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森友、加計だけではない「政治案件」

2018年4月27日 07:55

5181bf7baf81652e8785c6a67638dfb599eacd49-thumb-250 xauto-19212.jpg 学校法人「森友学園」と「加計学園」の問題は、安倍晋三首相と昭恵夫人が、お友達に便宜供与を図ったか否かが問われる事案だ。いわゆる「政治案件」であることは言うまでもないが、政治が関与して事業化されたと見られる事例は、これまでにも少なからず存在する。
 永田町で数十年にわたり国政に関与してきた3人のベテラン秘書たちが、「政治案件」について振り返った。

【ケース1 政治力で大学新設】

 私は、主に自民党議員の秘書として20年以上勤めてきましたが、首相や官房長官、大物政治家への忖度は昔から公然と行われていました。例えば、私が直接かかわった大学新設計画も、その一つです。

 現在の新潟県佐渡市に作る予定だった大学で、「職人大学」という名称になる予定でした。大学の教授と民間企業の社長が中心になって、職人のマイスター制度を取り入れた教育を行うということになっていました。

 官房副長官主導で大学認可に向けて進んでいたのですが、直前に自民党が下野。話は一旦止まります。しかしその後、参議院のドンと呼ばれていた村上正邦参議院議員(当時)がKSD(「ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団」)による「国際技能工芸大学」設立構想を支援する「国際技能工芸大学設立推進議員連盟(KGS議連)」会長に就任し、埼玉県に「ものつくり大学」を新設することが決まります。加計学園の獣医学部新設以上に、強引なやり方でした。

 ところが2000年10月、KSDの不正経理疑惑が発覚。村上氏は受託収賄の容疑で逮捕され、2003年5月に東京地裁で懲役2年2ヶ月、追徴金約7,288万円の実刑判決を受けることとなります。「政治案件」で大学を設置し、汚職事件に発展した初めての事件でした。

(公設秘書歴25年の男性)

【ケース2 成田市の医学部新設も政治案件】

 あまり注目されていませんが、2017年4月に医学部を新設した「国際医療福祉大学」に関しても疑惑があります。加計学園と同じ「国家戦略特区」制度を活用した特例として千葉県成田市に新設されたケースです。国際医療福祉大学の医学部は震災復興の特例を除くと、38年ぶりの医学部新設でした。国際医療福祉大学の医学部も加計学園と同様に、キャンパスの建設用地を地元自治体から無償貸与され、校舎の建設費に巨額な補助金が支出されています。

 医学部の定員は140名(うち20人は留学生)と国内最大規模。内閣府、文科省、厚労省の「国家戦略特区における医学部新設に関する方針」によれば、「世界最高水準の“国際医療拠点”をつくる」という新設方針でしたが、その言葉を信じる関係者はいないでしょう。

 医学部新設には、日本医師会をはじめとして反対の声が根強くありましたし、今までの入学定員増だけでも医学生の学力が下がったとの認識もあるようで、医師の質低下に対する懸念が大きかったのです。

 今治市&加計学園のケースと微妙に違うのは、今治が公募で加計学園を選んだのに対して、成田市は最初から国際医療福祉大学と連名で特区申請した点。よく「加計ありき」だという批判がありますが、成田の医学部の方がよっぽど酷い。

 国際医療福祉大学は学長や副学長、副理事長のポストに官僚OBがいるほか、教授職も含め、多くのの官僚OBが在籍しています。常務理事には、元衆議院議員の秘書が名前を連ねているんです。この医学部新設は、間違いなく政治案件なのです。

(秘書歴10年の男性)

【ケース3 総理案件の記録は保存が当然】

 宮沢内閣の頃、総理官邸の官房副長官室に2年間通った経験があります。官房副長官室の秘書官は大蔵省と外務省のキャリア組から一人ずつと、総理府(現内閣府)からノンキャリ2名の4名体制でした。キャリア2名は現在、一人が財務省で主計局長(次の事務次官)に、もうひとりは外務省でベルギー大使になっています。

 当時、キャリア官僚の出向秘書官はエリートとして総理大臣室に入り、次が官房長官室、若手が官房副長官室に入るという仕組みになっていました。逆に総理府(現内閣府)のノンキャリは、一番経験の長い秘書官が官房副長官室に着任する慣例があり、その次が官房長官室、一番若い秘書官が総理秘書官室に着くこととなっていました(官邸の慣習を守るためと言われている)。

 その中で、一番古株の女性秘書官が「総理が替わると書類は燃やす」と言っていたのを覚えています。この人は竹下登元首相が官房副長官の頃から官邸にいた人物。機密事項が書かれた書類は保管しないということなのですが、逆に総理が替わらない限りは書類を処分しないということでもあります。

 加計学園の獣医学部新設に絡んで2015年に作られた「首相案件」文書を巡り、柳瀬唯夫元首相秘書官は面会したかどうかについて「記憶にない」と言っていますが、官邸内に面会を示す書類が残っていると考えて間違いありません。正直に言えないから曖昧な発言になってしまっているだけです。安倍総理がらみの案件の記録文書は、在任中なら必ず残っているんです。

(秘書歴28年の男性)

 財務事務次官のセクハラ問題で、棚上げ状態になった形のモリ・カケ疑惑だが、二つの学校法人を巡る事案が「政治案件」であったことは明らかだ。ただし、森友には安倍昭恵首相夫人が、加計学園の獣医学部新設には首相本人が関わるという異常な事態。一強におごる政治状況が、歴代の自民党政権がため込んできた「膿」を噴き出したということだろう。



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