金庫番の秘書が国税庁に圧力をかけた疑いを持たれている自民党の鳩山二郎衆議院議員。亡父である鳩山邦夫元総務相の地盤を引き継ぎ、一昨年秋の補欠選挙で初当選した同氏だが、二世政治家の性(さが)か、態度の悪さに顔をしかめる関係者は少なくない。
渦中の人となった小澤洋介秘書も同類。先代邦夫氏の時代から鳩山事務所を仕切ってきたとされる同氏も、上から目線の派手好き。邦夫氏の有力後援者ですら苦々しく見ていたという。
似た者同士の主従について、関係者が口を開いた。(右の画像は、鳩山二郎後援会のHPより)
■議員会館で国税幹部に圧力
新聞各社などの報道によれば、小澤氏が顧問(昨年6月からは代表取締役)を務めていた宝石販売会社を経由した取引が“架空”だったと判断した国税庁は、宝石販売会社の取引先4社からの消費税還付申告を保留。小澤氏は、圧力をかける狙いで国税幹部を指定して議員会館に呼び出し、二郎氏同席で説明を求めたとされる。
9日、記者団に囲まれた二郎氏は「還付制度のレクチャーを聞いてくださいと秘書に言われ同席した。それ以上でも以下でもない」と語気を荒げたが、言葉の選び方を間違っている。「それ以上」や「以下」がどのようなケースを指すのか分からないが、通常、国会議員がレクチャーを受ける際に幹部職員であることにこだわる必要などない。制度に詳しければ、ヒラの職員でも係長級でも構わないのだ。業務に一定の影響力を持った役人を指名した以上、目的はただのレクチャーではなかったと見るのが普通だろう。
一連の報道が事実なら、特定企業の名称をあげて説明を求めた瞬間に“レクチャー”ではなくなっている。同席して話を聞いていた二郎氏が、面談の趣旨を理解していないはずはない。それ以上とか以下とかの問題ではないのだ。
国会議員とその秘書が、議員会館の事務室に国税幹部を呼びつけて特定企業の税務調査について内容を問うこと自体、あってはならない話。秘書や二郎氏が企業側から金品を受け取っていた場合、犯罪行為となるのは言うまでもない。国税に圧力かけた小澤秘書は、問題視されていた会社の顧問。国会関係者がその地位を利用して身内企業を守ろうとした、悪質な事案とみるべきだろう。二郎氏が「問題ない」と思っているのなら、国会議員としての資格はない。彼を知る人たちが語るエピソードからも、政治家としての資質に欠ける“実像”が浮かび上がる。
■“選挙の恨み”で無関係の自治体を攻撃した二郎氏
鳩山邦夫元総務省の死去に伴い、衆議院福岡6区の補欠選挙が行われたのが平成28年10月。亡父から受けついた「義の政治」のキャッチコピーを掲げて初当選した二郎氏は、それから1か月も経たない11月中旬、政治家としての資質を疑われるような発言で世間を呆れさせていた。
県南を流れる花宗川の改修工事について、筑後市など流域5市町で作る花宗川改修期成会が国土交通省に陳情した際、二郎氏は「筑後市はどうでもいい」「私の選挙を邪魔したところだから」と言い放ったのである。補選で競い合った候補者の父が、自民党県連の会長で筑後市選出県議だったことへの面当て。個人的な遺恨を公式な場で口にした格好で、筑後市をはじめ関係者から猛反発を受け、県議会でも糾弾される事態となっていた。
国会関係者の話――「会合での挨拶や演説をきいて、こいつは何か勘違いしてるんじゃないかと感じることが多い。亡くなられた邦夫先生は当選13回を数える大先輩。政府や党の要職を歴任した大物政治家だった。彼(二郎氏)は、邦夫先生の真似をして話すもんだから、どうしても上から目線になる。立場の違いも分からないまま、偉ぶっているとしか思えない。二世のボンボン政治家にありがちなことだが、態度そのものが大きくて、鼻持ちならない。そもそも、県連会長が筑後市選出であることと地域の住民の安全を守ることとは全く別次元の話。そんなことも分からない小僧に、議員バッジをつける資格などない」
選挙は強い二郎氏だが、地元久留米市にある歓楽街「文化街」での評判は良くない。文化街のあるクラブ経営者は、「数年前までのことですが」と断りながら、振り返る――「とにかく遊び好き。朝まで飲み回るんですから。『もう帰ったほうがいいですよ』と帰しても、数時間したらまた来るなんてことも。ホステスさんたちからの評判も良くなかった。文化街では有名でしたね。邦夫先生も知っていたはずで、夜遊び禁止令が出たこともあったと聞いてます」
■高級外車を乗り回し、大盤振る舞いする金庫番秘書
顧問先企業とその取引先のため国税庁の役人を呼び出して圧力をかけた小澤氏も、国会議員の秘書という立場を理解していない。一般人が、国税幹部を呼びつけて説明を求めることなど不可能。国家・国民のために働いている役人を、私的な用件で呼び出したというのだから開いた口が塞がらない。明らかな公私混同。この程度の人物に、政治を語る資格などあるまい。
小澤氏について、ある永田町関係者はこう話す――「小澤は、裕福な会社経営者の家庭で育ったボンボン。国内には数台しかないと言われていた高級外車を乗り回していましたね。邦夫さんが了解していたのかどうか分かりませんが、他の事務所の秘書との飲食に、数十万円を惜しげもなく使っていたので驚いた記憶があります。どこからカネが出てるんだろうかと……。そんな彼ですから、もちろん上から目線。どこかで勘違いするようになっていったんでしょう。邦夫さんが主催していた『きさらぎ会』のメンバーには、盆に100万、暮れに200万といった具合に現金が配られていましたが、渡しに行くのは小澤の仕事。金銭感覚もマヒしていたのかもしれませんね」
二郎氏の選挙区である福岡県久留米でも評価は低く、邦夫氏時代の後援会幹部は次のように語る――「5年ほど前だったか、邦夫さんが小澤を切ろうとしたことがあった。信頼できなかったんだろう。しかし、代わりになる秘書が見つからず、ズルズルと金庫番を続けさせることになった。今回の件で明らかなように、小澤は秘書失格。二郎が本当に何も知らなかったとすれば、秘書が仕える議員を疑惑に引っ張り込んだことになる。二郎が承知の話だったとすれば同罪。議員バッジを外し、政治の政界を去るしかない」
不正をもみ消すためにやったとしか思えない国税への圧力。二世のボンボン議員と似た者同士の金庫番秘書には、自覚も資格もなかったということだ。秘書が辞任して終わり、というわけにはいくまい。一体全体誰のための「義の政治」なのか――。