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森友疑惑の原点

2018年3月16日 08:55

kagoike-thumb-530x964-24025.jpg 学校法人「森友学園」への国有地売却問題が急展開した。近畿財務局に文書偽造を指示したとみられている佐川宣寿前国税庁長官の国会招致が確実となる中、これまでに自殺がしたことが明らかとなっていた同省職員とは別の職員が、今年1月に自殺していたことが判明。森友絡みで2名の犠牲者を出すという異常な事態となり、安倍首相への辞任圧力が強まる状況となっている。
 憲政史上に類を見ない政・官が引き起こした事件。原点をたどれば、やっぱり“この人”の軽はずみな言動が発端だったと言うしかない。

◆昭恵夫人“関与”の証拠
 森友疑惑が噴き出した昨年2月の国会で、安倍首相は「私や妻が関係していたということになれば、まさに私は、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめる」と答弁。以来、一貫して自身と昭恵夫人の関与を否定してきた。

 しかし、2015年11月に昭恵夫人付き官邸職員の谷査恵子氏が、森友学園との交渉状況について財務省に問い合わせていたことが発覚。今月になって公表された財務省が偽造する前の森友関連文書には、「安部昭恵総理夫人」「安部首相夫人」などの記述が5か所あり、ごっそり削除されていたことが明らかになった。

 明確に「関与」を示す証拠が出てきたというのに、政府・与党は昭恵夫人の国会招致を拒否。首相は、現在も「妻は関与していない」として見苦しい強弁を続けている。

 問題の国有地に関する森友と財務省の契約は2件。最初の段階で結ばれた定期借地契約と、土地の鑑定価格からゴミ撤去費として8億2,000万円を値引きし、1億3,400万円で売却された時の契約書だ。

 籠池被告が近畿財務局を訪れ、土地取得の意向を表明したのが2013年6月。じつは、それから異例の売買契約が成立した2016年7月までの約3年間の節目ごとに、昭恵夫人の関与を裏付ける証拠が残されている。

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 度々報道されてきたことだが、昭恵夫人は森友学園が運営している幼稚園に行って園児の激励に涙を流し、学園が建設を予定していた小学校の名誉校長にも就任していた。当時は、「教育勅語」を園児に暗誦させるという時代錯誤の教育方針を激賞していたほどだ。

 森友との親密な関係の上に、夫人付き官邸職員の“財務省への問い合わせ”がある。ご主人様=昭恵夫人の指示なり依頼なりがなければ秘書役の役人が動かないことは、永田町と霞が関の常識。昭恵夫人の関与を裏付ける証拠は、十分過ぎるほど揃っている。

◆今も残るフェイスブックの投稿写真
 そうした意味で、下の1枚の写真は森友疑惑の原点と言うべきものだ。この写真をフェイスブックに投稿したのは昭恵夫人本人で、一緒に写っているのは森友学園の前理事長・籠池泰典被告とその妻、諄子被告である。

kagoike.jpg

 もう一度上掲の表を確認すると、この写真がフェイスブックに投稿された約1年後には、森友学園と近畿財務局が定期借地契約を締結。昭恵夫人付きの官邸職員が、森友との交渉経過を財務省に問い合わせした5か月後には、8億円以上値引した1億3,400万円という非常識な金額で国有地が売却されてたことが分かる。

 これだけ国有地売却への関与をうかがわせる証拠が出ているというのに、政府・与党は昭恵夫人の国会招致を拒否。安倍首相は「妻に聞いたが、関与していないと言っている」と主張してきた。残念のことに、潔白を証明する根拠は何も示されていない。

◆“軽はずみ”が歪めた政治と行政
 国有地の売却契約が締結された時の理財局長で、関連文書の偽造を指示したとみられている佐川宣寿前国税庁長官が来週にも国会に招致される見通しとなったいま、昭恵夫人だけを特別扱いする理由はなかろう。総理夫人だから特別というなら、それこそが森友に格安で国有地を払い下げた論拠と同じということになる。総理夫人が名誉校長に就任する予定の小学校をつくるという森友に、財務省が過剰に反応したことは容易に想像がつく。そこに夫人付き職員からの問い合わせとくれば、「催促」ととるのが役人の常なのだ。

 ただし、言われてきた「忖度」で動くほど霞が関は甘くない。加計学園の獣医学部新設も森友への土地売却も、霞が関を動かすだけの力を持った権力者からの「指示」がなければ実現していなかったはずだ。

 原発反対を唱えたり、居酒屋の経営に乗り出したりと、何かと物議をかもしてきた昭恵夫人。軽はずみな行動が多く、宰相の妻としては歴代最低と言うべきだろう。その軽はずみが、日本の政治と行政を歪めた可能性が高い。



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