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森友政局でも支持率低迷の野党 見えない再編への道筋

2018年4月 3日 09:10

DSC05021--3.jpg 共同通信と読売新聞が、3月31日から4月1日にかけて実施した世論調査の結果を発表した。内閣支持率はいずれの調査でも約4割、不支持は約5割で、不支持が支持を上回る状況が続いている。興味深いのは、共同の調査で内閣支持率が前回調査(3月17、18両日)より3.7ポイント上がったこと。学校法人「森友学園」を巡る疑惑は深まる一方だというのに、政府・与党の中からは「支持率は下げ止まった」(自民党関係者)という安堵の声さえ上がる状況だ。
 出口が見えないまま、時間の経過とともに“うやむや”に終わる可能性が出てきた森友問題。ある意味、攻めきれない野党に対する失望感が、逆に安倍政権を助けている。
 野党各党は何をやっているのか――。

◆安倍内閣「支持率4割」は野党のおかげ
 証人喚問で証言拒否を連発した佐川宣寿前国税庁長官の態度に怒りを覚えた国民は少なくなかったようで、共同の世論調査では72.6%、読売の調査でも75%が「納得できない」と答えている。

 一方、安倍昭恵首相夫人の国会招致を求める声は、両社ともの6割超えの数字。世論調査の結果を見ると、森友学園問題は終わっていないことになる。

 当然、強引な幕引きを図る安倍政権への評価は厳しくなるはずだが、共同の調査では3.7ポイントの支持率増。読売の支持率は、前回調査が財務省の文書改ざんが表面化する前の3月9~11日だったため、6ポイント低下の42%となっている。不支持が支持を上回って5割前後あるのは同じ結果だが、これだけ嘘やごまかし、隠蔽を繰り返す政権に4割もの支持があるという現実は、正直言って驚きだ。ただ、政党支持率と比べてみると、この4割という数字にも納得はいく。 

 共同通信の調査による政党支持率は、自民党が前回比2.9ポイント増の39.1%、立憲民主党も2.7ポイント増の14.2%。以下、公明党は3.9%、共産党3.9%、日本維新の会2.2%、希望の党1.3%、民進党0.9%、自由党0.7%、社民党0.6%となっており、野党6党の支持率を合算しても23.8%しかない。自民党の半分程度だ。もともと自民党シンパが4割近くいるため、政権支持率が極端に下がることはない。厳しい批判に晒されても、3割台前半から2割台の後半といったところで落ち着いてしまう。もちろん、これを許しているのは「野党」である。

 佐川氏の証人喚問が実現したのは、3月2日の朝日新聞朝刊のスクープが発端となって、財務省の文書改ざんが明らかになったためだ。報道が先行して政権を追い込んだ形だが、野党各党は証人喚問で攻め手を欠き、来年度予算の成立で、追及の場である「予算委員会」を長い時間確保できない事態となっている。野党の体たらくが、安倍政権を助けているのは事実。政権不支持が5割もいるというのに、野党はこうした人たちの受け皿になっていない。

◆消滅寸前「民進党」の求心力は90億の政治資金 
 各党の支持率が、それぞれの立場を表わしている。とくに立憲民主、希望に衆議院の議席を持っていかれた格好の民進党の落ち込みが激しく、所属議員を56人も抱えながら、支持率は衆参合わせて6人しかいない自由党の0.7%とほぼ並ぶ0・9%に過ぎない。旧民主党時代からの支持率低迷に、歯止めがかかるどころか落ちる一方。数字的には、消滅寸前の政党ということだ。

 その民進党が先週、希望や立憲に呼びかけて、新党を立ち上げる方針を打ち出した。立憲は、「数合わせには賛同できない」として呼びかけを無視する構えだが、小池百合子という人寄せパンダを失った希望の大半は、右寄り議員を除いて民進党に合流する見通しだという。1%に満たない支持率の政党が、1.3%の希望と合体して数だけ増やそうという算段である。支持率で見れば、立憲の旗の下に集う方が得策だと思いがちだが、民進の議員たちは二つの理由で、二の足を踏む。

 まず、支持基盤である「連合」との関係がある。自治労や日教組など旧総評系の労組は立憲支持。こちらは原発や憲法改正に反対と主張が明確だ。他方、旧同盟系は右寄りで、しかも原子力ムラに軸足を置く電力や電機といった労組が力を持っている。連合が、相容れることのない右と左に割れるため、選挙基盤の弱い民進の議員たちが、まさに“右往左往”するという構図だ。

 地域後援会が組織できない旧民主党系の議員たちにとって、労組の力は絶対。選挙第一に走るあまり、国民ではなく労組の顔色ばかりうかがっているのが実情だ。しかも、旧総評系と旧同盟系の主張が相反するため、原発や憲法に関して、はっきりモノが言えない。主張を明確にできず支持率が下がっているというのに、肝心な点をぼかしたまま「再結集だ」「新党だ」と騒いでも、国民は振り向きもしないだろう。それでも民進が強気に出るのは、二つ目の理由である政治資金=「カネ」という求心力を持っているからだ。

 民進党には、約90億円ともいわれる政治資金が残っている。旧民主党政権時代、300人を超える議員を抱えていた時期に、十分過ぎるほどの政治資金をため込んでいたからだ。民主党が政権奪取を実現したのが平成21年。それから3年間、民主党は毎年200億円前後の政治資金を得ていた。下の表は、旧民主党時代からの民進党の収入、支出、翌年への繰越額をまとめたものである。

民進.png

 昨年の総選挙で百数十億円を費消した民進党だが、約90億円ともいわれる遺産がある。「排除の論理」で自滅した小池百合子東京都知事に持ち逃げされることはなかったが、この90億円の魅力が民進党の議員たちを縛り付ける形になっている。

 いっそ90億円を国庫に返納して一から出直せば評価が上がるのだろうが、それができない民進党議員たちの弱さが、支持率に跳ね返ってくる。ある民進党関係は、ため息交じりにこう話す。
「選挙のことを考えると、支持率の高い立憲に行くべきだと思う。立憲は、うち(民進党)の10倍以上の支持率があるわけだから……。けれど、立憲にはカネがない。選挙も自前でやることになる。なんと言われようと、90億は魅力。十分な政治資金がなければ、選挙は戦えないのだから」

 政策や理念ではなく、豊富な政治資金を求心力に再結集を呼びかける民進党――。おのれの姿が見えなくなった政党に、期待が集まるはずがない。政界再編を仕掛けるのなら、90億円を国庫に返納し、理念と政策で結集軸を打ち立てるべきだ。



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