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市長選まで9か月 福岡市政の現状は……

2018年3月 2日 07:20

市役所.jpg 福岡市長選挙まで約9カ月、高島宗一郎市長の出馬が確実視されるなか、側近ナンバーワンとして市長に仕えてきた「政務秘書」の姿が、市役所周辺から消えた。青果市場跡地の利権に手を付けたことで市長周辺の怒りを買ったと言われているが、選挙を取り仕切ってきた政務秘書が表舞台から消えたことで、「彼がいないとなると、選対の動きが心配」といった陣営内の声もあるという。
 ただし、対抗馬不在の状況が続くようなら秋の福岡市長選挙は事実上の「無風」。高島3選が現実味を帯びる。
 衰えを見せぬ高島人気。改めて、市政の実情をさぐってみると……。(写真は福岡市役所)

■消えた政務秘書
 「彼(政務秘書)の姿を市役所の中で見ることはなくなりましたね。いいことです。公務員でもない人が、市長の権力を背景に役人を動かすのは間違い。(政治資金パーティーの)パーティー券販売を巡って業者との密接な関係が見え隠れしていただけに、彼が行政にタッチできなくなった現状に、安堵している職員は少なくないでしょう」――ある市職員は、そう断言する。

 政務秘書が市役所から遠ざけられたのは、福岡市博多区にある青果市場跡地の利権に介入したためと見られている。同地の再開発に向けて熱心に動いていた業者の怒りは凄まじかったとされ、事態を知った市長が“クビ”を宣告してもおかしくない話だったという。政務秘書と、彼が関係した企業との間に現金授受の約束があれば、刑事事件に発展していた可能性もある。市長周辺にとっても危ない話だった。

 消えた政務秘書の行方については、聞いた人によって「北九州に帰って、元居た国会議員の事務所に戻ったんじゃないか」(市職員)、「つい最近、福岡空港で見かけた」(市議会関係者)、「まだ市長周辺のグループの一員。そのうち現場復帰するんじゃないか」(市幹部OB)、と様々。政務秘書氏が高島市長の初当選まで勤務していた北九州市を地盤とする衆議院議員の事務所に確認したところ「うちを辞めてあちら(高島事務所)に行った人ですから、関係ありません」とけんもほろろだった。

 政務秘書氏はどこで何をしているのか――。市長周辺と距離を置く市関係者は、「福岡市内をうろちょろしていると聞いている」とした上で、こう話す。
「市役所で我が物顔に振舞われるのは困りものだが、高島陣営には秋の市長選で選挙事務所を取り仕切ることのできる人材がいない。選挙近くになれば政務秘書に復帰するのではないか。それまでは謹慎ということだろう。高島事務所に秘書として残っているのは、市長と同じ大分県出身の好青年。政務秘書のような汚れ仕事はできない。そのうち(政務秘書)が動き出す。いまも水面下で動いているかも知れないが……」

■対抗馬不在
 選挙の仕切り役がいようといまいと、3選を狙う高島氏が秋の市長選挙で敗れるということは考え難い。現職の座を脅かすだけの対抗馬が、出てきていないからだ。前回の市長選で高島氏を推薦した自民党市議団とは、空港の新事業者への出資問題で対立し、ギクシャクしたままの状態。関係修復には至っておらず、自民側としては、気持ちよく「高島推薦」というわけにはいかない。かといって、霞が関官僚など外部からの候補者を擁立することもできない。高島氏に失政が見つからない状況では、無理な候補者擁立をするまでの“大義”がないのだ。戦うとすれば身内の市議が出馬し、「同僚が出るなら応援する」という理由付けをするしかないのだが、敗戦覚悟で挑戦者になるような無謀なマネをする市議はいないとみられている。

 高島3選に黄信号がともるとすれば、後ろ盾になっている安倍首相が政権を手放した場合以外に考えられない。国家戦力特区を活用した街づくりに全力投球している高島氏にとっては、安倍政権そのものが強力な推薦母体。市長初当選以来、高島氏を支え続けてきた麻生太郎副総理も健在だ。9月に予定される自民党総裁選で安倍首相が敗れない限り、状況が変わることはない。

■観光、起業支援に偏る施策
 高島市政のこれまでを振り返ってみると、彼の視線の先にいるのは、海外からの旅行者や起業家だけ。打ち出す施策も、観光や起業支援に重点を置いてきた。市民の暮らし向きに冷淡であることを隠そうと、保育所整備に税金投入して子育て世代にアッピールするが、環境整備が追いつかず、年々待機児童と未入所児童が増える状況となっている。前回の市長選があった平成26年には「待機児童ゼロ」を宣言した市長だったが、それが一瞬のパフォーマンスだったことは周知の通り。子育て支援策を選挙利用する政治手法に、冷ややかな目を向ける市関係者は少なくない。

 高島市政になって、「福岡市が元気になった」と評価する声があるのは確かだ。しかし、見せかけの元気さとは裏腹に、生活費を稼ぐため共働きを強いられる家庭は増え続けている。だから保育所が足らない。高齢者の施設も不足しているが、改善したという話など聞いたことがない。市長が、市民の暮らし向きを見ていない証拠だろう。

 福岡市は来年度に向け、「成長の果実をあらゆる人に」をテーマに掲げ、過去最高規模となる8,300億円を超える予算を組んだ。子ども関連予算は67億円増だという。一方で進む「天神ビッグバン」、「ウォーターフロントネクスト」、「Smart EAST」、「ユニバーサル都市・福岡」、「一人一花」といったプロジェクト――。どれも、市外から人を呼び込むことにつながる施策である。肥大化する福岡市。市民と向き合い、弱者の声に耳を傾ける市政が遠ざかっていく。



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