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福岡・高島市政 慰安婦像巡り“でっち上げ世論”で韓国側に圧力

2017年12月26日 10:15

20160107_h01-01.jpg でっち上げの“世論”で、友好関係を深めてきた姉妹都市を脅す――これが、高島宗一郎福岡市長(写真)の外交姿勢である。
 釜山広域市の日本総領事館前に設置された慰安婦像を巡り、福岡市が極右を中心とする一部の声を膨らませて「世論」と称し、姉妹都市である釜山市側に対して事実上の慰安婦像撤去を求めていたことが、情報公開請求で入手した関連文書から明らかとなった。
 会見で、釜山市への圧力を「市民の安全を守るため」だとして地方自治体の役割であることを強調した高島市長だったが、交渉の内容が「国」の所掌事項に触れていたことも判明。安倍政権のお先棒を担ぐ危険な外交姿勢に、日韓友好に尽くしてきた関係者から批判の声が上がっている。

■でっち上げの「世論」 
 今月5日の定例会見で慰安婦像についての考えを聞かれた高島市長は、「日本総領事館前に慰安婦像が設置された現状は、日韓合意とウィーン条約に違反している」「慰安婦像の設置以来、日本の中でも非常に反発の世論が強まっている」などと話し、昨年来、4回にわたって職員を派遣するなど度々釜山市側に警告してきたことを明言していた。

 その理由については、「基礎自治体の役割として都市間の交流があり、その中で何よりも市民の安全をしっかり確保しなければいけない」などとして、あくまでも地方自治体の責任においての交渉であることを強調。安全保障や外交といった国の専権事項には踏み込んでいないかのような説明を行っていた。しかし、実態はやはり外交。下は、釜山市側との折衝関連文書を開示請求したHUNTERに対する一部開示の決定通知だが、赤いアンダーラインで示した通り、協議内容が市長の言う「国の専権事項」に触れていたことが分かる。

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 問題は、福岡市側が「世論」をでっち上げていることだ。会見で高島氏は「慰安婦像の設置以来、日本の中でも非常に反発の世論が強まっている」と語ったが、これは単に口が滑ったものではなかった。職員の出張復命書やテレビ会議の記録からは、福岡市民もビックリの記述が確認される。

 まず、下の文書。今年5月に市職員が釜山出張した折の復命書だ。福岡市の総務企画局長は釜山市側に対し、「釜山市との姉妹都市交流を止めるべき」という「世論」があると申し向けている。一体、これはどこの国の「世論」なのか?さらに、釜山市側から慰安婦像に対する反感について、日本全体の雰囲気なのか、福岡市で特にそうなのかと聞かれた局長は、「日本全体として報道がなされている」と返し、日本全体が慰安婦像設置に反発しているかのような印象操作を行っていた。

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 慰安婦像に加え徴用工像の設置まで予定される状況となっていた6月の釜山出張でも、総務企画局長は「報道過熱の場合、釜山との交流に反発する市民感情が高まるおそれがもある」などと、危機感をあおる発言を行っていた(下が、その復命書)。

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 7月の釜山出張では、さらに踏み込んだ脅し。下の復命書によれば、局長は「姉妹都市を解消すべき」「公的な交流事業は止めるべき」という「厳しい世論」があると明言していた。

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 一連の強硬姿勢が、高島市長の指示によるものだったことは明らか。7月19日に行われた高島市長と釜山市長のテレビ会議では、市長自身が「両氏の姉妹都市交流を見合わせるべき、継続すべき、様々な世論がある」と話していた(下の記録文書参照)。

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 重ねて言うが、福岡市に「慰安婦像の設置を認めた釜山市との姉妹都市交流を止めろ」などという「世論」は存在しない。あるとすれば、一部右派の過激な意見。大半の市民は、冷静に事態を見守っているのが現状だ。“でっち上げの世論”で相手を脅すのは、戦前の軍部と同じ手法と言えるだろう。

■関係者から怒りの声
 そもそも、韓国側を慰安婦像の設置という行為に走らせたのは、「従軍慰安婦に軍の関与はなった」などと強弁し日本の非を認めようとしない安倍首相をはじめとする右派に対する反発が主因。1910年の日韓併合以来、日本が韓国に対して行ってきたことを考えれば、姉妹都市の解消を臭わせるような交渉の仕方は、かえって反発を呼ぶことになりかねない。「日韓合意」を守れと叫ぶ安倍政権とそのシンパだが、韓国で、合意そのものを破棄せよという「世論」が高まっていることを忘れてはなるまい。

 日韓両国の歴史や相手国の事情を無視した愚かな市長が、右翼の尻馬に乗って友好の絆を断とうとしている現状について、日韓親善に尽力してきたある財界人は、次のように話している。
「軽薄な市長だと聞いていたが、これほどのバカとは思わなかった。福岡市の交渉は、脅し。どこに『姉妹都市交流をやめろ』などという世論があるのか!叫んでいるのは安倍総理とそのシンパだけだ。そんなものが世論であるはずがない。でっち上げという指摘は、もっともだろう。釜山と福岡の関係は、(姉妹都市の解消を決めた)大阪市とサンフランシスコの関係とはまるで違う。釜山と軋轢が生じて、迷惑するのは経済界と市民。影響の大きさは、言うまでもない。これではまるで安倍のための市政。なにがアジアのリーダー都市か」



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