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産経・沖縄メディア攻撃の「虚報」 発覚後の顛末

2018年2月 7日 08:10

000-DSC05532.jpg 米軍兵士が絡んだ交通事故の報道で、裏付けが不十分なまま沖縄メディアを攻撃した産経新聞。琉球新報の検証によってその報道内容に「虚報」の疑いが浮上した。
 疑問を提起されたことで自社報道の裏をとって反撃するかと思っていたら、HUNTERと他メディアの事実確認に対して、問題の記事を書いた産経新聞那覇支局長と本社広報の見解に相違が生じ、迷走する形となっている。大丈夫か!産経新聞。

■「虚報」をめぐる動き
 産経新聞は昨年12月9日、同月1日に沖縄県内で起きた普天間基地所属の米軍車両が絡む事故に関する同紙那覇支局長の記事を、ネット上で配信。次いで同月12日の新聞本紙に「日本人救った米兵 沖縄2紙は黙殺」と見出しを打ち、ネット版を短くまとめた記事を掲載した。「沖縄2紙」とは、県内の主要紙沖縄タイムスと琉球新報のことだ。産経那覇支局長に≪「報道しない自由」を盾にこれからも無視を続けるようなら、メディア、報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ≫とまで批判された沖縄メディア。さすがに黙っていなかった。

 琉球新報は同月30日、≪産経報道「米兵が救助」米軍が否定 昨年12月沖縄自動車道多重事故≫との見出しで、一連の経緯を詳しく検証する記事を配信。この中で、≪県警交通機動隊によると、産経新聞は事故後一度も同隊に取材していないという≫、≪海兵隊は取材に対し「事故に関わった人から誤った情報が寄せられた結果(誤りが)起こった≫として、産経の報道が裏付け不十分な虚報であった可能性を示唆していた。

 産経の記事は「虚報」ではないのか――。疑問を持ったHUNTERは1月30日、事実確認のため産経新聞那覇支局長に取材。以下の2点について回答を求めた。

  • 県警への取材を行ったのかどうか?
  • 海兵隊への取材内容は正しかったのか?

 これ対し支局長は、県警への取材は行っていないとした上で、海兵隊への取材についてはこう答えている。

  • 海兵隊への取材は、広報を通じてやった。
  • 海兵隊からコメントももらっている。
  • 事実関係をいろいろ調べたら、若干違うところがあったかもしれない
  • 琉球新報の報道を受けて、海兵隊に再確認しようとは考えていない

 「事実関係をいろいろ調べたら、若干違うところがあったかもしれない」は、記事の内容に誤りがある可能性を認めているということ。しかし、意地を張ったのか、報道機関なら当然行うべき「海兵隊への再確認」を「考えていない」と否定していた。 

 ここまでの経緯を「HUNTER」1月31日の配信記事で報じたところ、2月1日に朝日新聞が本件に関する記事をネット上で配信。その中で朝日は、≪沖縄県警は「曹長が日本人を助けようとしていたことについては確認できていない」。米海兵隊も「(曹長が)救助行為をしたことについて、確認できていない」と回答した。≫として琉球新報の検証結果を補強する格好となる取材結果を紹介。産経新聞社広報部の≪取材に関することにはお答えしておりませんが、この件に関しては継続して取材を進めており、必要と判断した場合は記事化します≫とするコメントを付記した。

■食い違う産経那覇支局長と本社広報の見解
 産経那覇支局長がHUNTERに「海兵隊に再確認しようとは考えていない」として、追加取材を否定したのは1月30日。一方、産経本社の広報が朝日新聞に「この件に関しては継続して取材を進めており」と答えたのは2日後の2月1日だ。同じ産経でありながら、那覇と東京の話には整合性がない。

 那覇支局長はキッパリと追加取材を否定しており、その時点で“継続性”はなくなっている。出先のトップが否定した取材を、一体だれが継続していたというのか?そもそも、HUNTERに対する那覇支局長の対応と、朝日に対する本社広報の解答の、どちらが正しいのか?疑問を解くため、産経新聞本社の広報に事実関係の確認を求めた。産経広報から指示されたため取材は「文書」でのやり取り。HUNTERは一連の経緯を説明した上で、次の質問を行った。

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■報道失格
 この質問取材に対する回答が、FAXで送られてきた下の文書である。

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 「取材に関することにはお答えしておりませんが、この件に関しては継続して取材を進めており、必要と判断した場合は記事化します」――。産経広報が朝日に発した、この一文に対する疑義であるにもかかわらず、朝日へのコメントと同じ内容。“どの部所の記者が、いつから継続取材しているのか”という、こちらの質問に対する答えにはなっていない。大手メディアが都合の悪い時に、よく使う手法ではあるが、真実を追求する「報道機関」がやることではあるまい。「虚報」疑惑は、一層深まったというしかない。「ごめんなさい」は、早い方が良いと思うが……。



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