国家戦略特区の特例を利用して今年4月から福岡市が導入した空港アクセスバスの運営会社「株式会社ロイヤルバス」(福岡市)が、法で定められた国への輸送実績報告を怠っていたことが、九州運輸局への情報公開請求で明らかとなった。
空港アクセスバスの事業者選定に疑惑が持たれる中、新たに見つかったロイヤルバスの杜撰な経営実態。拙速に市長のお友達企業を事業者認定した福岡市と国の責任が、厳しく問われる事態と言えそうだ。
■運輸局も呆れる“輸送実績報告書の未提出”
市中心部と空港を結ぶ「空港アクセスバス」を運行しているのは、福岡市に本社を置く株式会社ロイヤルバス。同社を特区事業者に認定するまでの過程で、福岡市と戦略特区諮問会議が、同社の経営状況を確認していなかったことが分かっている。
今回明らかとなったのは、道路運送法などに違反する形となる“必要書類の未提出”。バス事業者は、道路運送法及び旅客自動車運送事業等報告規則の規定により、毎年管轄する運輸支局に所定の報告書を提出しなければならないが、ロイヤルバスは平成27年度実績報告の一部を提出していなかった。
未提出が確認されたのは、平成27年度の輸送客数などを申告する「運行系統別輸送実績報告書」。HUNTERが行った情報公開請求の過程で、同報告書が不足していることが判明。九州運輸局も報告書の不存在を確認している。
(下は、同社が運輸局に26年度分として提出した「運行系統別輸送実績報告書」。27年度分が未提出)
実績報告書の未提出や虚偽報告には100万円以下の罰金が科せられる他、重い行政処分が課せられる場合もある。九州運輸局は、「管内の乗り合いバス事業者が提出義務を怠っていたケースはこれまでに例がない。ロイヤルバスには厳しく指導する」としている。
■「お友達特区」に市議会でも疑問の声
福岡市の空港アクセスバスを巡っては、特区事業者認定までの過程でロイヤルバスの経営状況が確認されていなかったことや、同社の代表者が高島宗一郎福岡市長と関係の深い人物だったことから、便宜供与の疑いが浮上。ロイヤルバスが運行させている空港アクセスバスの少なくとも2台の車両について、同社に車両を貸し出した同業者が、リース料等の支払いを求めて提訴していたことも分かり、開会中の福岡市議会で事業の正当性を問う声が上がる事態となっている。