佐賀県神埼市で起きた陸上自衛隊目達原駐屯地所属の攻撃ヘリ「AH-64D(通称:アパッチ・ロングボウ)」の墜落事故。地元住民の目撃証言などから、メインローター(主回転翼)が何らかの原因で先に落ち、機体がコントロール不能となったため、通常なら避け得た「民家への墜落」になったとみられている。(右がAH-64D。陸自のHPより)
昨年から相次いでいたのは、主に沖縄県における米軍普天間基地所属のオスプレイやヘリの事故。佐賀で民家への墜落という絶対にあってはならない事故が起きたことで、自衛隊機の安全性にも疑念が生じる状況となった。
安倍一強が続くなか、この国は、やっぱりおかしくなっている。
■じつは頻繁―自衛隊機の事故
これまで、ヘリを含む自衛隊機の安全性については、ほとんど議論されてこなかったのが実情だ。墜落事故は何度も起きているが、現場が海上や山中だったため民間人に被害がなく、自衛隊への批判が高まることはなかった。しかし、自衛隊機の事故の報道記録を拾ってみると、隊員の死亡や行方不明を伴う自衛隊機の事故の多さに驚かされる(下の表参照)。
気になるのは、2012年以降に事故が増えていることだ。2012年といえば、第2次安倍政権が発足した年。集団的自衛権や改憲といった政治課題が登場し、右寄りの風潮が強まるにつれ、自衛隊機の大きな事故が増えている。それでは、「部品落下」などまで入れた自衛隊機の事故は、どの程度起きているのか――。防衛省に、陸・海・空の自衛隊で過去に起きた航空機(ヘリコプター含む)の事故および部品落下の件数を確認した。
過去10年間の自衛隊機の大きな事故および部品落下などの件数は、平成20年1月から、一昨日の事故までを含めて33件。詳しい内訳を示すデータはないとしているが、毎年平均3件超の事故が起きている計算だ。暴走する北朝鮮に対し、安倍首相が「対話より圧力」と声高に叫び始めた昨年は、過去最高の6件を記録していた。政府の方針と軍用機の事故件数は、密接に関係している。
■安倍一強で増す「命の危険」
神埼市で墜落事故を起こしたのは、陸上自衛隊目達原駐屯地所属のヘリ。政府は、同駐屯地のヘリ50機と新型輸送機オスプレイ17機を佐賀空港に配備する計画で、佐賀県議会は昨年7月、佐賀市議会は12月に「計画容認」の決議を賛成多数で可決した。佐賀には、住民の命を顧みず安倍政権にへつらう情けない地方政治家ばかりそろっているということだ。
一方、沖縄では昨年来、宜野湾市にある普天間基地の所属機による事故が頻発。那覇市では保育園や小学校に米軍ヘリの部品が落下し、県内各地で墜落・不時着が続くという異常事態になっている。民意は「基地反対」で強まると思いきや、普天間飛行場の名護市辺野古への移設の是非が問われた先日の名護市長選では、移設を強行する安倍政権が擁立した新人の元市議が当選。新基地建設で、100機を超えるオスプレイが上空を飛ぶ危険性を訴えた移設反対派の現職が落選している。「米軍再編交付金で暮らしが良くなる」という政権側のまいたエサに、基地問題に疲れた名護の有権者がまんまとだまされた形だ。だが、辺野古に新しい巨大飛行場が建設され、配備される軍用機の数が増えれば、名護市だけでなく沖縄全土で危険性が高まることになる。
多発する軍用機の事故は、米軍や自衛隊の武力で周辺諸国と渡り合おうとする安倍政権が招いた“必然”だ。「国防」を振りかざす右寄りの政治家たちが優先するのは、「個人」ではなく「国家」。彼らに本気で住民の命を守る意思がない以上、集団的自衛権の行使や自衛隊の憲法明記で国民の命を危険に晒す安倍政権に、ハッキリ「NO!」を突き付けるしかない。