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米軍・普天間基地の異常事態と“植民地”沖縄の心情

2018年1月12日 09:10

DSC02050-2.jpg 本土で、米軍のヘリが不時着などの事故を繰り返したらどうなるか――。おそらく、新聞・テレビがそろって米軍と日本政府を厳しく批判し、関係自治体の住民は大騒ぎするだろう。しかし、沖縄で米軍普天間基地所属機を巡って異常事態が起きているというのに、本土の日本人は冷淡。ヘリの事故を伝える報道に対しても、反応が鈍い。
 相次ぐ米軍ヘリの事故を通して、本土と沖縄の間にある温度差について考えた。
(写真は米軍普天間飛行場)

■異常事態に米軍トップも「クレージー」
 異常事態と言うべきだろう。一昨年12月から今年1月8日までの約1年間に、オスプレイをはじめ普天間基地所属の機が起こした大きな事故は12件に上る。そのうち9件は沖縄県内で発生しており、基地と隣り合わせの状況が、いかに危険であるかを物語っている数字と言えよう。

000-普天間基地所属機の事故.png

 沖縄では昨年12月、米軍普天間飛行場に隣接・近接する保育園と小学校に米軍所属ヘリの部品・窓が落下。年が明けて間もない今月には、2件のヘリ不時着事故が起きている。普天間飛行場所属機による事故が後を絶たない状況は文字通り「異常」な事態だ。在沖米軍トップのニコルソン沖縄地域調整官が「(事故の続発は)クレイジーだ」と表現するほど、在沖米軍の危機管理能力は地に墜ちている。これが本土での出来事なら、新聞・テレビは連日大騒ぎしていることだろう。横綱の暴行がどうの、親方の動向がどうのに紙面や放送時間を割く場合ではなくなる。

■「沖縄ネタ」でお茶を濁す本土メディア
 しかし、沖縄人(あえてこう表現する)が「本土紙」と呼ぶ、国内の代表的新聞やテレビなどのマスメディアは、沖縄の異常事態についてどこか他人事。ジャーナリズムが真に必要な状況がいまそこにあるにも関わらず、米軍の不祥事はたまにある「沖縄ネタ」として消費されている。住宅地の隣に東アジア最大の米軍基地があることの潜在的リスクや、本土にとっては遠い過去となった「戦後」が、沖縄にとってはいまだ「戦後ゼロ年」であることについては報じられていない。

 メディアの水準はそれを必要とする国民に同調する。つまり日本人は、沖縄に関する暗いニュースを求めていないのだ。明るく楽しいリゾート地こそ日本人に歓迎される沖縄像であり、安室奈美恵を生み、アメリカ文化を取り入れながら独自の文化を醸成した芸能の島という在り方こそ日本人の求める「オキナワ」であり続けている。たとえ全都道府県中飛びぬけて貧困率が高かろうと、全国で最低の大学進学率をキープし続けようと――。

■まるで「植民地」
 そういう意味で、「沖縄は植民地である」と考えたほうが腑に落ちる。自らも沖縄出身である広島修道大学の野村浩也教授は、「国土面積比で0.6%にすぎない沖縄県に在日米軍専用施設面積の74%を押し付けることで、日本自体は繁栄を遂げた」と指摘し、沖縄が現在進行形で日本の植民地状態にあると喝破した(『無意識の植民地主義』御茶の水書房/2005年)。植民地の住民がどれだけ危険な生活を強いられていても宗主国の人間にとってはまさに他人事であり、改善に取り組めば自らに跳ね返ってくるのだから本気になるはずもない。

 戦後すぐの1946年、GHQは日本に在留する外国人実態調査を求めた。その際に「外国人」の対象となったのは、当時「非日本人」に分類されていた「朝鮮人、中国人、台湾人」、そして「琉球人(北緯30度以南のトカラ、奄美、沖縄に本籍を置く者)」だった(『それぞれの奄美論50』南海日日新聞社編より)。さらに米軍は戦後、奄美と沖縄を日本から切り離して統治するにあたって「琉球人は日本に侵略された異民族」と認識していた。本土を守るために琉球列島を「捨てる」ことを躊躇しない日本人――沖縄の現状をみるにつけ、米軍の徹底したリアリズムが正しかったことを認めざるをえない。

■本土に求められるのは……
 「現状を変えるには独立しかない」。そう考える沖縄人も増えている。沖縄出身の芥川賞作家、目取真俊さんは、普天間飛行場の県内移設反対運動の現場に立っている。目取真さんは以前、沖縄独立運動について否定的だったが、いまでは自身の連載で沖縄独立を公言するまでに変化している。かつて否定的だったのは、独立運動が暴力を避けて通れないことを危惧していたからだ。「安易に独立を口にするのは弾圧の苛烈さを理解していない人。だから安易な独立志向は本気でない証拠でもある」――それがかつての目取真さんの立場だった。では、なぜ独立を口にするようになったのか。宗主国からの弾圧の恐ろしさは、2016年に自身が辺野古沖で反対運動中に逮捕・拘留されたことで証明された形だ。ほかの現場では県外の機動隊員から「触るな土人!」と罵られており、こうした経験を経て「腹が決まった」ようにも見える。基地反対運動の先頭にたつリーダーが、独立を掲げて地域政党を立ち上げる――目取真さんが想定する独立までの道のりは、本土人が予想する以上に具体的だ。“独立しかない”とまで追い詰められた沖縄人の心情は、本土メディアに接しているだけでは到底理解できない。

 本土から約800キロを隔てている地理的関係以上に、日本人と沖縄人のアイデンティティーをめぐる断絶は遠く、深い。沖縄を植民地状態のままにしていいのか。日本は幸いにも「まだ」民主主義国家であり、国民が未来を選びとることができる。国民が「沖縄に基地を押し付けるべきではない」と判断し、選挙で民意を示せば必ず現状を変えられるのだ。独立を選び取るかどうかはウチナンチュー(沖縄人)自身であり、選択を迫られているのはアメリカ政府でも日本政府でもない、私達ヤマトンチュー(日本人)一人ひとりではないのか。



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