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内閣支持率と悪党の免罪符

2018年6月26日 08:00

5181bf7baf81652e8785c6a67638dfb599eacd49-thumb-250 xauto-19212.jpg モリ・カケ疑惑は深まる一方だというのに、報道各社の世論調査では安倍内閣の支持率が軒並み上昇。秋の総裁選に向けて「安部3選」が現実味を帯びる状況となっている。
 同じ支持、不支持でも報道機関ごとの数字に違いがあり、“支持する”と答えている人の数は38%~45%台。たしかに前回調査より支持が上向いているのだが、報道各社の調査結果を並べてみれば、違う側面が見えてくる。

■半数近くは「不支持」で固まる 
 下が、6月に入って主要なメディアが実施した世論調査の結果。朝日とNHKの調査では依然として「不支持」が「支持を」上回る状況だが、読売と共同の調査では若干ながら「支持」が「不支持」を上回るまでに回復している。ちなみに、読売と共同の調査結果は、毎回政権支持が強く出る傾向にある。

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 調査項目は多岐にわたるが、HUNTERが注目したのは支持、不支持の数字と、それぞれの理由で最も多かった答えのパーセンテージ。なぜ安倍政権を支持するのかという問いに対しては、「他の内閣よりまし」という消極的な支持が多いことが分かる。これは、親安倍、反安倍に関係なく同じ結果だ。

 「他の内閣よりまし」という回答者が多いのは、野党のふがいなさの裏返しだ。民主党政権時代の稚拙な政権運営を見せつけられたことが、いまだに有権者のトラウマになっている。だが、支持が不支持を上回っている読売と共同の調査結果にしても、その差は1~1.7ポイント。ほぼ拮抗する状況で、盤石とはいえない。さらに、いずれの調査でも“支持しない”層が45%前後で固まっており、不人気が定着していることを示している。

 ある自民党関係者の話。
「不支持が支持を上回っているということは、受け皿が育てば、選挙で負けるということ。それは、自民党内部の総裁選でも同じことが言える。いまは安倍さんの3選容認が国会議員の過半数を占める勢いだが、支持率が持ち直しているからこその現象。なにか事が起きれば支持率はまた下がり、党内の安倍支持も減ることになる。昨年の総選挙は、小池都知事の排除発言に助けられただけで、自民党の力で勝ったわけではない。現に、与党である公明党は議席を減らしている。モリカケで信頼を失った状態で安倍3選を決めれば、有権者からそっぽを向かれ、来年の統一地方選や参院選を直撃するかもしれない。不支持が支持を上回るというのは、そういうことだ。支持率が上がったと、はしゃぐ連中もいるが、不支持は有権者の半分近くいることを見落としているんだろう」

■安易な「支持」が招く政治の劣化
 報道各社の世論調査は、今月8日から17日にかけてのもの。その後の不祥事は、数字に反映していない。21日には、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案の審議が行われた今月15日の衆議院厚生労働委員会で、自民党の穴見陽一衆院議員が、参考人として出席していたステージ4の肺がん患者を「いい加減にしろ」と恫喝。24日から25日にかけては、麻生太郎副総理兼財務相が、「新聞を読まない(30代前半までの)人は全部自民党支持だ。新聞とるのに協力なんかしない方がいい」、「(自分のセクハラ罪発言)は捻じ曲げられて伝えられた」「ふざけた記事の作り方だと思った」などと報道批判を繰り返している。

 モリ・カケ問題の幕引きを急ぐ嘘つき総理と、国民を見下す自民党――。世論調査で、野党が頼りないからといって安易に「政権支持」と答えることが、結果的に悪党に免罪符を与える形になっているのは確かだ。政治の劣化を招いている責任の一端は、私たち有権者の側にもある。



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