届を突き付け、会派全体で会長辞任を迫る形になっていた。
◆市長選に向け候補者擁立も
新任の会長は南原茂氏。「親市長派」(市議会関係者)なのだというが、副会長に市長と距離を置く打越基安市議が就任しており、役員を辞めたものの議運の理事として残った反市長派の今林秀明氏とともに、高島市政への圧力を強めるものと見られている。
秋の市長選に向けて独自候補を擁立したいところだが、高島人気はいまのところ不動。「後ろ盾の安倍首相や麻生太郎財務相が失脚しても、高島の優位は動かない」(県政界関係者)といった状況だ。ある自民党関係者は、ため息交じりにこう話す。
「失政があれば、外部から候補者を連れてくる大義名分が立つ。しかし、いまのことろ、市長にはこれといった失策がない。よく見れば市民の暮らしには無頓着な、ただのパフォーマーだと分かるのだが、天神ビッグバンとか派手な施策でごまかされている。市議団の中から立候補者が出れば、『仲間の応援』という理屈も成り立つが、そんな度胸のある議員はいない。しばらくは是々非々で、様子を見るしかない」
しかし、現状打破を願う関係者は少なくない。別の自民党県連関係者からは、不気味な予言が聞こえてきた。
「秋の総裁選までに安倍首相が退陣するのは必至の状況だ。あとは石破さんか岸田さん。そうなると、首相のお友達ばかりがいい思いをしてきた国家戦略特区の見直しが始まる。首相と一番仲の良かった首長といえば高島。これまでのように“わがまま”は通らなくなる。市長に飽きてきたともいわれる高島は、国政に転身するのが夢。市長選前後に、何かが起きる可能性もある。候補者不在とされてきたが、誰もいないという訳ではない」