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米国追従 “売国奴政権”の実相

2018年1月 5日 09:10

安倍首相.png 北朝鮮のミサイルに対応するため、安倍政権が地上配備型のミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入を決めたことにロシアが反発、軍事的対抗措置をとる可能性まで示唆して日本を牽制した。
 他国の防衛措置に難癖をつけるロシアに不快の念を抱いた国民は少なくなかったはずだが、中・短距離の巡航ミサイル発射も可能とされる米国の「イージス・アショア」は他国からすれば脅威。北朝鮮や中国の脅威ばかりを強調する安倍首相だが、対抗手段については都合のいい説明ばかりで、外交上のデメリットには一切触れていない。
 “一事が万事”という。軍事を含むすべてに、安倍政権は米国の言いなり。首相在任5年間で、この国の平和主義を過去のものにしてしまった。

■5年先のイージス・アシュア導入を見切り発車
 日本のミサイル防衛は、まず海上のイージス艦で迎撃し、撃ち漏らしたミサイルには地上の迎撃ミサイル「PAC3」で対応するという2段階システム(下の写真参照)。イージス・アショアの導入で、厚みを増すのは確かだ。しかし、イージス・アショアに搭載されると見られているのはイージス艦搭載型より性能が高いタイプ。短・中距離の巡航ミサイルを発射する能力があるとされ、これを米ロ間の「中距離核戦力全廃条約」に違反すると見ているロシアは、反発を強めている。イージス・アシュアについては中国も警戒感を抱いており、近隣諸国との間に、新たな火種が生まれた格好だ。

イージス艦こんごう.jpg PAC.jpg
*左はイージス艦「こんごう」(海上自衛隊HPより)、右がPAC3(航空自衛隊HPより)

 米国主導で慌てて方針を決めたらしく、課題を積み残したままの見切り発車。安倍内閣がイージス・アシュアの導入を閣議決定した先月19日の会見で、小野寺五典防衛相は冒頭から曖昧な説明に終始した。

 本日、「弾道ミサイル防衛能力の抜本的向上について」を国家安全保障会議及び閣議において決定いたしました。これは、新たな弾道ミサイル防衛システムとして、弾道ミサイル攻撃からわが国を常時・持続的に防護し得る陸上配備型イージス・システム、イージス・アショア2基を導入し、陸上自衛隊において保持することを決定するものであります。北朝鮮の核・ミサイル開発が、わが国の安全に対する、より重大かつ差し迫った新たな段階の脅威となっておりますが、イージス・アショア2基の導入により、平素からわが国を常時・持続的に防護できるようになり、弾道ミサイル防衛能力の抜本的な向上が図られると考えております。現在、イージス・アショア2基の整備に着手する上で必要となる経費について、政府部内で最終的に調整を行っており、可及的速やかに導入を図るべく、今後、必要な取組みを進めてまいります。

 なんとも大ざっぱな説明だが、肝心なところ抜けている。まず、イージス・アショアの導入時期。防衛省は、2023年度を目途に秋田、山口両県の陸自演習場にイージス・アショアを設置する方針とされ、5年先の話。イージス・アシュアは1基約1,000億円。2基導入で2,000億円以上の税金が消える計算だ。この間は、ミサイルの迎撃をイージス艦と「PAC3」に頼る現行態勢のままとなる。つまり安倍政権は、「北朝鮮の脅威」が5年間続くことを前提としているのであるが、防衛相はこの点には一切触れていない。記者団との質疑でも、イージス・アショア導入の意義や導入時期という最も重要な論点について言葉を濁している(下がその質疑)。

 記者:イージス・アショアの導入についてお伺いします。北朝鮮の脅威ということですが、具体的にイージス・アショアの導入によって、どのような脅威への対応ができるようになるとお考えでしょうか。また、導入の時期ですけれども、2023年度ということも言われておりますが、どれくらいでお考えでしょうか。

 防衛相:イージス・アショアでありますが、今回はSM-3ブロックⅡA対応ということで、従前に増して、防御範囲、防御能力が高まると私どもは認識しております。また、現在は海上自衛隊のイージス艦で対応をしておりますが、24時間365日という常続的な任務体制になるということを考えれば、陸上配備が望ましいと思っております。年限でありますが、現在、イージス艦を建造する際に、イージス・システムの取得に約5年を要しております。なるべく早く導入したいと思いますが、一応この年限を目安に私どもとして、今後検討していくところになると思います。

 記者:確認ですが、5年を目安とすると、2023年度というのが一つのメドになってくるとお考えですか。

 防衛相:これから、米側からの様々な情報を得て判断していくということになりますので、まだ確定はしておりません。

 「5年先」を示唆しながら、別の質疑では「今、弾道ミサイル防衛に対して、可及的速やかに緊急に対応してほしいという国民の様々な要請がある中で、最速で進めていく中で、今後、国会に丁寧に説明していきたいと思っております」――。これでは、北朝鮮外交の失敗を見越した策か、米国の圧力で買わされたかのどちらかということになる。

 海上を動き回るイージス艦と違い、存在位置が明らかなイージス・アショアは攻撃目標になりやすい。当然、地元自治体の理解も必要だろうが、イージス・アショアの防護は難問だ。閣議決定で先走った形だが、山積する課題を解決する間、北朝鮮が危険な動きを止めているわけではない。5年先のイージス・アショアは、現在進行形となっている北朝鮮の凶行から国民を守ることはできないのだ。一体、何のための2,000億円なのか?

■売国奴政権
 集団的自衛権の行使容認や安保法制といった平和国家の根幹を大きく変える方針を強行する際、首相は北朝鮮と中国を仮想敵にして危機感を煽ってきた。だが、激しい右寄りの言動で他国を刺激してきたのは他ならぬ安倍首相だ。「丁寧に説明していく」という約束は果たさぬまま、米艦防護や駆け付け警護の任務付与といった既成事実を積み上げている。「国民の安全を守るため」と叫んできたが、じつは米国の言いなり。一方で、現行憲法を米国の押し付けだと批判し、憲法改正を急ぐというのだから呆れてものも言えない。

 安倍首相が拘っているのは「憲法9条」の改正。じつは、米国とともに戦争を遂行するための準備に他ならない。「売国奴政権」はいつまで続くのか……。



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