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米兵事故めぐる沖縄メディア批判報道 産経が「おわびと削除」
曖昧なコメントの米海兵隊にも責任の一端

2018年2月 9日 08:45

DSC05712.JPG 間違いを認め謝罪した産経新聞には、報道機関としての矜持が残っていたということだろう。
 沖縄県で起きた米兵がらみの交通事故の報道で、裏付けが不十分な取材に基づき沖縄メディアを誹謗する記事をネットサイトや新聞本紙に掲載した産経新聞が、事実上“虚報”を認める形で、8日の朝刊1面に「おわびと削除」を公表。3面に大きく紙面を割いて、検証記事まで掲載した。
 HUNTERは、1月31日に記事を書いた産経の那覇支局長への取材結果を「一問一答」の形式で配信。2月7日には、「継続取材」を続けているとする産経本社の広報と、追加取材を否定した那覇支局長の主張の食い違いを追及する記事を配信していた。

■追い詰められた産経新聞
 昨年12月1日、沖縄自動車道を走行中だった米軍の車両が6台がからむ多重衝突事故に巻き込まれ、車外に出た米海兵隊の曹長が後続の米軍貨物車にひかれ意識不明の重体となった。沖縄の主要紙「沖縄タイムス」と「琉球新報」が淡々と事故を報じる一方、産経新聞は同月9日「(米軍)曹長は日本人運転手を救出した後に事故にあった」として、救出を報じない沖縄の2紙を名指しし、≪「報道しない自由」を盾にこれからも無視を続けるようなら、メディア、報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ≫と批判する那覇支局長の署名記事をネットで配信。同月12日には、新聞本紙に「日本人救った米兵 沖縄2紙は黙殺」と見出しを打ち、ネット版を短くまとめた記事を掲載した。

 これを受けて、琉球新報が“米兵の美談”に疑義が生じた取材結果を明らかにする検証記事を掲載。HUNTERは、産経新聞那覇支局長と同紙本社の広報に、一連の経緯についての確認を求め、それぞれから得た回答を記事にまとめて配信していた。この間、朝日新聞や毎日新聞も、産経の記事に疑義が生じたことを報じている。産経は、追い詰められていた。

■海兵隊は米兵の日本人救助を否定
 沖縄メディアを批判する署名記事で、産経の那覇支局長が依拠したのは、米海兵隊への取材結果。支局長が「海兵隊の広報に取材した」「コメントもらった」「海兵隊の情報で書けると思った」と明言したため、海兵隊報道部に取材を申し入れ、以下の3点について確認を求めていた。

 ①在日米軍海兵隊は、該当事故について「曹長が日本人運転手を救出した」という事実を確認しているか?
 ②産経新聞は在日米軍海兵隊に対する取材をもとに、「曹長が日本人運転手を救出した後に事故にあった」という記事を掲載したと回答している。在日米軍海兵隊はこの件について産経新聞の取材を受けたか?
 ③産経新聞は、該当記事について「在日米軍海兵隊に記事を送付しているが、反論や間違いの指摘がなかったために、内容は正しいと認識している」としている。実際に該当記事が送付されてきたか?また、その記事を確認しているか?確認したとすればいつの時点か?――以上3点についての質問取材に対する、米海兵隊からの回答が下の文書である。

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 在日米軍海兵隊は、該当事故について「曹長が日本人運転手を救出した」という事実を確認しているか、という質問に対しては――

  • 2017年12月1日の件に関する目撃者によると、曹長は車両事故を確認するために沖縄自動車道の路肩に降り立ち、そこで怪我をした。
  • 彼が事故にあった人を救助する前に、北方向に向かう車両にぶつかった。
  • 事故に合う前に、曹長が地元の運転手を救助していたかどうかは目撃されていない。

 ②と③の質問に対しては――

  • 我々のポリシーとして、報道機関に私たちの対応について議論することは不適切です。
  • 私たちはコミュニケーションに透明性を保ち、メディアからの問い合わせには素早く対応し、緊密に連携するコミュニケーション戦略をいつも心がけています。

 産経の取材については回答をぼかしたが、肝心なのは「事故に合う前に、曹長が地元の運転手を救助していたかどうかは目撃されていない」の部分。当初、産経那覇支局長の取材に、曹長が日本人を救助したかのようなコメントを出した海兵隊が、実際には曹長が日本人を救助したという正確な目撃証言を得ていなかったということだ。産経新聞も同様の確認を行ったはずで、沖縄県警への取材も含め、結果的に誤りを認めざるを得なかったとみられる。米軍曹長を美談の主として扱ったネット上の嘘情報に、海兵隊も産経も踊らされていた。お粗末と言うしかない。

 追加取材を行ったのは、記事を書いた那覇支局長ではなく県外から派遣された記者だったとされ、問題の当事者を外して確認作業を進めた形。産経が報道機関としての筋を通したのは確かだ。同紙は琉球新報と沖縄タイムスに謝罪した模様で、出先の記者が沖縄メディアに仕掛けたケンカは、「おわびと削除」で幕となった。

 *産経新聞ウェブサイト「産経ニュース」⇒『沖縄米兵の救出報道 おわびと削除



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