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「政権の犬」の逃げ足

2018年2月 6日 08:10

33d9c95c3879d35dff8982295c067df1c41410db-thumb-500 xauto-23483.jpg 韓国・平昌で開かれるオリンピック冬季競技大会まであと3日。行く、行かないで揺れた安倍晋三首相の五輪開会式出席問題は、結局「出席」の方向で落ち着いた。
 この間、首相の出欠報道をリードしたのは産経新聞。先月11日に首相の開会式欠席をスクープ。一転して出席する方針になったことも、同24日の朝刊で報じていた。
 政権べったりの産経だからこそ可能な一連の報道だが、政府方針が180度変わったため、同紙の変節ぶりも凄まじかった。この新聞、本当に報道機関なのか――。

■五輪開会式「欠席」をスクープ
 首相の平昌オリンピック開会式「欠席」を報じた産経新聞1月11日朝刊の記事は、こう書きだす。 

 安倍晋三首相は韓国で2月9日に行われる平昌五輪の開会式への出席を見送る方針を固めた。複数の政府関係者が10日、明らかにした。表向きは1月22日に召集予定の通常国会の日程があるためとするが、慰安婦問題の解決を確認した2015年12月の日韓合意をめぐり、文在寅政権が日本政府に新たな措置を求める姿勢を示したことを受けて判断した。
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 首相の動きをいち早く報じたところは、さすが政権の広報紙。しかも、「表向き」に加え「裏」の理由まで明らかにしており、政府への食い込み方には脱帽するしかない。その後、「不参加」については読売も報道。韓国を敵視する産経が小躍りしそうな状況となった。

■首相を牽制した産経抄
 政府内の流れが一変したのは、産経のスクープ報道から5日後のことだった。1月16日の記者会見で、自民党の二階俊博幹事長が「(国会と五輪開会式出席は)両方とも大変重要な政治課題であり、調整して実現できるよう努力したい」と発言。次いで18日には公明党の山口那津男代表が、「首相が出席されることを私個人としては期待したいが、最終的には政府が判断すべきだ」として五輪開会式出席を促したのである。大物二人の発言に同調する形で、政府与党内から「参加すべき」との声が上がったのは周知の通りだ。面白くないのは産経。当然噛みついた。下は、1月19日の同紙コラム「産経抄」である。

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 安倍晋三首相に五輪開会式への出席を求める声が、与党内からも出ている。論外である。慰安婦問題の合意についての、韓国への失望だけではない。茶番劇になりかねない平和の祭典に首相として関われば、北朝鮮の思うつぼだ。

 五輪開会式への出席を求める声を『論外』と切って捨て、『茶番劇になりかねない平和の祭典に首相として関われば、北朝鮮の思うつぼ』と露骨に首相を牽制した。荒い言葉は、焦りの裏返し。当初のスクープが帳消しになりそうな状況となったことで、産経抄は怒りを禁じえなかったのだろう。ネット版の産経抄の見出しは、《安倍晋三首相の平昌五輪出席は論外である》だった。

■一転「出席」またまたスクープ
 産経の焦りをよそに、首相は開会式出席へと大きく舵を切る。開会式出席を促す世論が強まったと見た首相は先月23日、産経新聞のインタビューに答える形で開会式に出席する意向を示す。首相の方針転換を伝える記事を、産経新聞は24日朝刊の一面トップで報じている。「不参加」をスクープした右翼仲間の産経に、首相が気を遣ったということだ。

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■権力に寄り添う報道姿勢は「論外」
 報道機関が腹を決めて記事を世に送り出した以上、産経は首相の五輪開会式出席を認めるわけにはいくまい。しかし、この新聞社のいい加減なところは、首相が方針変更を決めたとたん、それまでの主張を平然と引っ込めたことだ。同日の紙面、産経は3面の解説記事で、五輪開会式出席を決めた首相を持ち上げ、褒めたたえていた。それが下の紙面。

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 見出しは『リスクいとわず決断』、その下に『慰安婦合意履行 世界に示す』。記事の中で、首相が五輪開会式への出席を決断したことについては《今回の産経新聞のインタビューや、首相の周辺取材を通じてみえてきたのは、リスクを取ることをいとわず、批判を覚悟して為(な)すべきことを為そうとする「政権を担う者の責任」だった。》――権力者に媚びるゲスな提灯記事に、あぜんとなった。

 「五輪出席論外」はどこへ行ってしまったのか?政権の犬は逃げ足が速い。



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